ラミアの気持ち
「……本当でしょうか……おいしかったというのは」
「本当でしょうね。奪い合うように食べていましたもの。それに、また持ってくるというラミアの言葉に、必要ないとか断りの言葉もなかったでしょう?」
というか、あとで釘を刺しておかないといけない案件なのでは?
子爵令嬢なんてどうあがいても殿下の言葉に逆らえるわけないんだから。私とラミアは、ギブアンドテイクで、ダイエット食品と美肌食品をお互いに持ち寄っている。あいつは、食べるだけ。私はいいわよ? パン屋の宣伝に利用させてもらうつもりだし。
パン屋の商品開発にも反応を見て役立てさせてもらうつもりだし。ラミアに迷惑をかけるなと、言われないと分からないだろうから。あの、空気読めない男は。
「ラミア、たくさん用意して持ってくるの大変でしょう? 無理しなくても」
バスケットにカップを入れ終わると、ラミアが私の顔を見た。
「……私、領地の役に立ちたいんです。フローレン様が、結婚以外にも役に立つ方法があるっていう言葉をずっと考えていたんです。商売をすると……領地の新しい特産品を作って売って豊かにするという話」
ラミアが真剣な目をしている。
「結婚以外にも、役に立てると……フローレン様がおっしゃった言葉が頭に離れませんでした」
うんと頷く。
「私……ジョージ様と結婚することでしか領地のためにできることはないと思っていたのです。でも、そうじゃない……そうじゃないなら、私……」
あら? もしかして。ジョージと婚約解消したいという流れ?
私から協力を提案するつもりはなかったけれど……。別れさせたなんてあとで冤罪に追加されても困るから。
でも、もし、ラミアが婚約破棄……おっと、婚約解消したいのなら協力は惜しまないよ。ただし、具体的に私の名前が出るようなのは頼まれたという証拠が残る形でしかしないけどね。侯爵家ともめたときにお父様から侯爵家へ何か言ってもらうみたいな感じのやつはね。
「あ、もしかして痩せたいと、昨日言っていたのは……」
熱意が今までの何倍もあった。
「はい。痩せて……お前みたいな醜い女は他に貰い手がないんだから俺に感謝しろという言葉に、少しは自信を持って言い返せればと思ったのです。でも、もう一つの道。誰かに貰ってもらう以外に道があるなら、貰い手は必要ありませんと、そう言ってやりたいんです」
あら?
「ラミア、あなたにはたくさんの道があるわ。我慢してジョージと結婚する、ジョージ以外の素敵な人と結婚する、王妃付きの侍女として働く、領地に残り領地運営に協力する……それから、私と一緒に修道院でのんびり暮らすとかね?」
修道院引きこもり生活は楽しみだけど、一つだけずっと一人だったら寂しいかもと思っていたのよね。お友達がいればもっと素敵じゃないかって。誰とも結婚しない貴族令嬢が修道院に入ることはよくある話。ラミアが独身を貫くつもりなら、一緒に行ってくれるんじゃない?
「あ、はい。もちろん、私、フローレン様にどこまでもついていきます!」
ラミアが明るい顔をする。おお! 一緒に修道院に行ってくれるの? あ、でも駄目だわ。そんなに簡単に決めていい話じゃないから。
「学園を卒業するまでゆっくり考えましょう」
「はい。フローレン様や殿下に認めてもらえるように、頑張りますっ!」
殿下に認めてもらう必要はなくない?




