ころころ
「毎朝これでは、皆寝不足になってしまうわね……」
と、心配をしたけど、使用人たちは雄鶏が鳴く前に起きてるようです。
「いえ、でもお父様やイーグルたんは……」
え? 宰相として出勤する前に領地のことを処理してる? 領地運営の勉強としてイーグルたんも手伝いをしている?
……はい。雄鶏に起こされてるの、私だけのようです。問題なかったわ!
せっかく早起きしたし。パン屋のメニューを考えましょう。
途中までは考えたんだよね。ハムサンドはいるからと、そうそう、料理長にハムを作ってとお願いして。どうなったかな?
卵でマヨネーズは作るでしょう。
領地から届いたあれを、早速試作して学校に持っていこうかしらね。いえ、駄目ね。ダイエットとマヨネーズは、ロミオとジュリエットだもの。結ばれない仲なのよ。
暫くはダイエット向けの品を用意しなくちゃね。めちゃめちゃやる気になってたし。ラミアのやる気をそぐようなマヨネーズなど持っていくわけにはいかないわ。
べ、別に、今日もなぜか一緒に食事をすることになった殿下においしいものを食べさせるのが癪だと言うわけじゃないからね?
おいしくないもの……何かあったかな。
あ、そうだ。ふ、ふ、ふ、ふ。
「料理長~!」
着替えて調理場に駆け込む。
ん? 逃げも隠れもしていない料理長が私をにらむ。
「朝食の準備で忙しいのですが、お嬢様、朝食の準備よりも大事な話ですか?」
朝食と昼食……大事なのは、殿下たちと食べる昼食よりもお父様とイーグルたんと食べる朝食。
「えへ、ごめんごめん、えーっと、あの辺の人一人借りれる?」
料理長から一人料理人をゲット。領地にもついてきた人間だったら作り方も知ってるよね。というわけで、作ってもらう。
黒糖がないので、はちみつを使うのでちょこっとカロリーは多めになっちゃうんだけど食べ過ぎるような物じゃないから大丈夫だろう。
学校へ到着し馬車から降りると、手ぶらのラミアがお出迎え。
ん? あれ? 今日もゼリー持ってきてくれたんじゃないのかな?
「フローレン様、こちらをどうぞ」
ラミアが差し出した手には、薔薇の間の鍵。
「あら、まさかバスケットはすでに薔薇の間に?」
ラミアが笑う。ぷにぷにほっぺのラミアの笑顔は幼児を連想させてかわいい。痩せちゃうのかぁ。本人の希望だから仕方がないけど。やっぱりその前にほっぺたつつきたいなぁ。柔らかくてもちもちな肌、ムニムニしたい。
「はい。これでしたら、フローレン様の大切なお荷物もお運びすることができます!」
と、ラミアは張り切って私のバスケットを侍女から受け取った。
「それではフローレン様、私は薔薇の間にバスケットを置いてから教室へ向かいますので。先に教室に移動してくださいませ」
頭を小さく下げて、ラミアは大切そうにバスケットを両手で持つと食堂へと向かって歩き出した。
「あのような方が、フローレンお嬢様のおそばにいてくださるようで安心いたしました。昔のお嬢様を見ているようで幸せな気持ちになりますね」
……メイ、それって……。コロコロしてるってこと?
メイは私の心を読んだのか、すぐに言葉をつづけた。
「見た目の話ではありませんよ? イーグルお坊ちゃまがいらした後、張り切ってイーグル様のお世話をなさっていましたでしょう? 一生懸命いろいろと行動している姿が、フローレン様の昔のころに似ていらっしゃいますよ」
……え? そう?
「ラミア様の表情を見れば、やらされているわけでも、計算があるわけでもなく好きでしているのだろうと伝わってきます」
メイの言葉に、胸が暖かくなる。
「好き? 私、ラミアに好かれているのかしら? それって、お友達になれたってこと?」
思わず顔がニマニマしてしまう。




