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誤算

「今日は試作品ではないのだろう? 毒見なら二人にさせればいい。何の問題もない」

 私の目の前まで来た殿下に、海苔を出して見せる。

「黒い、紙?」

 驚いてる驚いてる。

 驚くのはこれからよ! 

「今日持ってきたものはごちそうでもありません。このような品を殿下に食べていただくなんてとても……」

 にこりと笑って、海苔をパクリと口にする。

「フローレン様が紙を食べっ……!」

 リドルフトの驚く声が上がった。

「毒見は問題ないな」

 小さく頷くと、殿下は私がかじっている海苔の反対端にかぶりついた。

 ちょっ。また、やりやがったな!全然成長してないじゃないかっ!

 ポッキーゲームじゃないんだから、一つの食べ物の両端を加えるとか……。

 顔、顔が近いっ! このイケメン、何してくれてんのよっ! 

 意地汚いにもほどがあるっ! イケメンの暴力だ! 

 カーっと顔が熱くなるのを感じる。

 そのまま顔を引けば、パリパリの海苔が、びりっと破れて顔が離れる。

 海苔がもったいないからかじりついたまま破ってやりましたけよ。海苔を食べきってから、文句を言おうと殿下を見る。

「うん、まずくはないが、一味足りないか? そうだな、油で焼いて塩をかけたらもっと旨いかもしれないな」

 って、その通りだよ! ごま油で揚げて塩をかけるとおいしいんだよ! 食べ物に関する味覚の鋭さは流石。って、褒めないよ、褒めないっ。

「今日は、別の食材と合わせて食べるために持ってきましたのよ。一緒に食べることでおいしさが倍増しますの」

 分かってないわねという顔をして殿下を見る。海苔のおいしさは私の方が知ってるんだからね!

「なるほど、別の食材と組み合わせておいしさが引き立つんだな。フローレンが言うのだから間違いないのだろう。行くぞ、レッド、リドルフト」

「え? 殿下、紙……ですよね? 大丈夫なのですか?」

 リドルフトが信じられない物を見たという顔で呆然としている。

「俺も早く黒い紙を味わってみたい、早く行こうぜ?」

 レッドは興味深々と言った様子だ。

「薔薇の間に用意してありますわ。どうぞ」

 おかしい……。なぜ、またもや殿下にもごちそうする流れに……? 

 しかも、どうして私は殿下の隣に座らされているのだろうか。殿下の両隣って、レッドとリドルフトじゃないの? 

 私と殿下の正面にはレッドとリドルフト、そしてその隣にラミアという布陣だ。ラミアはもう緊張のあまり卒倒しそうになっている。

 そりゃそうだよね。皇太子殿下と同じテーブルを囲むなんて、子爵令嬢としては本来ありえないことだ。

 男爵令嬢のヒロインはその点全然気にしてなかったみたいだけど。心臓強いよね、ある意味。おいしいものはみんなで食べた方がもっとおいしくなるんですよ! とか言って同じテーブルで食べるとか……。いや、相手は皇太子殿下ですよ? 私など「同じテーブルに座るなど恐れ多くてとても食事が喉を通りませんので遠慮します」って逃げ出すわ。逃げ損ねたけど。

 ラミアの持ってきた巨大ハンバーグは、ローリエやらナツメグやらいろいろなハーブや香辛料が使われていていつものハンバーグとは違ったおいしさがあった。流石、牛肉の名産地なだけはあり、肉の臭みを消す方法だとかより味を引き立てる調理法だとかが発達しているようです。ハンバーグを見たときは、いつも食べてるとがっかりしたけれど、おいしい誤算でした。

 で、オートミールのおにぎりとちょっと濃い目の味付けのハンバーグ。一緒に食べておいしくないわけないよね。


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