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【書籍化】ぶたぶたこぶたの令嬢物語~幽閉生活目指しますので、断罪してください殿下!【長編連載版】  作者: 杜間とまと


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ザ・ブラック

「あ、そうでしたわ。私ばかりおいしいものを食べさせてもらっては不公平ですわね。痩せるための食事を用意してきたの」

 ゼリーがおいしくて、コラーゲンに衝撃を受けて忘れるところだった。

 持ってきたバスケットからおにぎりの包みを取り出す。乾燥を防ぐには葉っぱよ。大きな葉っぱにくるんであるんです。本当は筍の皮とかでくるみたいけどね。

 あら? 私痩せるためにオートミールのおにぎりを用意したはずよね? 

 二人分というには量が多くて、こんなに食べたらむしろ太らないかな? 

 ホールケーキのようなでかいハンバーグといい勝負になるくらいでかい葉っぱの包み。

 開くと、ミニサイズのおにぎりが三〇はある。普通サイズで考えると一〇個分はあるよね。お寿司換算にすると六〇貫分? いや、無理でしょう。食べきるの。

「あ、あの、フローレン様……この黒いのは……」

「ああ、これ?」

 ミニおにぎりの右端を指さす。

「この黒いのはひじきね」

 鉄分が豊富だよ。ちゃんと、鉄鍋で煮てるからね! ダイエットとはいえ栄養は取らないとね。

 ラミアが納得した顔をしていない。あれ? 黒いのってこれのことじゃないのかな? 

 その隣のおにぎりを指さす。

「この黒いのは昆布よ」

 うまみ成分が豊富で出汁にも使うからね。

 ラミアの表情が変わらない。あれ? 

「この黒いのはモズク」

 ねばねば成分がぴか一で消化を助けるとかなんとか。

 これでもなかったか。その隣のおにぎりを指さす。

 明るいところで見れば黒ではにけれど、室内では確かに黒く見える。

「これは海ぶどう」

 プチプチした食感がもち麦風でいい感じなの。

 やだなー、これでもない? 

「これはワカメ」

 緑だけど知らない人が見れば室内では確かに黒い。

 ん? これのことでもない? 

「これは海苔の佃煮」

 残念ながら醤油はないので塩と砂糖と酒での味付けだけどさ。

 え? これも違う? おにぎりの種類はこの六種類……って、全部黒いわ! あらぁ。

 だって、海藻類は、どれもカロリー控えめで、食物繊維やミネラルが豊富でダイエットに適した食材。

「いえ、そちらの黒いものはなんでしょうか?」

 ラミアの視線の先にあったものを手に取る。

「ああ、これはこうして食べるのよ」

 焼き海苔のことだったかー。

 ミニおにぎりに巻き付けて、そのまま口に運ぶ。まずはワカメおにぎりにしましょう。

 うむ。よい塩加減。

「え? まさか……痩せるためにはそこまでの努力が……」

 はい? おいしく食べて痩せる。適度に運動はしないといけないけど、そんな絶望的な顔をするほどの努力ではないと思うんだけど? 

「真っ黒に染めた紙を食べてまで……食事を制限して……」

 真っ黒に染めた紙? はて? なんのこと? 

「ラミアも食べてみて。口に合わないようなら、明日は別のものを用意するから。無理はしなくていいわよ?」

 和食は好き嫌いがある。日本人だって、海藻類嫌いな人は嫌いだ。

 オートミールを直接手でつかむとべたべたになるので、海苔を手に取りラミアに手渡す。

「あ! ラミアが言っていた紙ってこれ? 違うわよ。海苔というの。海藻……海の野菜といえばいいかしら? 野菜を細かくして薄く延ばして乾燥させたものといえばいいかしら? ここでは黒く見えるけれど、真っ黒じゃなくて緑っぽいのよ?」

「え? 海の野菜……? あ、確かに葉っぱも紙のように薄いですよね」

 ラミアがおにぎりを包んであった葉っぱを見た。

「知らないことばかりで申し訳ありません。いただきます」

 海苔を受け取ると、私が食べたのと同じワカメのおにぎりをくるんで口に運ぶ。

「あ……初めて食べる感じです。海苔……はパリパリしていて、粒が口の中でほどけます。甘みのある粒……麦でしょうか? それに、黒い物の塩気がちょうどよく調和して……鼻から抜ける何とも言えない香り。おいしいです」

 ラミアがぺろりと一つ目のおにぎりを食べた。


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