途中から殿下視点です
途中から視点変わります
「子爵令嬢はこのような常識的なこともご存じないのね? 皆さまは当然ご存じでしょう?」
私は知らんけどな。
「子爵令嬢はろくに家庭教師もつけられないのでしょうね。ふふふ、ふふふ。仕方がありませんわね。先生、もう一度教えて差し上げてくださる? 哀れな子爵令嬢に」
よし。これくらい馬鹿にしておけば同情が集まるでしょう。
あれ?
なんか、かわいそうにっていう目をラミアに向けないで、視線をそらして前を向いたり俯いたりしていますよ? ちょっと、目撃者になってもらわないと困るわ。困るんだってば。
先生は、ちゃんと目撃してくださいましたよね? 生徒のこと守ってくれますよね?
私が断罪されたあと、ラミアの責任も問われたときにちゃんとかばうようなこと言ってくださいよっ。と、先生に視線を向けると、目が合ったとたんに先生は咳ばらいをした。
「さすがは公爵令嬢フローレン様でございます」
?
「確かにニーチャ王国と我が国との外交上とても大切な婚姻関係の一つとなっております。近々第二王子が留学してくるという噂もあります。間違えがあってはならない項目です」
え? そうなの? ニーチャ王国の第二王子が留学? ……いや、なんか隠しキャラでいたっけ。でもそれって、私が断罪された後だよね? 関係ないよね? 確か、正体隠してひっそりこっそり学園で生活していたのが、ある日突然ヒロインに正体がばれてとかいう設定だっけ。
……転入生なんて目立つ存在はいなかったはずだし、もうすでに正体を隠して教室に潜伏していたりして。
まさかね。
「ありがとうございます。フローレン様。聞き洩らした内容でしたので、もう一度先生が説明してくれると助かります」
ラミアがお礼を口にした。おかしい。罵ったのに、お礼を言われちゃったわ。
ニーチャ王国の第二王子が来るという話を聞いたからか、それ以後は皆おとなしく授業を聞いていた。
★★生徒会室★★(殿下視点)
「殿下……フローレン様のことを私は誤解していました」
リドルフトの言葉に昼食に出されたシチューを口にしながら耳を傾ける。
場所は生徒会が使う食堂の個室。鳳凰の間だ。
今日はフローレンは隣の薔薇の間で、ラミアと二人で食事をする。自分も行ってもいいかと喉元まで言葉が出ていたが、それを察したのかフローレンににらまれたのであきらめた。
どうにもフローレンに食いしん坊キャラに認定されている節がある。
俺は、フローレンと一緒にいたいだけだというのに。
「誤解とは?」
リドルフトは俺が小さいころからずっとフローレンのことをほめ続けているのを聞いている。
が、いつも「思い出補正ですよ、実際に会えばそこまで素晴らしい女性とは限りませんよ」だの、「もっと現実に目を向けるべきですよ、他に素晴らしい女性はたくさんいますよ」だの言い続けていた。
フローレンのように素晴らしい女性が他にいるものか! と言えば「はいはい」と投げやりな返事をよこす。
と、言うのに入学式に、フローレンのことを見てころりと手の平を返した。
「あれほど美しい女性であれば、エディオール殿下が心を寄せるのも頷けます」
……誰が、フローレンが綺麗だから好きだなんて言った?
確かに、五年ぶりに会ったフローレンは、思い出の中の彼女の百倍は美しかった。
あまりにも声をかけるのに緊張しすぎて、思わず「緊張したときは、人を豚だと思えばいいのよ」という母の教えを実行したほどだ。
……殿下……




