ソーシャルディスタァーーーーンッ!
あ「席は自由とはいえ、暗黙のルールがあるのはご存じですか?」
「一応、爵位の低いものが前方、爵位の高いものが後方ということでしたか? ですが、学園で定められている規則は「自由席」ですわよね? 暗黙のルールに従う必要がありまして?」
リドルフトが困った顔をして頭をかいた。
「確かに、そうなのですが……。爵位が低い者はそうもいきません。暗黙のルールを犯して、上位貴族ににらまれるわけにはいきませんから」
……なんか、会社の飲み会を思い出した。自由参加といはいえ、ほぼ強制なアレ。
……待てよ?
「もしかして、生徒たちが前の方の席にびっちり座っていたのは……」
勉強熱心だというわけではなくて……。
リドルフトがうんと頷いた。
「本来、公爵令嬢であるフローレン様よりも後ろに座るべき爵位にない者たちが、後ろに座る意思はないということを示そうと前方の席に集まっているのかと……」
そういうことだったのか。
随分ソーシャルディスタンス取らないんだな、王都の貴族たちと思ったら……。
我先にと前の席に座ろうとした結果ぎちぎちだったのか。
「それは、悪いことを……」
私の言葉が終わる前にリドルフトがほっとした顔を見せる。
「では、殿下の隣に」
あ?
「悪いことをしたなんて私は思っていませんわよ? 悪いのは、やる気もないのに暗黙のルールに従って前方の席に座ったくせに、ぺちゃくちゃ食っちゃべって授業の邪魔をする人たちよね? 勉強する気がないのは構わないけれど、勉強する気がある者の邪魔をする人たちは最低だわ」
リドルフトが面食らった表情をしている。
「とにかく、私は悪くありませんわ。ですから、後ろの席に移るつもりもありません。先生の声が聞こえなくなりますもの」
「フローレン様……」
「話はそれだけですの? では失礼いたします。あ、そうだ。私は先生の話を楽しく聞いてますし、ラミアもメモを取りながら熱心に聞いておりますわ。最前列に座るにふさわしい授業態度だと思っておりますが、文句がおありですか?」
リドルフトが何も言わないのでそのまま背を向けて教室に向かう。
「子爵令嬢ラミアに対する嫌がらせへの報復ということではなく……勉学に励むために前方の席に……」
リドルフトが何かつぶやいていたけれど知らん。
「……あう……」
うそ、でしょう。
教室に入って愕然とした。
最前列にはすでに私とラミア二人が座る場所がない。
二段目も、三段目も。四段目も。
昨日はあんなにぎちぎちに座っていたというのに、今日は逆にソーシャルディィーーーーーーースタンスってくらい一人が広いスペースを確保して等間隔に座っている。
絶妙に、私とラミア二人が座るスペースが確保できない感じに……。
空いているのは、最上段と上から二段目だけ。
「くっ、来るのが遅かったか……」
明日はもっと早くに来なければ。
流石に「どきなさい、そこは私の席よ!」と言うことはできない。
すごすごと上から二段目の席に座る。
と、レッドがやってきて私の隣に来た。あれ? レッドは最上段だよね?
「はい、鍵」
レッドが鍵を差し出す。部屋の名前が書かれた札が付いた鍵だ。
「薔薇の間……」
食堂の個室だ。そういえば、旅館みたいに個室に名前つけてあったよね。旅館みたいに。生徒会が使う部屋は鳳凰の間。その隣が薔薇の間。あとはゲーム内でも話題になることもなかったから知らないけど。
受け取ろうとしたら、後ろの席に来た殿下がひょいとレッドから鍵を取り上げる。
「おい、レッド……お前どういうつもりだ?」
「何をなさいますの、殿下」
ハンバーガー強奪事件といい、こいつは人のもの奪うの好きだなぁ。
ご覧いただきありがとうございます。
すいません、サブタイトル書いてるときに、ふとアルフィーの姿が浮かびました。
あ、アルフィーって、じあるふぃーって口にするあれです。ざあるふぃーじゃないです。
さぁ、このあとがきを読んで何人が頭の中にアルフィーが思い浮かんだのか……
注*歌詞を小説や感想欄に書いてはいけません。規約違反になります。替え歌もダメです
 




