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授業

 そんな絶望的な顔をしないで。たかが肌、たかが髪。とはいえ、この年齢の女子って「誰もそんなとこ見てないって」って細かいことでも気になりだすと死にたくなることもあるんだよね。

「太っているのは痩せればいい、そう、私みたいにね。ラミアは私に痩せ方を教えてくれと言って行動したわよ? ねぇ? あなたたちは、目の前に美しい肌、美しい髪をしている令嬢がいるのが見えなくて?」

 令嬢たちがハッとしてラミアを見る。

 自分より優れているなんて言われてラミアがにらまれてしまうのではと思っていたけれど、令嬢たちは、太っているというラミアの欠点から、美しい肌や髪という長所に向いたかと思うと希望の光を目に宿した。

「ラミア、どのような手入れをしていらっしゃるのか、教えてくださる?」

 ラミアが小さく首を振った。

「私、特に何も……フローレン様にお教えするような特別なことなど……」

 まぁ、そうでしょうね。髪や肌の手入れを人一倍気にするなら、こんなに太るわけないわよねぇ。

 思わず手を伸ばしてラミアのもちもちのほっぺたに触れる。

「あっ」

 ラミアが驚いて小さく声を上げた。

 しまった。つい。ぷにぷに気持ちよさそうだなんて思って手が伸びじゃった。

「しっとりして柔らかく、本当に美しい肌ね」

 人の顔に勝手に触るなんて失礼だよね。ごめん。ごめん。と、とりあえずぷにぷにしてて触りたくなったなんてもっと失礼だろうから、肌を褒めておこう。

「ありがとうございます……」

 真っ赤になってラミアが視線を落とした。

 褒められることに慣れていないから恥ずかしいのかな。

 まぁ、髪質も肌もいろいろな商品が出ていたけれど、正直な私の感想としては、結局のところ「遺伝」と「生活習慣」でほぼ決まっちゃうんだよね。遺伝はどうにもならないけど、生活習慣はどうとでもなるってもんよ。

 肌荒れは睡眠不足、ストレス、そして食事。髪も栄養大事。ってことはよ? 

「特別なことはしていらっしゃらないとおっしゃいますが、ご家族や使用人の肌や髪はどうですか?」

「え? ……えーっと……屋敷の中にいる者たちは皆、肌の調子は良く、髪にも艶がある方……だと」

 ふむ。

「あら、では、髪や肌によい食事をしているのでしょう」

「そんな、特別なものは……。ぜ、贅沢できるほど……お恥ずかしながら子爵家は豊かでは……あ、最近はちょっと余裕が出てきましたが、それでも……その、お恥ずかしい話、領地で売れ残った食べ物や売れないような食べ物を消費しているような状態で……」

「あら、それならば、その食べ物が肌や髪によいのでしょうね。詳しくお聞かせ願えますか? もちろん、私は痩せられる食べ物を教えますわね。ふふ、これでお互いに情報を交換することになりますわね」

 ラミアに微笑みかけ、他の令嬢から視線を外す。

 うん、なんか教えてほしそうな感じで聞き耳を立てているのが見えましたが。

 知りませんよ。


 授業が始まった。

 歴史の授業。王室賛美のような内容。どうでもいいわ。ちぇ。

 せっかく先生の声がよく聞こえるように一番前の席に座ったのに。……というか、ちらりと席を見渡すと、最前列は私とラミアだけ。

 二列目三列目にびっちりみんな固まっている。すごい密度だけど、その後ろから何段かは誰も座ってなくて最上段に殿下たち三人。

 ……こりゃ、ちゃんと席順決めた方がいい案件なのでは? 

 私とラミアの両脇に誰も座らないのは、ラミアは虐められてて、私は問題児として遠巻きにされてるのかな? 

 あ、殿下と目が合った。お前も授業聞いてないのか? 

 嬉しそうに笑っている。王室に関する歴史だぞ? ちゃんと聞きなさい。

 ……隣のラミアは真剣に聞いている。真面目だなぁ。

 しかし、ラミアはどんな食事をしてるのかな。ポテチ食べ過ぎて太ったというわけではないよね。

 だとしたら肌もボロボロになってるだろうから。

 領地の売れ残りを食べてたと言っていたけれど……。食べ過ぎているだけで、量を減らせば問題ない食事内容なのかな? 

 授業が終わった。

映画館のように後ろに行くにしたがって高くなる段々の教室です。

机は固定。椅子はベンチ型で繋がってます。……たぶん。

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― 新着の感想 ―
[一言] 美肌食といったら雪蛤がぱっと思い浮かんだけど、絶対違うとも思います
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