お手!
「フローレン様、申し訳ない。噂とはいえ女性を豚だと表現するなど……許してもらえるだろうか」
レッドが一歩前に出て頭を下げた。
「ふふ、構いませんわ。豚だと言われることには慣れていますし」
ちらりと殿下に視線を向ける。ダイエットのきっかけになったから今では「ぶたぶたこぶた家族」もいい思い出だよ。
「許します。レッド様、王都に関して私は知らないことが多いですし、これからいろいろと教えてくださいませ。ね?」
「ああ、それはもちろん。姉も君に会いたがっていたよ。お茶会に招待し……いてっ。俺じゃないって、招待するのは姉だから、あ、分かった分かった、お前も呼べばいいんだろ? いや、そうなると大掛かりなことに……」
なんだ? 殿下がレッドの足を踏みつけた? お茶会一つに側近は殿下の許可がいるのか? めんどくさ。
「分かりましたわ。私の方でお茶会をするときに、ぜひお姉様とご一緒に来てくださいませ」
ドライイーストそのほか、領地の特産品を売り込むチャンス。くっくっく。
家に帰って家族に豚みたいだったと話すようなご令嬢であれば、どれだけお茶会で出された料理が素晴らしいのかと吹聴してくれることでしょう。しめしめ。にやにや。
「リドルフト様もぜひいらしてくださいね」
俺は? って顔をした殿下がいる。知らんがな。さっきの私とレッドの会話聞いてた? 皇太子殿下を呼ぶと大事になるって。
あ、でも、皇太子殿下も来るとなれば、いっぱい人が呼べる? そうしたら、特産品を売り込むチャンス増大。増し増しフェアだね!
「お忙しい殿下にお時間をいただくのは無理だとは」
思うけれど、誘おうと思ったら殿下が食い気味に口を開く。
「暇だ、俺は目いっぱい暇、何もやることがないから、だから、行ってやる。暇つぶしに行ってやるから、招待しろっ! 分かったな、俺はいつだって暇なんだ!」
……いや、皇太子殿下が暇ってどうゆうこと?
「でしたら、ぜひいらしてくださいませ」
大規模お茶会やったるでー! それまでに、特産品を使った激うま料理を開発せねば! ……料理長に頑張ってもらうんだけども!
料理長、生きて! 死なないで! いつか、刺身を共に食べる日まで!
にこやかに微笑むと、殿下が嬉しそうな顔をした。
「ああ、ところで、生徒会メンバーはどこで昼食をとるのかという質問だったね。生徒会の打ち合わせを食事をしながらできるように個室があるんだが、そこで食べることがほとんどだ」
リドルフトが丁寧に説明してくれる。質問しといてなんだけど、実は知ってる。部外者のヒロインがそこに招待されてひともめするもんね。何を隠そう、この私がもめた張本人なんだからね!
「私も、お邪魔してもよろしいかしら? それとも、生徒会役員でもない部外者は入室できませんか?」
できるのも知ってる。ヒロイン入りびたってたからね。
「ああ、もちろん大歓迎だよ。じゃあ、行こうか」
リドルフトが手を差し出したので、エスコートかと思ってその手に手を乗せる。




