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悪役令嬢の取り巻き

「お嬢様、公爵令嬢とあろうものが、大きな荷物をご自分で運ぶなどどのように噂されるか分かりません。よしんば、公爵家は身の回りの世話をする令嬢すら用意できなかったのかと。何か問題があるのかと、いらぬ悪評が立ってしまいかねません」

 我儘すぎて、手に負えないとか? 

 それ、本当のことじゃない? 結構私、我儘放題よ? 

 よくよく思い返してみれば「パン屋をやりたいからお金出してねパパァン」って話をしたばかりだし。う。うう。まぁ、一応公爵領のためなので、これは許容範囲であるとは思うけど。

「別に、なんと言われようとかまいませんわ」

 殿下に豚と言われるのだけは腹が立つけれども! 

「フローレンお嬢様、来年入学なさいますイーグルお坊ちゃまがその噂を聞いたらどうなさるか、考えてくださいませ」

 あの姉にしてこの義弟ありとか、イーグルたんまで皆に馬鹿にされる可能性があるということ?

「血の雨が降りますわ……きっと、学園に……」

 小さく震える侍女。

 血の雨? 

 ええ、私、きっと血の涙を流しますわね。私のせいでイーグルたんが辛い目にあったら。……でも雨なんて大げさよね。

 とはいえ、そうか。イーグルたんが入学してどれほど素晴らしい人間なのか皆が知っってもらってから、私は本格的に悪役令嬢になったほうがいいわけね。それまではその辺に居そうな高位令嬢だからってちょっと我儘よね程度にとどめておくのが得策。

 で、その辺に居そうなちょっと我儘な高位令嬢ってどんな感じだっけ? 

 えーっと、派手なドレスを身に纏い……制服だから無理よね。

 扇で口元を隠しながら、高らかに笑う……実践してるわ。

 背後に取り巻き令嬢を二~三人引き連れて……! こ、これだわ! 

「取り巻きになりたいと言うのであれば、許しますわ」

「は、はい! ありがとうございます!」

 ラミアは張り切って私の手からバスケットを奪い取った。

「ラミア様、くれぐれもお嬢様をよろしくお願いいたしますわ。お嬢様に何かあれば、命はないと思ってください。もちろん、一家もろとも無事で居られると思わないことです」

 ちょっとぉ、メイったら。大げさだわ。

「そ、それは……あの噂は本当と言うことですか? (フローレン様は、皇太子殿下の婚約者に内定しているという……)」

 ラミアの表情が引き締まる。

「ええ、噂以上だと考えてくださいませ(旦那様とお坊ちゃまのフローレン溺愛っぷりは)」

 メイがラミアに深く頷いて見せた。

「い、いやですわ。噂など、ただの噂ですわ(まさかぐーたら引きこもり修道院生活を目指しているのは噂になってないですよね?)」

 三人が謎の笑いを漏らす。

「おほほほほ」

「うふふふふ」

「あはははは」

 鐘の音が聞こえてきたので、慌てて校舎へと向かう。

 ラミアはバスケットを持って私のあとをもちもちとした足取りで付いてきた。

 白くて柔らかそうな頬っぺた。取り巻きになるなら、触らせてもらってもいいかしらね? 

 と、ラミアの顔を見ると、ラミアが嬉しそうに微笑んだ。

 あれ? この笑顔、どこかで見たようなことがあるような? 誰か、知ってる人に似ている? 

 


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