戦士の顔をした料理長
「料理長! 相談があるわ!」
パン屋開店に向けての秘策はあるのよ!
ワクワクしながら調理場へ向かうと、料理長がこわばった顔でこちらを見た。
四〇代の料理長は料理の腕前は確かだし、新しい料理の開発もお手の物だ。私がこういうのが食べたいというざっくりした要求にもよく答えてくれる。……刺身を食べたいという要求だけは受け入れてくれなかったけどね! ちっ。
「……今度は、どんなゲテモノを調理しろと?」
やぁねぇ。何よその怯えたような顔。
だいたいゲテモノを調理させたことなんてなかったわよね?
ちょっとカニとかタコとかナマコとかアンコウとか料理してもらっただけじゃないの。
しかも、出来上がった後はみんなで美味しい美味しいって食べたでしょ?
「パンを焼いて頂戴!」
「はい? それはいつものふかふかなパンをということですか? それはもちろん本日も用意させていただきますが」
うん、実は領地では毎日、ふかふかパンを作ってもらっていた。……食べ過ぎるとダイエットにならないので、和食風な魚料理のときはオートミールだったけども。
「違うの、パン屋をするから、たくさんパンを焼いてほしいのよ!」
料理長が青ざめる。
「パン屋を……用意するから、私はクビでそこで働けということでしょうか?」
「お嬢様! 料理長をクビにしないでください!」
「そうです! 生の魚を食べさせなかったからとひどいです!」
「僕たちは料理長に付いていきます!」
「いくらお嬢様がおっしゃろうと、旦那様に抗議させていただきます!」
「そうだ、料理長は僕たちが守る!」
あっれぇ? なんで、料理長を私が理不尽にクビにする流れになってるの?
あ! もしかして、これって「悪役令嬢補正」なのかな? うん、なら仕方がない。
「クビじゃないわ! パン屋は別の者を雇って営業するのよ! 料理長にしてほしいのはそのパン屋で売る商品開発の手助け! 私が満足するようなパンを焼けるのは世界中で料理長だけだと信じてるわ!」
私の言葉に、料理長が涙目になっている。
「う、うう、お嬢様……そこまで私の腕を信用してくださるのか……」
「料理長! さすがっす!」
「僕も世界で一番料理長が料理上手だと思っています」
「パンの開発のお手伝いをさせてください、料理長!」
料理人たちが料理長を取り囲んでワイワイやっていると、料理長はぐっと顔を上げて、私に挑むような顔をする。
「お嬢様はどんなパンをお望みで?」
ふっ。その顔よ。その顔。
タコでもナマコでも、はじめはぎょっとするもののすぐに美味しい料理にしてやると、戦士のような顔になるのよね。
「まずは、これを使って作ってもらうわ」
領地から持って帰ってきた瓶の蓋をぽんぽんと叩く。
「え? パンに、それを?」
料理長が驚いた顔をしている。
うん、まぁ、今までは料理に使っていたものを、この世界での主食のパンとどう組み合わせるのか想像できなくても仕方がないわよね。
とりあえず、私が知りうる限りの作り方を教えると、夕飯には見事に食卓に並んだ。
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実は、私はキャラの名前を覚えるのが苦手で、自分の作品のキャラの名前も、メイン以外は忘れちゃうんですよね。
メモしながら書いてますが、混乱を避けるため……作品変わっても同じ名前のキャラが出てくるシステムを採用しています。
執事→セバス
侍女→メイ
侍女頭→ロッテン
このほか、よく使う名前が
モブ女子→アンナ
……だったのですが、なんと、自分でも忘れてたのですが、別作品のモブ男にも「ジョージ」って言う名前使っていて、これからはモブ男はジョージにしようかと思っているところだったりします……。
なんか、〇〇の名前はこういうの固定でどうです?みたいなものありますか?
他には宿屋の女将さん(親切)はマーサとか……。
食堂の女将さんはハンナとか。
それっぽい名前……セバス以上にそれっぽいのは今のところないと思っているのですが。




