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新入生……新入豚……!

 学園の入学式には親の参加はない。

 なんせ、貴族令嬢子息が通う学園だ。国内の主だった貴族が一堂に集まるとなれば、警護面やら席順やらいろいろと対応が大変すぎるからだ。

 と、いうわけで、入学式といっても始業式のようなもの。

 壇上に校長先生が現れて話をして先生の紹介が行われ、それから生徒会役員の登場。

 キャーッと会場から貴族としてははしたないと言わざるを得ない黄色い声が上がる。

 おう、攻略対象そろい踏みだなぁ。

 生徒会長の皇太子殿下。一年生。★

 副会長の殿下の側近、次期宰相候補筆頭リドルフト。一年生。……いや、次期宰相候補筆頭はイーグルたんだけどね! 

 書記の殿下の護衛、次期騎士団長との期待の声が大きな武人レッド。一年生。遠目にも鍛え上げられた体だと分かる立派な体格。

 会計は名もなきモブ。来年攻略対象のイーグルたんが入学して、攻略対象四天王生徒会が爆誕する。

 人前では緊張してしまうとの殿下の言葉を思い出す。

 そうして見れば、凛々しく前を向き表情一つ崩さない顔……ではなく、緊張して張り付いた表情しか見せられない顔に見えてくるから不思議だ。

 今頃、人じゃない、ここにいるのは豚だ。大丈夫、豚、豚、豚……。とか心の中で思っているのかと考えると笑いがこみあげてくる。大量の豚。養豚場か!

 隣で熱い視線を送っているあなたも、豚だと思われてるのよ? 

 黄色い声を上げて今にも失神しそうなあなたも、豚だと思われているのよ? 

 憧れるような目をして見ている男子生徒も、雄豚にしか見えてないはずよ? 

 殿下が舞台の中央に立ち、一歩下がった後ろ、左右にリドルフトとルレッドが立つ。

 うわー。これは圧巻。さすが乙女ゲームの攻略対象。絵になる。すごい、かっこよすぎる。なんていうか……。

 恋愛とかはノーサンキューだけど、二次創作したくなる絵面だ。うん、修道院に引っ込んでから二次創作するのもいいかもしれない。目に焼き付けておこう。

 殿下が口を開く。

 挨拶が始まるぞ。「新入豚諸君、入学おめでとう」と言った時の生徒たちがどんな顔をするのかワクワクしていると、殿下の声が行動の隅々にまで響いた。

「入学おめでとう!」

 あ? そして、一歩後ろに立っていたリドルフトが次に口を開く。

「学園生活中は、爵位の上下関係なく対話を望んでいる。社交界のように許されるまで発言できないなんてことはない。遠慮なく生徒会に意見を寄せてくれたまえ」

 ちょ、まさか緊張してぼろがでないようにあの一言で終わりなの? 

 がっかりしていると、次にレッドが口を開いた。

「もちろん、人として恥ずかしい行いは慎むように。いくら不敬に問われないとはいえ、人としての評価は残る。もちろん卒業後も、だ」

 あら? しっかり釘を刺されているわね。

 うん、まぁ、逆に言えばそういうルールがあればこそ。公爵令嬢という立場をかさに来て、我儘に振る舞う悪役令嬢ができるというものよ。爵位は関係ないからと、公爵令嬢である立場が全く意味をなさないならただの嫌われ者。クラスでボッチの浮いた存在になるだけだもんね。

 三人が壇上から降りた。おーい! 殿下はまじであの一言だけなの? 

 ちょ! どういうこと! 私にはあんなにはっきり「豚」って言うくせに、皆には言わないとか! 殿下め! 

 パン屋を始めても「王族に食べていただくような品ではございませんので」とか言って絶対売ってやらない! ぷんすかっ! 

 目の前でおいしそうに食べてやるわ! あ、そうだ。いいこと考えちゃったぁ~! 生徒会に差し入れしちゃお。王族には食べさせられないといって。そうね、試作品の味見とか言うのはどうかしらね? 皇太子殿下にそんなことをさせられないと言って、リドルフトとレッドに食べてもらうんだ。くっくっく、指をくわえて美味しく食べるところを見ているがいい! 

 豚と呼ばれた恨みも、ハンバーガーを奪われた恨みも、絶対忘れないんだから! 


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