前世を思い出す~天使一家~
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え? 私、乙女ゲームの悪役令嬢に転生してるぅぅぅぅ!
起きてビックリ。
アメジストのような紫の瞳に、紫がかったプラチナブロンドの美少女。いや、美幼女が鏡に映っている。
「どうなさいました? フローレンお嬢様?」
名前を呼ばれて確信する。私は『桃色聖女の冒険』の中に出てくる悪役令嬢フローレンだ。
公爵令嬢フローレンは、宰相である父親に甘やかされて我儘いっぱい育つのよ。
この世のすべては自分の思い通りになると勘違いした挙句に、婚約者である皇太子が思い通りにならないと度々癇癪を起す。
で、なんかいろいろちょっとした悪いことを繰り返して婚約破棄されるのよね。
そう、この漫画の主人公はあくまでもヒロイン。実は悪役令嬢が主人公で、最終的にヒロインや浮気皇太子がざまぁされたりしないの。
しっかり、悪役令嬢フローレンが断罪される。
でもね、断罪って言っても、ちょっとした悪いことを繰り返しただけなので処刑にはならない。
下される処罰は幽閉。幽閉よ、幽閉!
漫画では幽閉生活は詳しく描かれていなかったけれども。断罪後にモブたちが噂していた。
「田舎の小さな屋敷から一生出られない」とかなんとか。
「かわいそうに、社交界から追放されてしまったのね」って。
前世、めっちゃ引きこもり体質で、人付き合いが大の苦手な私からしたら……。
え? いいんですか? 人付き合いしなくて? 喜びしかないんですけど!
「何の楽しみもないのね。することと言えば本を読むか刺繍をするくらいでしょう」とか他のモブが言っていた。
漫画を読んだ時は、読書めっちゃ面白いじゃんっ!
刺繍も大好き! ちくちくと針を刺し続けるのすごく癒されるんだぞ! 少しずつ作品が出来上がっていくあの快感。作品が出来上がったときの達成感。楽しみしかないよ!
「それに……一生結婚できないなんて……ざまぁありませんわね」って言ってたモブもいた。
え? なにそれ? 結婚が女の幸せって誰が決めたの? むしろいない方がマシって男のが多い世の中だよね! 政略結婚のはてに浮気夫に悩まされることがないって最高でしょ!
結論。
幽閉生活、むしろ幸せしかないんだけど。
引きこもって読書と刺繍を楽しみ、結婚を誰からも強要されない上に……三食昼寝付き! 働かなくていいし老後の心配もしなくていい……。
「うわぁー、最高! めっちゃ、最高!」
夢みたいだわ。神様ありがとう。悪役令嬢フローレンに転生させてくれて、感謝いたします。
と、神に感謝をささげていると、侍女の言葉が耳に入る。
「今日から弟ができるのですからフローレン様、準備をしっかり整えてご挨拶くださいませ」
ん? 今日から弟?
ああ、そうえば。公爵令嬢フローレンには、義弟がいたわ。
確か、母親はフローレンを産んだ時に死んじゃってて、父親はそれを哀れんでフローレンを溺愛。なんでも好きなようにさせて我儘に育つ。
その我儘の一つが「皇太子と婚約したい!」ってやつね。たしか十歳だっけ?
皇太子と婚約したいなんて、フローレンも馬鹿な女の子だったよね。王妃なんて、世界中の女性の中で一番責任が重くて仕事もめんどくさそうなのに。
で、フローレンには義理の弟がいたんだよね。公爵家に世継ぎが必要だから養子を迎えた。
ちょうどフローレンが五歳のころ、父親の弟夫婦が一人息子を残して馬車の事故で無くなってしまったのでその子を引き取り養子にしたんだ。
一つ下の義弟は、ちょっとした姉の悪さの後始末をするうちにヒロインとの仲を深める。
ヒロインの攻略対象が義弟だった場合も私は幽閉。
この世界はゲーム通りに話が進むとは限らないのかな? いわゆるフラグを回避するみたいな、私の行動で色々変わってくる?
物語のスタートは十年後だっけ。悪役令嬢フローレンの私は、それまでどういう人生送ればいいのかしらね? フラグ回避なんてしたくないんだけど。ちゃんと断罪されて幽閉されたいんだけど。
「フローレン準備はできたかい?」
お父様が部屋まで迎えに来てくれた。フローレンによく似た美丈夫だ。
イケオジ。イケオジですよ、イケオジ……。
「お父様~! 大好き!」
イケオジ、大好き。思いっきり駆け寄ると、嬉しそうにデレた顔でイケオジに抱きあげられた。
うわーん、幸せだわぁ。
「フローレン、ああ、なんてかわいいんだ。天使だよ、天使」
うん、まぁ見た目は美幼女なんで、同意。フローレン五歳は天使よ、天使!
「お父様は大天使様ですっ! カッコいいです!」
ぎゅーっと、お父様に抱き着く。ふへへへ。イケオジに甘え放題しても問題ないって幸せだわ。
「き、聞いたかい? いつの間にそんな言葉を覚えたんだい? 私のことを大天使だと、カッコいいと……ああ、フローレン」
でれっでれになったお父様が侍女たちに自慢を始めると、お父様よりも十歳は年上のベテラン侍女ロッテンが冷静に言葉を返した。
「ご主人様、イーグル様をあまりお待たせしてはいけません。移動してくださいませ」
「あ、そうだった! フローレン、行こうか!」
お父様に抱っこされたまま、食堂へ移動する。
「て……天使……」
フローレンは天使だと思ってたけど、本物の天使はもっとかわいい!
「お父様、おろしてくださいませ」
おろしてもらうと、侍女に手をつながれてキョロキョロしている天使の元へと駆け寄った。
「あなたがイーグル? 私はフローレンよ」
ああ、可愛い。なんて可愛いのかしら。
四歳の男の子って、こんなに小さくて可愛いものなの? それともイーグルが特別可愛いの?
「フローリェンしゃま?」
ああ。悶えていい? ねぇ、悶えていい?
この舌ったらずなところも、ちょっと首をかしげる仕草も、何もかも、可愛すぎるぅぅぅ!
「イーグル、あなたのお姉様よ」
その言葉に、イーグルがぱぁっと目を輝かせた。
「ねーたま? ぼくの、ねーたま?」
あああああああ、だ、だ、抱きしめていいですか? 抱きしめても、いいですよね?
ぎゅむぅっ!
「ねーたま? いーぐりゅのこと、ぎゅっしてくれうの?」
「え? ぎゅっしちゃ駄目?」
いきなりだから嫌がられたか! 初対面だし! 反省して慌てて体を離す。
どうやらお父様の弟夫婦……。あまり子供に感心がなくて子育ては使用人に任せきり。その使用人も侯爵令息ということで一歩距離を置いた接し方をしていたようだ。
「せばしゅもまーやも、いーぐりゅはもうよんしゃいだから、かぞくじゃないにんげんにだきついちゃだめって」
ああ、まぁ。そういう風に教育されていたのも仕方がない。
戯れに女性に抱き着くことでいらぬ騒動が起きる可能性もある。いくら子供とはいえ、傷者にされた責任を取れと言いがかりをつけ婚約を結ぼうとする人間が現れないとも限らないわけなので。
「ほら、見て見て、イーグルと、一緒でしょ? お父様もね、私も、イーグルの家族だよっ!」
イーグルの手を引いて鏡の前に立つ。
鏡に映るのは、大天使なお父様と、天使な私と、超絶可愛いプリティーキューティー世界ナンバーワン天使……略して超天使!
「ほんとだ。かみのけのいりょ、いっしょ、いーぐりゅといっしょ」
紫がかったプラチナブロンドはとても珍しい。お父様と私とお父様の弟以外はまだ見たことがない。まぁ、五歳の私の行動範囲で見る人間なんてしょせん数は多くはないんだけれど。
ゲームの中でフローレンの髪の毛は特徴的で見間違えるわけないみたいなシーンがあったから珍しいことには間違いがないんだろう。
ボロボロと超天使が泣き始めた。
「かじょく……いーぐりゅひとり、ちがう」
「そうだよー! 家族だし、一人じゃないし、ぎゅってしてもいいの!」
泣かなくていいんだよ。寂しかったね。これからはお姉ちゃんがいるから! いっぱい、いっぱい、うっとおしがられるくらい可愛がるから!
ん! そうだよ! 私は悪役令嬢として生活するんだもん。
うっとおしがられたって、平気だぞ! 邪魔にされても邪険にされても、平気だぞ!
そっか。私、悪役令嬢だもん。好き放題わがまま言ってればそれでいいんだ。ふへ、ふへへ。
好き放題わがまま言ってりゃ夢の三食昼寝付き、趣味に没頭できて人付き合いもしなくていい引き籠り天国生活が待っているなんて……。
あーん。私、さいっこうに運がいい! ひゃほーい!
「ああ、うちの子たち、世界一可愛い……。可愛い、可愛い。なぁそう思うだろう? 可愛いに可愛いがプラスされて、もう可愛いしかない」
お父様がまた侍女ロッテンに自慢げに話をするが、ロッテンさんは冷静に対処した。
うん、これは、お父様のデレデレ自慢の対応に慣れきっている様子。
「ご主人様、お仕事に遅れてしまいますので朝食をお召し上がりください」
「えー、せっかく、天使の戯れを堪能……」
ロッテンが冷たい目でお父様をにらみつけた。
お、おおう。あんなイケオジに冷たい目をできるなんてロッテンしゅごい豪胆の持ち主。
「お食事する風景もさぞ可愛らしいことでしょう」
そして、その台詞一つで、お父様と私の心を掌握。
そ、そうよね! イーグルたんが食事する姿はきっと可愛いわよね!
「じゃぁ、ご飯食べにましょう!」
お姉様だもの。お義弟と手をつないで移動するのは普通よね! へへへ! 役得役得! と、イーグルと手をつなぐ。
イーグルたんの小さくて可愛らしくてぽにぽにとお肉がついた……ん?
なんか、イーグルたんの手は、四歳児にしては細くない? そういやぁ、さっきぎゅってした時にも、細かった気がする。というより、細いだけでなくて随分小さいわよね?
「食事……」
イーグルたんが怯えたように下を向いてしまった。
あれ? もしかして食べるのが嫌いなの? お腹空いてないとか? で、あんまり食べられなくて痩せてる? 成長も遅い?
「ぼく、へたくしょなの……。たべるのへたくしょだから……。みっともないの」
はぁ?
「下手くそって、何が?」
「じぇんぶ……パンくずおとしゅし、お口のまわりよごしゅし、ナイフとフォークもうまくちゅかえない……だから、一緒にたべりゅときらわれちゃう」
「最低! 最低の、ド最低!」
思わず怒りに我を忘れて、大声で叫んでしまった。
もしかして、食事のマナーを厳しくしつけられるうちに、イーグルは食事が嫌いに……いや、食事の時間に恐怖を覚えるようになってしまったのかもしれない。
この、細くて頼りない手は、食べることが苦痛で思うように食べられなかったからなの?
「ぼく……」
あ、しまった。イーグルたんが泣く。
「ごめんなさい。突然びっくりしたわよね。違うの、最低だと言ったのは、いーぐるた……イーグルの周りの大人たちのことよ。子供を育てたことがないのかしらね?」
ロッテンさんも珍しくうんうんと頷いている。
「四歳は上手に食べられなくても当たり前でございます。席に座っていられるだけでもご立派でございますよ」
その言葉に、イーグルたんがびっくりしている。
「そうよ! パンくずなんて私もこぼしちゃうし、お父様だってときどきこぼしてるわ!」
「あはは、そうだぞ。それに、口の周りを汚しちゃうなんて……それはもう、可愛い姿が見られるなんて、ご褒美でしかないよ!」
お父様の言葉にハッとする。
そういえば、私が上手く食べられなくて口の周りを汚しちゃうと「ほらほら、口の周りが汚れているよフローレン、お父様が拭いてあげように」って、いつも嬉しそうだわ。
まさか、まさか……! 超天使のご褒美映像が私に与えられるというの?
「お、お父様、イーグルがお口の周りを汚したら、私、私が拭いてもいい? お父様は駄目よ、邪魔しないで、私が拭いてあげるの! ね?」
お父様がハッと口を押えて悶えている。いや、ちょっと待って、イケオジが頬を染めて口を押えて悶えてる姿、大天使様のご褒美映像! いや、違う、そうじゃなくて、なんで悶えてるの?
「きっとそれは、素晴らしく愛らしい場面に違いない……きっと、その様子を思い出すだけで、今日は一日幸せな気持ちで働けるはず……! ロッテン、今日の朝食メニューはソースたっぷりの」
あ。お父様ってば、天使な私が、超天使な義弟の口元を拭いてあげる様子を想像して悶えていたのね。
「ご主人様、朝食はすでに準備されておりますのでメニューの変更は致しかねます」
イケオジお父様の顔が少しだけしょんぼりとしたのを私は見のがさない。
「それは夕飯の時にでもお楽しみくださり、良い夢を見てください」
くっ、それもまたいい! 幸せな気持ちで一日過ごすのもいいけど、夢の中で繰り返し堪能するのもまたよき。って、お父様思ったでしょう。そうかと小さく頷いて大人しくなった。
……うん、ロッテンさんお父様の暴走を止めるプロね。プロだわ。
朝食としてテーブルに並んだのは、ぺしゃんこのパンと、野菜たっぷりのスープとフルーツジュースだった。
玉子焼きとかはないんですかね? ベーコンやハムとか。
うちって、国内有数の……っていうか、ぶっちゃけ王室より金持ちな国一番のお金持公爵家じゃなかったです? タンパク質足りませんよ!
食事前のお祈りみたいなのしてから、早速いただきまーす。
まずはスープを口に運ぶ。
「まっず!」
思わず声が出た。
「おお、野菜嫌いのフローレンがスープを口にしたぞ、もしかしてイーグルにいいところを見せようとしたのか? ふふふ、すっかりお姉さんだなぁ」
お父様がニコニコしている。
「そうか、そうか、まずかったか。うんうん。だが、今日は一口食べられたんだ、何かご褒美を考えないとな」
……は?
六歳で野菜嫌いで一口食べたらがんばったご褒美とか……。
甘やかしすぎでは? と思ったものの、イーグルたんが私の頭をなでるお父様の姿を見てうらやましそうな顔をしている。
「イーグル、そうよ、一口食べた私は偉いの。イーグルも一口食べられる? もし、二口食べられたら、お父様からだけではなく、私からもご褒美をあげるわ!」
よし。いっぱい食べさせる作戦をするチャンスだ!
イーグルたんが、小さなおててでスプーンを持つと、スープを救ってぷるんぷるんの桃色のお口に運んだ。
くっ。可愛いですな! 可愛いですな!
イーグルたんが上手にスープを飲んだ。それから、間髪入れずに二口目を。
「おお! イーグルは二口も食べられるのか! すごいぞ! すごい!」
お父様がほめちぎる。
もやっと。もやっとして、思わずイーグルたんを褒める前に、スプーンを手に取ってまっずいスープをもう一度口に運んだ。
「おおお! フローレンもまさかの二口目……」
お父様が感動している。
おっと、つい。お父様の愛情が欲しくてイーグルたんに張り合うようにスープを食べてしまったわ。
おえー。まずいっ! なんでこう、まずいのよぉぉぉぉ! ! ! !
見た目だけは美味しそうなのよ。綺麗にカットされた人参の色鮮やかなこと。インゲンも青々としていて美しい。そして玉葱は透き通った透明感のある白というか、透明? 飴色にしちゃうとオニオンスープだけれど、これは野菜スープ。
……私が日本で作ってたスープなんて野菜は型崩れしてたし、なんか適当に切った野菜を適当に入れて固形コンソメで適当に味付けてただけだから、見た目も味付けも超適当だった。でも、今目の前の美しいスープに比べたら、何倍も美味しかったよ……。
なに、このまずいスープ。
漫画でヒロインがメシマズをどうにかするみたいなの無かったはずだけど!
っていうか、昨日までの私は、野菜が嫌いだからスープを飲まなかったんじゃなくて、単にまずいからじゃないの?
……まずい。人参は、にんじーんっていう味が濃い。
よく野菜の味を楽しむための料理みたいなレシピあるけど、あれは美味しい野菜ならばいいよね! って話。
良くも悪くも現代の野菜はかなり品種改良されて美味しくて食べやすい物になっているわけで。自生してる原種に近い野菜を食べてみ? エグイは苦いは酸っぱいわ種が多いわ実が小さいわ、とんでもないものばっかりよ?
そうねぇ、例えばピーマンだって、昔はもっと食べにくいものだったのに、今はフルーツピーマンなんて出てきたってそういうことよ! トマトだって青臭かったのがフルーツトマトなんて言われるまで……。
まぁとにかく野菜本来の味を楽しむ系は無理。しかも子供の味覚って大人よりも苦みとかえぐみを強く感じるんだよ!
なんで、こう、野菜の味を誤魔化しまくったスープとかじゃないのか!
「こんなまずいスープとても飲めませんわ!」
うきーとばかりに声を上げた。
シーンと静まる室内。
……あわわ、しまった。作ってくれる人への感謝も忘れ、食べられることへの感謝も忘れ……。
なんたる我儘な発言を!
……あ、れ?
そうだ、私、悪役令嬢じゃない? 我儘いっぱい育つ、自分の思い通りにできないことはないっていう悪役令嬢フローレンよね?
むしろ、我儘を言うのは、悪役令嬢の大切な役割なのでは?
「うん、そうだな、そうだな。そんなにまずいスープを頑張って二口も食べたんだ。えらいぞフローレン。それにイーグルも立派だ。おい、まずいスープはもういい。蜂蜜を持ってきてくれ」
お父様がスープの皿を給仕をする侍女に下げさせた。
おや? お父様のお皿にもまだ野菜が残っているのが見えましたけど?
……まさか、まさか……。お父様も、野菜が、大人なのに、きらい? で、私たちを甘やかすふりして野菜をぽいっと?
でも、もしかしたら、私の我儘で料理人を処分させないためのお父様の気遣いとか? 私の口に合わない料理を出したからと首になることはないってことよね? 当主の口にも合わないんだもん。その当主がそれでもいいって雇ってるってことになるわけだし?
もし、そういう意図があってお父様も野菜を残したのだとすると、めちゃくちゃお父様素敵!
あ、ロッテンさんが睨んでます。そうじゃないようだ。うん。お父様、大人は頑張ってくださいよ……。
それからは、蜂蜜をパンにたっぷりぬって三人で食べた。
膨らんでない固いパンだけれど、ハニーナンみたいなものだと思えば問題ない。というかあの野菜スープに比べたら何倍もおいしい。
「イーグル美味しい?」
「うん、おいしいでしゅ」
イーグルがにこにこして食べている。
「イーグル、お口の周りが蜂蜜だらけね」
可愛い。可愛い。パンくずもついてる。なんて可愛いのかしら! 口の周りに蜂蜜が付くことを気にせずに一生懸命食べる姿!
イーグルが幸せそうな顔をして食べているのを幸福感に満たされながら、そうね、上手いことをいうならば、蜂蜜よりもなお甘い気持ちで心を満たされながら見てた。
ところがあ、私の言葉に急にイーグルは手を止めて、泣きそうな顔になって私を見た。
「ごめなしゃ……い」
あああ!
「違う、そうじゃないからね? お口の周りが蜂蜜だらけだから、お姉様が、拭いてあげましょうか? と思っていたのよ! 拭かせてもらえるかな?」
心に傷があったんだよ。私ってばなんて不用意な一言を!
「あはは、じゃぁ、フローレンがイーグルのお顔を拭いてあげたあと、私がフローレンのお口を拭いてあげようね」
へ?
お父様の言葉に、振り返ると、お父様がにっこにこの笑顔で、顎のあたりをトントンとしている。
「ついてるよ、フローレンも」
まじですか! いや、六歳児だからね! そう言うこともありますっ!
でも中身は大人なので、恥ずかしくて真っ赤な顔をすると。
「いーぐりゅ、ねーたまといっちょ?」
こてんと、イーグルが首を傾げた。
くぅーーーーーーーーーーーーーっ。かーわーいーいーーーーーっ!
すいません、どうしたらいいでしょう、ねぇ、こういう時はどうしたら……。
「わ、私も、一緒だ、家族なんだからっ!」
お父様が慌てて蜂蜜をほっぺにくっつけた。
くっ。本当に親ばかですね。
「いっちょ、いーぐりゅ、かぞく……」
にひゃっと嬉しそうに笑うイーグルたん。
尊みしゅさまじい!
ふと、銀食器に映った私たち親子……。
大天使、天使、超天使……世界最強一家じゃない? !
こちら、冒頭の流れは短編連載とほぼ同じですが、加筆改稿等しております。お茶会シーン後から展開が変わってきます。短編連載版では、領地に追いかけてきた殿下ですが、今回は追いかけません。と、いうわけで、話が違ってきましたので短編連載版と、長編連載版とで完全に分けることにしました。ややこしくてすいません……
楽しんでいただけると嬉しいです(*´ω`*)