面接は緊張するなぁ
ツ「おいお前…どうしたんだよその格好…」
ボ「知らないの? 最近流行ってるんだよ、インフル」
ツ「いやどういうこと…」
ボ「お前こそなんだよその格好。ピコ太郎?」
ツ「どこがだよ。普通のスーツだろ。これから面接に行くの」
ボ「面接…どこ受けるの?」
ツ「出版社だよ」
ボ「受ける〜」
ツ「…うん、スルーするけど。いやぁ、緊張する」
ボ「おいおい…キンチョーするには暑さが足りないぜ?」
ツ「は?」
ボ「ことわざにもあるだろ? ニッポンの夏はキンチョーの…」
ツ「あれことわざじゃねぇよ。キャッチコピーっつうんだよ」
ボ「あっちロビー?」
ツ「キャッチコピー! ずさんなホテル案内か」
ボ「で、具体的にどんなこと話すつもり?」
ツ「まぁ、そうだな…御社の理念に共感したとか、雑誌を手に取った人を楽しませたいとか…」
ボ「ありきたりだねぇ…バカみたい、アホみたい」
ツ「はぁ? なんだよお前…言い過ぎだろ!」
ボ「ツッコミナス」
ツ「じゃあてめぇはボケナスだよ!」
ボ「まぁまぁ…夏野菜どうし仲良くしようぜ」
ツ「くだらねぇ…」
ボ「ちなみにその出版社、社長はなんて名前の人なんだ?」
ツ「ん? …河瀬根 高基だけど…」
ボ「へぇ…ガセネタカキ…誠実な名前だ…」
ツ「どこがだよ。ガセネタ書きだぞ? 社長にあるまじき名前じゃねぇか」
ボ「おいおい…さっきから聞いてりゃ人のことボケナスって言ったりよぉ?」
ツ「なんだよ?」
ボ「挙げ句の果てに、俺の前で社長の名をけなして…」
ツ「は? どういうことだよ」
ボ「河瀬根高基が俺の叔父さんだと言ったら?」
ツ「…え!?」
ボ「嘘になる」
ツ「嘘かい! なんだよ叔父さんだと言ったら嘘になるて」
ボ「そんなことより、面接のイメトレしなくていいのか?」
ツ「するつもりだよ。するつもりなのにさっきからお前が邪魔してんだよ!」
ボ「ほうほう、そいつは失礼ぶっこいた拍子に実が出た」
ツ「きたねぇ…」
ボ「ちなみに俺は、今の会社にはコネで入社しました」
ツ「きたねぇ…」
ボ「ボスがようやくお出ましか…」
ツ「来たねぇ…じゃねぇんだよ! きたねぇ三拍子させんな!」
ボ「君がノるからいけないんだよ。ノせられやすいの!」
ツ「うるせぇよ…」
ボ「あ、バス来たよ。いってらっしゃい!」
ツ「うん…いやちげぇよ! あれ全然違うバスだから」
ボ「ほ〜ら。やっぱりノせられてる」
ツ「まだ乗ってないから!」
ボ「…なるほどね」
ツ「はぁ?」
ボ「黙っててごめんね? お前は今までのやり取りを、友達同士の無駄話だと思ってたかもしれない。…だけど、実はそうじゃないんだ!」
ツ「…まさかお前…面接官として俺を試してたのか!?」
ボ「そうだと言ったら?」
ツ「…嘘になる?」
ボ「…ふふ、だんだん分かってきたね! 社長〜! この子合格です〜!」
ツ「社長? えっ!? このバスに乗ってたの!?」
ボ「ようこそ我が社へ!」
ツ「これ面接だったんだ…これからよろしくな! …あれ?」
ボ「どうした?」
ツ「降りてきた人、社長…だよな? 俺らのこと無視してどっか行ってるけど」
ボ「そりゃそうじゃん。あのひと社長でも何でもないもん」
ツ「えっ…」
ボ「今までのは全部嘘です」
ツ「考えてみりゃそうだよな。あのおっさんも社長呼ばわりされてビックリしてたし」
ボ「ちなみにいえば、僕はあなたの友達ではなくて、さっき知り合った赤の他人です」
ツ「…そういえばそうだったな。ちなみにあなたの名前は?」
ボ「インフルエンザです」
ツ「街中で猛威をふるっている模様です…」
のちに分かったことだが、このバス停での出来事は出版社に隠し撮りされていたらしく、男は晴れて本当に入社を果たしたのだった。




