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恋愛感情が無くなった世界で恋愛の神様と暮らす。

作者: 依知川咲也

処女作です

読み切り版です

読んでくれる人がいたら続き書きます

あなたは恋愛を知っているだろうか?


大体の人がこの質問をされた時は当たり前に知っていると答えるだろう。


しかし本当にそうだろうか、

もちろん私も知っている人がいないとは言わない。


しかし辞書によると恋愛とは"互いに恋をした状態"と定義されている。


私はこの"互いに"というところに引っかかった。


学生時代、私はいろんな男を見てきた。


体でのみ判断する者や、恋愛感情関係なしに手当り次第告白する者、

急所が反応したら可愛いなどと言って挙句の果てには反応の強さでランク付けをするなどという大馬鹿者もいた。


恋とは特定の人に強く惹かれ、一緒になりたいと思う気持ちのことである。


そんな連中が本当に恋を、恋愛を知っているのだろうか。


例えば、恋愛感情が感じられない世界になったとしたらどうなるだろうか。

____


『終点○○、○○です。この電車は折り返し快速___


僕は本にしおりを挟み閉まってから電車を出た。


さっき読んでいた本のことを考えながら改札へ向かう。

恋愛感情が感じられない世界ねえ…

割と密接に人間関係と結びついてると思うんだけど…

ていうかこの著者自分の予想で書きすぎてないか?

そりゃそんな考えの人もいるだろうけどそんな大多数がそうみたいな書き方しなくても…


「…んー!…きくんー!優希くんー!」


「ん?」


ふと呼ばれた方を見ると、一人の女の子がいた。


「 か…奏さん!?」


彼女の名前は奏唯依。

ショートボブの黒髪で、とても可愛くて、性格も明るいし優しいので学校の中でも大変人気で告白を考えている人や、した人も沢山いるという。

しかし今まで彼氏は作ったことがないという話だった。


「やっと気づいた…ていうか優希くんが見えたから声をかけたのにそんなにびっくりする?」

「ごめん…」

「ていうか前に奏さんはやめてっていったじゃん。昔みたいに唯依って呼んでって」

「いや流石に難しいし呼び捨てじゃなかったよね…!?」


ただでさえここで話しているだけでも恨みを込めた目で見てくる人がいるのに

名前で読んでたりしたらそういう人がもっと増えそうだ。


「そういえば、何か考え事でもしてたの?」

「え?」

「さっき返事しても反応なかったじゃん」

「あーさっき読んでた本のことを考えてたよ」

「へー!どんな本なの?教えてよ!」

「恋愛感情が感じられない世界ってやつだよ、まだ途中だけど」

「へー!面白そう!」


奏さんは本読みの趣味があるので沢山本を読んでいるらしい。


「その本全部読み終わったら貸してよ!」

「わかった。」

「約束だよ!じゃあ私はお母さんにむかえにきてもらうことになってるから!また明日!」

「また明日」



僕ははっきりいってこの人のことが異性として好きだ。

細かい仕草からとても可愛く、それでいて優しい。

僕はそういう彼女の魅力に惹かれていっている。


僕は駅から家まで移動した後、家の近くにある茂みを通り、開けた場所に着いた。

そこの真ん中には1本の大木が生えている。


ここは僕が小学生の頃に見つけたところで、居心地がとても良く、自分の他には誰も来ないので僕は度々ここに来てゆっくり本を読んだりしている。


ゆっくりしたいのなら家で読めという話になってくるのだが、僕の親は海外の仕事で日本の家を空けていて、なかなか帰ってこないので、一軒家に1人だけという状態である。


広めの家に1人は少し落ち着かないので結局いつもこの場所に来ている。


僕は鞄から小さめのレジャーシートを取り出して木のそばに敷いた。

そして本を取り出しシートの上に座って読み始めようとした時


「ん?」


空に光っている球体があることに気がついた。


「なにあれ…」


しばらく見つめていると


「あれこっちに降りてきてないか…?」


その光はどんどんこっちに近づいてくる。


「なになにこわいこわい…」


僕は咄嗟に木の後ろにかくれた。


しばらくして光は地面に着地すると同時に強く光り輝いた。


木の後ろに影となったところで光がおさまるのを待った。


光がおさまった様子なので光があった所を見ると、


「…え?」


そこには銀髪で少し派手な服装をした中学生くらいの女の子が眠っていた。


____


空から降ってきた中学生くらいの美少女が目の前で眠っている。


十人に言っても一人も信じてくれなさそうな状況である。


実際にその状況にあった僕はと言うと


「どういうこと…?」


もちろん大混乱だった。



だって考えてみてほしい。


急に空から光が降ってきたかと思ったらそれは銀髪の中学生くらいの見た目の美少女だなんて

どう考えてもアニメやマンガの世界の話だと思う。


そんな感じで混乱していると、目の前の美少女が目を覚ました。


まだ少し焦点が合っていない様子の水色の瞳で


「ん…?あれ…ここどこ…?私なんで知らないことで寝てたの…?」


少し混乱した様子で辺りを見回していた。しばらくして


「てかあれ!?身体小さくなってる!?まさか…」


やっと僕に気づいたみたいで話しかけてきた。


「ねえそこの君、好きな人っている?」


唐突にそんなことを聞いてきた。


「え…?い、いますけ…」


急に聞かれて奏さんの事を思い浮かべながら正直に答えそうになった時、あることに気がついた。


何故か奏さんのことを思い浮かべてもドキドキしなくなっていて、魅力も思い出せなくなっていたのだ。


「あれ…なんで…?」


僕が戸惑っている様子をみて、その子が


「まさかいたはずなのに急に好きじゃなくなったとか?」


と言ってきた。


その通りだったので僕はつい頷いてしまう。


「やっぱり…」


少し悲しそうな顔をしながらも何かに納得した様子だった。


まさかこの子が関係してたりするのだろうか…いや流石にないか…


「あの…」


「あー…ともかく君には説明しなきゃね…まあ私も全部わかったわけじゃないんだけど」


少女が少し覚悟を決めた様子で言ってきた。


「まず、君の名前を聞いてもいい?」


「相戸優希…です…」


「優希くんって言うんだ!私の名前はアフロディーテ!恋愛の神だよ!」

思っていたより話し方がフランクだった。

それよりアフロディーテ?恋愛の神?僕の頭にはとある神話の神が思い浮かぶ。


「それってまさかギリシャ神話の?」


彼女は少し驚いた様子で


「よく知ってるね、ゼウスとかヘスティアみたいに有名どころってわけでもないから知らない人も多いと思ってたけど」


と言った。


どうやら思った通りの意味だったらしい。


しかし、一つ引っかかることがある。


「でもギリシャ神話って創作じゃないの?」


彼女は少し考えた後に


「事実を誇張しまくって原型とどめてないからほぼ創作って認識で問題ないよ」

神の名前とかは事実だよと付け加えて言った。


「みんなアフロディーテ…さんみたいな見た目なの?」


そう僕が聞くと、


「いや、今の私は力が制限されてるみたいで見た目も子供になっただけで本来は大人の姿だよ」


と答えてくれた。


「制限?」


まず何かあったのは間違いないだろうけど…


「ていうかアフロディーテって長いから言いにくいでしょ?なんか簡単な呼び方ないかなー?うーん…アフロは髪型みたいで嫌だし…アーテはほかの神になっちゃうし…なんかない?」


少し考えていたら唐突に呼び名を気にし始めた。


そんなこと言われても…


「アフロディーテだし…アフィーとか…?」


「アフィー…」


流石に神様に向かって失礼すぎたか…


「ご…ごめ((「いいねそれ!そう呼んでよ!」

「え?」


まさかの採用。


「なんか可愛いしいいじゃん!アフィーって呼んでね!」


どうやらとても気に入ったようだ


「アフィー…さん?」

「アフィー!さんは付けない!いいね?」


すごい勢いで行ってきたので、僕は頷くしか出来なかった。


「そういえば結構脱線しちゃったね…まあ多分封印されちゃったから体が縮んでるんだと思うよ…」


「なんで制限されてるかは聞いてもいい?」


「多分天界封印っていうのをされたみたい」


「天界封印…?唯一神みたいな人から追い出されたみたいな感じ?」


「いや、天界封印自体は誰でもしようと思ったら出来るからそれは無いはず。天界封印は下界でいう殺害みたいなもので、禁止事項とされているよ。殺人と違うところは死ぬんじゃなくて下界に力を制限された状態で落とされるところだよ。」


どうやら何らかの誰かに故意に天界から追い出されたみたいだ。


「でも不思議なのが、本来唯一神以外が天界封印なんてしたらすぐ周りに発覚すると思うんだけど…」


「誰にやられたかとかおぼえてるの?」


「いいや、わからない…」


僕は最初は混乱していたけどいつしか冷静になっていて、しばらくアフィーに質問しては答えてもらうと言うことが続いた。


そしてアフィーは、少し迷った後とある話を切り出してきた。


「実はね…君から恋愛感情が消えたのは多分私が封印された影響なの。」


「私たち神は封印されると力を失うと同時に下界から司るものが消えるの、例えば海の神ならこの世界から海が無くなるの、だから一つ欠けてしまうだけでも世界のバランスが崩れて滅びかねないから禁止事項とされているのよ。」


「え…」


「ごめんね…」


「全然いいよ…怒るとかないし…」


「ていうかさっき封印されたら司るものが消えるって言ってたけど司るものがほかの神と被ってた時とかってどうなるの?ていうか恋心ならエロスじゃないの?」


たしかアフロディーテは愛と美と性のはずだ。

そしてエロスが恋心と性愛。

似てるけど少し違うはずだ。


「そんな違いに気づくなんてやっぱり知識人だね君は…実は封印されたら司るものが消えるのは私を含むオリンポス十二神だけなの。でもその代わりに類似したものも消えてしまうの。例えば私が司る愛に類似している恋心も消えてるでしょ?」


「たしかに…え?ちょっと待って恋心もってことは愛自体もちゃんと消えちゃってるの…?親愛とか敬愛とかも」


「そのはずだよ…」


「ていうか美と性と愛だから美と性も消えてるはずなのかな…」


「そうだと思う…」


あれ…でもおかしい。

僕は最初この子を美少女だと思った。

というかなんなら今でも思っている。

美が消えているなら美しいと思わないはずだ。


「ねえ、ちょっと来て」


僕は彼女に言うと、とある所へ歩き出した。

今くらいの時間なら見えるはず。


「どこに行くの?」


その場所に着いた。


「見て」


そこは夕焼けがとても綺麗に見れる場所だった。

僕はいつもいる木のそばから少し進むと着くところで見れる夕焼けが大好きだった。


「綺麗…」


アフィーがついそんなことを言っていた。

やはりだ。


「やっぱり今ここで見える夕日は今でも美しいと思うんだけど」


「あれ…どうして…?封印されたなら美しいと感じることも出来ないはずなのに…」


僕はアフィーが言っていたことを思い出した。


『でも不思議なのが、本来唯一神以外が天界封印なんてしたらすぐ周りに発覚すると思うんだけど…』


「君は唯一神以外が天界封印するとすぐにバレるって言ってたよね?」


「うん。多分発覚次第封印を解くと思うから戻れてるはずだと思ったんだけど…」


「でも戻れない。ということは誰も唯一神でさえ気づいていないってことだよね?」


「一応そういうことになるはず…」


「例えば恋心をだけを消し去ってそれ以外は消さないとかってできるのかな?」


「不可能じゃないかもしれないけどわざわざそんなことする方がいるわけ…あ…何らかの方法で消す対象を恋心だけに絞ってこっそり封印するなら下界に及ぼす影響は少なくなるし、少ない力で行うことが出来るかも…」


「つまりは恋心だけを消し去りたい誰かがそれをした可能性があるって事だね?」


「多分…美が消えてない時点で何かに絞ってるのは確定だと見ていいと思う。」


「そうか…ねえ、君が天界に戻る為にはどうしたらいいの?」


「一応手っ取り早い方法としては上で封印を解いてもらうことだけど今回は難しそうだし…」


「まだ分からないんだよね?」


「うん…」


「じゃあできるだけの協力はするよ。せっかく出会ったんだし。」


「え?いいの?」


アフィーがすこし驚いた顔をしてこっちを見てくる。


「今までと全然違う空間に急に一人で投げ出されるのって大分辛いでしょ?僕なんかで安心できるかは分からないけど。」


「まあそうだね…申し訳ないけどお願いできるかな…」


「頼りになるかは知らないけどできることはするよ。」


そういうわけで、僕はアフィーが天界に戻れるように協力することを誓った。


____


「そういえば今更だけどなんで私がよく分からないこと言ってる子供扱いしなかったの?」


急にアフィーがそんなことを聞いてきた。


「え?」


「だって子供が急に神がどうとか天界がどうとか聞いたら普通何言ってんだこいつってならない?」


アフィーは本当に不思議そうな様子で僕を見ていた。


「そりゃ何も見てなかったらそう思ってたかもしれないけど、急に光に包まれて空から降ってきたから本当に神様なのかなって思ったんだよ」


「あ、そっか…」


ふと気がつくと少し暗くなってきていた。


「もう夜だけどこれからどうするの」


アフィーは少し考えたあと


「行くとこないから泊めてくれない?」


と言ってきた。


「えー…」


「嫌なの?親からなんて言われるか分からないから?」


「違うよ、親は海外で仕事してるから家では1人だし」


「じゃあいいじゃんー泊めてよー」


「いや神様と言えど見た目中学生の女の子連れ込むのはちょっと…」


「じゃあ君は見た目中学生の女の子を夜の外に放置するんだね?」


そう言われると断れないじゃないか。


「うっ… わかったよ」


「んじゃあこれからよろしくお願いしまーす!」


と言って目の前にいる神様はニッコリ笑った。


____


僕が彼女と出会ったのは高校入学してからしばらくして、初めての図書館開館日だった。


中学校の時とはまるで違う広さで在庫も倍以上あったため少しワクワクしながら本を選んでいると


「まさか君、ゆうきくん?」


唐突に現れて話しかけてきた。


急に現れた女子に名前を呼ばれ混乱していると


「覚えてない?保育園一緒だった奏唯依!」


とても聞いたことがある名前だった。


「まさかあのゆいちゃん…?」


「他にどのゆいちゃんがいるのか知らないけど多分そのゆいちゃんでーす!」


僕とゆいちゃんは保育園の時にとても仲良く、沢山遊んでいた。

しかし、卒園した後はなかなか連絡が取れずにいて、いつしか自分の中で仲の良かった過去の友達という扱いになっていた。


そんな子と高校に入った瞬間再会したことが嬉しく、その後しばらく話をした。


彼女も僕と同じ本読みの趣味を持っていて、推理小説からライトノベルまでどのジャンルも読む乱読派だったので話はとても弾んだ。


なんか他人行儀みたいで嫌だと言われたけれど

今まで通り名前で呼ぶのはなんか恥ずかしかったので、奏さんと呼ぶことにした。


それからも度々本の話で盛り上がったりして行くうちに僕は彼女のことが少しずつ好きになっていった。


決してラブコメみたいに大きい理由がある訳ではなかったけど、学生が恋をする理由には十分だと思う。


しかしアフィと出会った日に、僕の中にあったその感情は失われてしまった。


____


おかしい。


それに気づいたのは1時間前だった。


私は少し用事があり、優希くんにメッセージを送った。


いつもなら彼に送る時は1つの文章にいちいち時間をかけておかしいところがないかとかをチェックしてから送るんだけどそれをするのを忘れてしまっていた。


送ったあとしばらく違和感に襲われてやっと気づいた。


それから彼を好きな気持ちが消えていることに気がつくまでは時間はかからなかった。


これまでは考えるだけで少しドキドキしてくるほど好きだったのに今は何でか分からないけど彼以外の男子と変わらないくらいに感じる。


本当に何でなんだろう。


私にあるはずの恋愛感情が分からなくなってきた。



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