怪しい店の怪しい店主⑶
「お願いがあるんですけど、これで支払いとかできますか?」
わたしはジオン様からもらい受けていた金塊と金の粒がじゃらじゃらと入ったポーチを取り出した。
「もしかしてあっちの世界から持ってきたのかい?」
「そうなんですけど、換金するのもよくわかんなくて。ちょっと困ってたんです」
「よっしゃ。これから支払い分をとって、おつりは現金で返そうか?」
「そうしてもらえると助かります」
「じゃあ、宝珠のテストとかいろいろあるから、できたら連絡するよ。ハルちゃんの連絡先教えてくれる?」
「えっと……」
スマホを取りだそうとした時、割って入ってきたのは植草くんだ。
「いいって。俺に連絡くれればハルちゃんと一緒に取りに来るよ」
「直接ハルちゃんと話した方が手っ取り早いだろ?」
「ハルちゃん知らない事もいっぱいあるから俺が噛み砕いて説明するしさ」
「……お前ね。俺が信用できないわけ?」
「別にそういうわけじゃ無いけど」
「いいや! 俺はビンビンと感じたね。リヒトからそういう疑いの眼差しを」
「じゃあはっきり言うけど、セイゴさんを信用できるわけないじゃん」
思わぬ植草くんの発言に少々驚いた。
彼のことを慕っているはずなのに、それでも信用できないと断言するなんて、なかなかのリアルさだ。っていうかそう言われちゃうセイゴさんって、見たまんまの要注意人物なのか……?
「だってセイゴさんハルちゃんのこと絶対実験につき合わせるだろ? 勇者とかレアすぎるしさ。だいたい最初は冷静さを装って勇者かどうか疑ってる風のクッサイ演技してたけど、すぐに隠しきれない好奇心がダダ漏れだったからね?」
どんな実験につき合わされるのか、想像もつかないけどたぶんヤバイやつに違いない。怪しむわたしに植草くんが気付いた。
「この人自分の作った魔法具を装備させるのが趣味なんだよ。絶対つき合っちゃダメだよ? すげえ変な効果があったり、呪いの道具だったりするからさ」
「うん」
確かにさっきの血圧計も変な虫が出てきたし、気持ち悪かった。
植草くんと一緒の時しか来ないほうがいいのかも。
「あーああ! なんかおじさん傷ついちゃった。俺はリヒトなんかの為じゃ無くてハルちゃんが可愛いからブレーカー作るんだからな」
「はいはい。じゃあできたら連絡してよ?」
「ハルちゃん、こんな不良魔族とつるんでちゃダメだよお? リヒトって油断してるとこうやってすぐいけず言うんだからね」
「はあ……」
「誰が不良だよ。俺はセイゴさんみたいに警察の職務質問受けたことなんて一度も無いからな」
「人聞き悪いこと言うなあ? 俺の隠しきれないフェロモンに警察が反応してくんのよ」
「この人1日に3回も職質受けた事あるプロだからね。職質受ける側のプロ」
わたしは警察の人じゃないけど、セイゴさんに声をかけたくなる気持ちはわかるな。人を見た目で判断しちゃいけないけど、でも怪しいんだもん。
「反抗期のリヒトくんは置いといて、俺はキミのため全身全霊を込めて最高のブレーカーを作るから任せといて」
セイゴさんがわたしの肩に手を回してパチンとウィンクしてきた。
「だーかーらー、ハルちゃんに触るなっての」
「おーまーえーは、いちいちうるさいっての」
なんだか不穏な空気に、わたしは慌てて睨み合う2人の間に入る。
「あの、ともかくよろしくお願いします! 遅くなると親も心配するんで、わたしはこれで失礼しまーす」
「そっか。ハルちゃんは勇者だけどまだ高校生だもんね。オッケーオッケー、気をつけて帰ってよ」
セイゴさんに頭を下げつつ植草くんをチラ見する。
「道わかんないし、植草くんも一緒に帰ってくれる?」
「もちろん、ハルちゃんと帰るよ」
この殺伐とした空気からようやく逃げられると、わたしはほっと胸を撫で下ろした。
店を出ようとした植草くんが、ドアのとこでピタッと足を止め振り返る。
「セイゴさん、これは忠告だけど、余計なことすればハルちゃんに消されるからな」
「まあっ! なんてこと言うんだい、この子は!」
植草くんの捨て台詞に、セイゴさんがコラっとゲンコツを振り上げてみせる。
だけどその言葉はブーメランみたく戻って来て、わたしの方にこそダメージを与えた。
……わたしはどっかの殺し屋か?




