光のカーテン⑶
「今結婚の答えが欲しいと言うのはわがままか?」
「え、あの、その……」
もちろんわたしはカール様に答えを言うためにここへ来たんだ。
カール様のことは好き。
だけど結婚したいかと言われると……?
「正直なところよくわかりません」
カール様のことを見上げていたけれど、見つめ続けることができなくて、自然に視線が下がってしまう。
「カール様のことは好きだし、尊敬してるんです。だけど仲間として好きっていうか、そういう好きかどうか考えてみたことも無くて」
「今から考えるというのはどうだ?」
「あの、やっぱり、わたし、その……自分の故郷へ帰ろうかと」
「俺と共にここに残る気にはならないか? 俺は一生ハルを大切にする。残ったことを後悔させない自信がある」
ゼロ距離でこんな風に口説かれると流されてみるのもいいのかなぁ、なんてついつい思ってしまう。だけどわたしの口から出た言葉は────
「すみません」
もう少し間を挟めばよかった。
即答したみたいになっちゃって余計に申し訳ない。
「そうか。……フラれたな。突然結婚を申し込んだりして、俺のことを嫌いになっていないといいが」
「嫌いになるわけ無いじゃないですか! カール様の事はむしろ大好きですよ!?」
「え?」
いつも冷静なカール様が顔を赤くするので、わたしもぼっと火がついたみたいに熱くなる。そういう意味じゃないんだけど、フォローしようとして何口走ってんだわたし。
草原を強い風が吹き抜けていき馬が後退した。
「きゃっ」
それは突然勢いを増し、風がうなり声をあげる。わたしが落馬しないようにとカール様がしっかりと支えてくれる。
「大丈夫か!?」
「ええ、わたしはだいじょう……ぶ」
この風の吹き方には心当たりがある。
自然の風とは違う。
アンバージャックの水辺にいた時と同じだ!
「ちょっとすみません!」
カール様の腕を振り払い急いで馬から飛び降りるとシュプリンガーを抜いた。
「ハル!?」
風の威力を剣でいなしながら草原を走る。風の集中点を見つけて一気に斬りつけた。
「危ないではないか!」
ジオン様が驚いた顔をして風の亀裂から転移魔法を使って登場した。
「危ないのはジオン様でしょ!? なんで風魔法を一緒に使うんですか!?」
「あんな男にくっつくな!」
「くっついてません! 変な事言わないで下さい」
ジオン様こそが屈み込んできて、不満そうな顔をわたしにくっつけてくる。
「それよりもちゃんとお仕事してきたんですか? またアルベルトさんに怒られても知りませんからね?」
「無論だ」
別れた時には泥だらけのヨレヨレだったのに、服装はまたパリッと清潔に整えられていて、ちゃんと王様の仕事をしてきたらしい。
「魔王……?」
振り返るとカール様の顔面は蒼白だった。
風魔法を使った魔王に、勇者のわたしが斬りこんでいき、おまけに言い争いをしているように見える。
「あのカール様!? この人魔王ですけど、ほら大丈夫なんで。この前説明しましたよね??」
わたしの話が聞こえないのか、カールさまが剣を抜いて馬を走らせた。ジオン様に向かって突き進んでくる。
不敵な笑みを浮かべていたのはジオン様だ。落ち着いた深紅の瞳が燃えるような緋色に変わる。剣を向けてきた男には、容赦する気は無いようだ。
わたしはジオン様の前に飛び出すとシュプリンガーを振りかざして、カール様の重く鋭い剣をなんとか受け止めた。




