34.てぃーぱーてぃー
ぼちぼち更新していってます。
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迎えた当日は部屋に招かれたとはしゃぐ人間達の空気に流されるように次々と、昨日まで怖がって話しかけて来なかった子達も話しかけたり、チラチラと期待と好奇の眼差しで見てくる
それもそのはず、今日招く予定のパトリシアやベッキー達がとっても楽しみと、放課後の広場ではしゃいで回っていたのだ。まぁ、今まさに目の前ではしゃいでいるのだが。
そんなに嬉しいのは分かったが、ああも跳ねまわっていると全ての生徒に知れ渡ってしまうではないか。
彼女たちが騒いでいると、一人の女がつかつかとすれ違いざまに、これ見よがしにクスクスと笑っていた。一番目立つあれは確か同じ上級の塔のメレディスと言ったか。
彼女のコバンザメ共が
「感覚が庶民だと魚の水槽にも興味が出てくるのかしら?それも、人を狂わす人魚の部屋なんて!」
と侮蔑の嘲笑をよこしてきた。正直言って、あの初めての交流から何かにつけてこのように挑発してくるので相手をしないことにしている。最近は私たちと仲良くしようとしている者たちもターゲットになっているのだろう。放っておけば良いものを、パトリシアは正義感が強いのだろう、毎度彼女たちに対して
「あなた達、招待されなかったからといってそこまで言うことは無いでしょう?彼女達は歴とした1王国の王女なのよ、プリンセスのお部屋に興味があるのは同じでしょうよ。それに、人を狂わすなんて出鱈目は失礼にも程があるわ」
と、言い返してはいつも黙らせていた。しかし、今回はメレディス本人がお出ましのようだ。
「あーら、お母様が言ってたのよ。大陸の北西の港には古くからの言い伝えがあるんですって。昔々、海に出た漁師がとても美しい歌声を聞けば決まって嵐や大波の渦に巻き込まれて海に引きずり込まれるんですってね!生き残った人たちは口々に半人半魚の乙女を見たと言っていたって。」
庭の広場が静まり返る、と同時に好奇の目が畏怖に戻っていく
「やっぱり、人間以外の種族なんかを学園になど…」
「なにされるか分かったもんじゃない」
ウータとララはそんなこと無い!と強く言うがそれが逆効果となる
広場は中央に位置し、そこから男女それぞれの塔に分かれている。
男性生徒も居る場で、余計に野次魚が多くなる。
「なんだ?喧嘩か?」
「いや、なんか噂の人魚のお姫様にあの王子の婚約者様が突っかかってるような…」
「あー、フレドリック殿下のだろ?如何にも、異種族大嫌いって感じだもんな、あそこの家。」
「それにしても、派手な髪色してるよな~人魚って。」
「…ふ、」
エリュシオネーは一笑に附す
「何がおかしいのよ、この状況で笑うなんて、やっぱり人魚は頭可笑しいんじゃなくて?」
「いや、そのように考える人間こそが愚かだと思ったまでだ」
「何ですって?!」
「どこのお転婆かは知らぬが、確かに大昔には海岸付近に良く集まり、歌声を自慢する会は我が民の間では良く開かれていた。それを耳にした人間が心奪われ、うっかり海の一部になることはあっただろうなぁ」
「きゃあ!」
「や、やっぱり人魚も他の亜人と同じく野蛮なのですわ!」
わざとらしくコバンザメどもが恐怖を煽るように騒ぎ立てるその様は以前のシャルロッテに似ているな。
彼女たちの言葉を受けて何人かの生徒が物陰に隠れるように遠ざかっていった。
「お姫様と言っても、やっぱり多くの貴族が言ってる通り他の亜人のような蛮族と同じってことなのかな?」
「へへ、野蛮なら少しは調教してやっても良さそうなもんだよなぁ?」
「だが」
ギロリと姉妹の誰よりも鋭いその眼を真っ直ぐに向ける。
勢いづいていたメレディス達をも黙り込む。どうやら、蛮族と判断すれば、異種族であれば何をしても良いと思っているような者もいるようだ。ここらでこ奴らも分からせねばならぬ。
「戯れ程度で人間を惑わすことができるような強い魔力を持っていると言うことは、すなわち意図したらより強力な影響を他に与えうると言うことだ。」
ゆっくり歩を進め、メレディスの目の前に弧を描くように歩み寄る。じりじりとメレディスは後ずさるが、私の作った記念の氷像が背後にあったのを確認して逃げをやめたようだ。
「多少の戯言は学友の戯れとして水に流してやるが、気を付けた方が良い…特に私のような強力な人魚が挑発や侮辱に対して怒りを覚えた時…」
彼女の目をじっと至近距離で見据える。メレディスは哀れにも膝が震え、目に涙を浮かべている。
「「うっかり」お前達を吹き飛ばしてしまうやもしれぬぞ?一瞬でな。」
声を一段を低くして脅してやると涙目でいたメレディスとその取り巻き達は脚がついに力尽きたか、崩れ落ちる様にその場にへたり込んでいた。
「ひ、ひぃっ…!」
「い、いきましょ!」
「メレディス様、お気を確かに!」
メレディスを庇うようにコバンザメ達は去っていき、周りの生徒たちも何かとてつもなく恐ろしいものを見たかのように小魚の様に散っていく。
その様子を複雑そうにテアやウーテ、ヘラは見ていた
「お姉さま…」
「シオン姉様、人魚の誇りを守ってくれて嬉しい。でも、姉様が悪役になることはないからね?」
あぁ、分かっている。ただ、あの状況で私たちが何も返さず、言われっぱなしは腹の虫が収まらなかったのだ…
「分かってるよ、姉さん。私は姉さんのやったこと、間違っていないと思うもん。明日から変なちょっかい、もうかけてこないと良いね。」
ウーテ…、ありがとう。
「間違ってないか正しいかとかいうよりー、姉さんかっこよかった!」
「うん、姉様格好良かったよ!ウータもあれくらい言い返せれば良かった…」
「そうですわ!そもそも!お姉様は絶対無敵なのだか何も心配ないのですわぁ!お姉様愛していますぅうう!」
ララやウータ、フリーダもな。
ふぅ、と一息をつくとデビ―やジゼルが寄ってきた。
「あんなの、ただのやっかみですからね!」
「今の話、もう少し聞いても!?私、伝説が本当だったかを調査する歴史学に興味を持っていますの!」
彼女たちを皮切りに次々と部屋に招く予定の者たちが駆け寄って、その後はわいわいと全員で部屋に移動することになった。
今回招待することになったのは
上級の生徒:パトリシア、パメラ、ベッキーにデビ―
中級の生徒:ジゼル、ソフィア、ダリア
初級の生徒:エミリー、ノーラ、ジェニファー
の10人となった。初級の塔は、フリーダとララが大分打ち解けているらしく、何回かに分けてほぼ全員の生徒が部屋に行きたいと請われていたそうで、今後も十何人もの小さき子が訪れるようだ。
また、何があったかは知らないが皆しきりにフリーダとララ両方を小さき子が話しかけてくる。ララは分かるが、フリーダは普段から大人しかったと思うのだが、新しい友人ができて明るくなったのだろうか?なによりも、楽しそうであればよいことだ。
端から見ても大人数を引き連れている形となっているからか、はたまた先ほどの騒ぎを見てからか、その後は特に誰かに絡まれることもなく(というか、皆して道を開けたり避けたりしていたな)寮にたどり着くことができた。




