22.人魚の初登園
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バシャーン!!
目の前に水が広がる。ここで水を浴びてしまったら人魚の姿に戻ってしまう。確か、全身の半分に水がかかると変化薬が解けるのだったな。ならば
パチン!
水の動きを止め、水滴がかからぬよう守護結界を妹たち全員にかける。
急に水をかける挨拶など、海中ではまだしも陸だから焦ったぞ。
「あっはは!魚は水がないと死んでしまうだろうから、歓迎の証に水をやったんだけどどうだ…い?」
「え、なんで水が空中で止まってんだよ。」
「もしかして魔力持ちか?!」
「伝説の種族だろ、魔力持っててもおかしくないぜ。でも、魔道具を使った様子はない…。」
ふむ、目の前に3人の人間の男が我らに杖のようなものを向けている。そして面白そうに見るか見ないふりをして通り過ぎる学生どもが一歩引いたところに、という感じである…だが、先ほどの攻撃力のない水と言い、「歓迎」の単語と言い、悪気があって水をかけたわけではない…のか?
我ら人魚も相手への感謝やあいさつ代わりに水流噴射の魔法をかけていたものだ。それを福水流という。同じ文化を人間も持っているのか?なら、相応の礼をしなくてはなるまい。
「人間の子」
話しかけたらものすごく驚かれた。何故だ、そこまで驚かなくても良かろうに。
「歓迎痛み入る。人魚にも挨拶に大量の水を相手に浴びせるという文化があってな。だがすまぬ、今陸で水を浴びるとこの制服が濡れたりと様々な事情があり厄介なのだ。」
うーむ、3人分と言ったら人魚の国ではこのくらいの水量だったか?
人数分の水流の珠を上に浮かべて考える。もう少し多い方が喜ぶか?向こうが水をかけてきたのだから向こうは水をかけられても良いということだろう。
何事もはじめが肝心だ。はじめの挨拶で親しみやすさを刷り込み、人間を油断させる第一歩なのだ。
「ちょっと簡略的な挨拶で申し訳ないが、返礼のグルースだけでも――」
「「「わぁああああああ!!すみませんすみませんすみませんでしたぁああ!もう二度としないので!それではああぁああ!」」」
…ん?何故逃げる。何故蒼い顔をするのだ。
やはり、私のこの白い色が珍しいから恐ろしかったか?もう少し柔和な顔をすればよかったか?いや、人間相手にあまり笑うことなど…。
「エリュシオネーお姉様」
なんだ、テアよ。
「多分考えていることは全て見当外れだと思いますわ。」
なに?!じゃあ何が恐ろしかったというのだ?!私はただグルースの返礼をだな――
「シオン姉様のそういう鈍くてまっすぐな性格、嫌いではないけどね。ちょっと他者と関わりなさ過ぎてアレだね。」
ヘラ?!アレとはなんだアレとは!
「まーいーじゃんー。さっさと行こうよ。」「いこーいこー。」
あ、こらウータ!ウーテ!
アメリア!お前はこの状況わかるか?
「…姫様の社会教育はやり直す必要が多少なりとも…」
そんな…ララ、フリーダ、そんな目で見ないでくれ…一体私のどこが悪かったんだ…。
「お姉様、お姉様は悪くないですわぁ!あれは、人間が失礼だっただけです!その人間にお姉様が変に礼儀正しかったのが逆に相手にとって脅しになっただけなのですわ!心配いらないのですのよ!」
そうか、そうか…種族が異なると文化も大きく異なることは覚悟していたが、ここでも違いが出たということだな。
なかなかどうして、これからが大変そうな予感がするではないか。
この水流珠は何処にも流せなくなったので仕方ないから我々が来た記念として勝手に氷の土台を作り、その上の浮遊像として放っておいた。
こうして学園の正門付近でひと悶着あった後に、我らは学園長の部屋へと通された。学園自体は王城ほどではないが町の建物と比べると随分立派なつくりであったが、殊にここの部屋は念入りに作りこまれているようだった。
学園長は眼鏡をかけた細長い人間の男で、鼻を「ふん!」と鳴らすのが癖なようだ。(アメリアによると癖というわけではないらしいが)
その学園長に案内され、我らは塔という、年齢や能力によって分けられるグループにそれぞれ入るため、テストという試練をいくつか行った。その結果、このようになったのだ。
エリュシオネー:上級の塔
テア :上級の塔
ウータ :中級の塔
ウーテ :中級の塔
ヘラ :中級の塔
フリーダ :初級の塔
ララ :初級の塔
ララは私たちと同じ塔になれなかったことが不満なようだった。が、教師を認めさせることができれば飛び級が可能といわれたため、我々姉たちはララを応援するぞ。頑張れ、ララ。
必要な教科書という書物と、我らは全員当たり前だが魔力を持っているので杖の魔道具等を渡される。教材全てを寮に届けるようアメリアが手配してくれ、後は各塔の授業を見学するだけで本日は終わりらしい。
ではまず、ララとフリーダの塔から見ていくか。




