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21.人間の基礎知識はこれでバッチリ?

いつも読んでくださりありがとうございます!


 あの人間の王への最悪の挨拶が終えて人間感覚だと2か月半くらいが過ぎた。この期間、何と意外にも平和に日々が過ぎていたのだ。

 あれだけ啖呵を切ったのだ。何かしら嫌がらせをするならば私に来ると思ったのだが、あまり気になることはなかった。しいて言えば夜何者かが殺しに来そうになったり(その日は眠っていないので驚いて引き返していった。)、珍しい陸の毒が入った飲み物を持たされたり(ドロテアを師と仰ぎ魔法や魔法薬の勉学に励んでいた時に様々な毒を飲まされたので別に効かなかった。)。それ以外は特に何もないといっても過言ではないだろう。


 しかし、平和と言ったが、実際はかなり忙しかったのだ。


 「学園は準備ができ次第すぐに通ってもらいます。それまで、大人しくしていることですね。この偉い私が自ら取り次いでいるんですから感謝してもいいんですよ。」

 

 そういって、あの日部屋まで送り届けたあの偉そうな自称王のお気に入りで偉いというダン…ダンダン?あ、ダンカン…は律儀にも我らの監視役だからと毎日私たちの様子を見に来ていたからすっかり顔は覚えてしまった。

 それは彼も同じようで、今では私たちの名と顔が一致するようになっていた。

 真面目で律儀な性格なのか、妥当な要望と彼が判断したものは基本的に私たちの要望を叶えてくれる。


 はじめ、私たちの世話係となる人間の侍女が付けられた。アメリア一人では私たち7人の世話が回らぬし、感謝するべきだと思ったのだ。

 が、どうにも仕事はせぬは、足を引っかけたり多少の言い間違え、発音の違いで揚げ足を取り高笑いをするわでそれは酷い者たちだった。彼女らは貴族出身の為気位が高く、王族とはいえ異なる種族の世話などしたくないといった具合だった。(おまけに私に対しては先のような暗殺らしきことをしだすし。)

 食事に腐ったヘドロが出たことを最後に、彼らを外すようダンカンに言ったらすぐに解雇され、新しい侍女が充てられた。

 その侍女として迎えられたのが、あの初めの浜辺で世話になった女給たちであった。


 「プライドのある侍女はあなたたちの世話をしたがらないようで、これでは侍女の勉学にもあなた方の生活にも良くありません。なら、身分は非常に低くても少しでもあなたたちを慕っている方が良いでしょう。」

 「感謝する。それと、人間の貴族の言葉や文化、歴史を最低限教えてほしい。今後あの侍女のような嘲笑を受けるのは、鬱陶しくて敵わぬ。」

 「はっはっは、前は野蛮な国のお姫様と思ってましたが、少しでも人間に興味を持っていただけていると知って嬉しいですな。良いでしょう、偉い私が、とびっきり良い教師を紹介しましょう!」


 言い方は初めて会ったときと変わらぬ尊大な物言いだし何かと「偉い」を強調したがるが、もうはじめのような悪意は何故かあまり感じぬので私もあまり彼の無礼を気にせぬことにしている。


 私が教師を求めたのは決して人間に興味が湧いたわけではない。あの玉間での件と、はじめの数日で、理解したのだ。

 我々があの場で舐められた態度を取られた理由の一つが、人間の文化を知らなさ過ぎていることだと。

 我らは人間が人魚のことについて全く知らなくても別にそれは仕方のないことだからと多少の看過はできるが、人間はとにかく自分たちの中の掟や習慣が世界の基準だと思っているらしい。

 

 私ほどの魔力であれば人間の国など一捻りだとアメリアに言われたが、そんなことはしないつもりだ。人間以外の陸の種族、今は懐かしいルキウスにも会えていない。人間の国を滅ぼしたとて、他の種族の者たちからまたノッケンメーアの民たちみたいに「災厄の姫」と言われて避けられては今後築けるであろう関係も築けぬというもの。


 だからこそ、今は大人しく人間の国に留まり、何とか陸の作法を学びながら機会を見るほかないだろう。 


 今後学園に通うのであれば多くの人間に再び晒され、会話もせねばならぬ時が来るだろう。その際にはノッケンメーア王国の王女として、妹たち共々再び馬鹿にされる可能性が少しでもない方が良いだろう。

 ただでさえ我らは未開の国として舐められている感じがあるからな。人間の思い通りにはならぬという意思を見せるのに少しでも役に立てばと思い、仕方なく学ぶのだ。それに早く他の種族に会うためにも、人間の国ではなるべく少々の問題で騒ぎにならぬ方が良い。

 

 人間のことについて学ぶことは、私より妹たちの方が前向きだったため、彼女たちにも良い勉強になるだろう。


 そうして巻きひげで一つ目眼鏡 (モノクルというらしい)と大きなシルクハットという帽子が特徴のサミュエルという男が教師として毎日みっちり人間について教えてくれた。


 「御機嫌よう《ボンジュール》!!お嬢様方マドモアゼル、私がサミュエルです。この国より北西にあるパヴァーヌ公国から遥々やってきておりますの。貴方達のような美しい王女様を教育できること、嬉しく思いますわ!」


 パヴァーヌ公国とな。また別の国の名前が出たが、これも人間の国なのだろうか。サミュエルとダンカンが言うには、ファッションや流行の最先端の国であり、サミュエルはその国で元々公室御用達のマナー講師だったそうな。


 「良いですか、皆さま?レディたるもの、お静かに、おしとやかに、お上品に歩くのですよ。ほら、ララ様!脚はつま先からすっとのびるように!背筋は…いいですが肩が上がっていますわ!」


 まず、歩くことから指導が始まった。ただ歩くだけなら誰でもできるが、高貴な身分になると優雅且つ隙のない動きを求められるのだとか。なるほど、海でも強ければ強いほど隙のない動きや泳ぎを身に着けていた。相通ずるものを感じたので素直に習得しよう。


 「お辞儀カーテシーの時にドレスの裾をつまんだ後は、そのドレスの豊かさ、己の魅力を見せるようにこう、しなやかに少し広げるのですよ!そう、膝は柔らかく、首を少し傾けるとより愛らしさが出ますわ。」


 お辞儀は海では身分が下の者が上の者の敬意を表すときにするものだったが、陸でも同じようだ。違うのは、女性と男性でお辞儀が異なるようで、女性はカーテシーというやたらドレスを見せびらかすお辞儀をする。これが意外と難しく、特にヘラや私は柔らかく、という動作がなかなかできなかった。


 「マナーは元々、相手を思いやる心から来ていますの。自分の行動は相手にどう受け取られるか、どうしたら相手が喜んでくれるかを考えながら行動すれば、基本的にマナー違反になることはありませんわ。…人間の生活に慣れればの話ですが。」


 食事の時もサミュエルは一緒だった。時々、サミュエルはマナーの歴史や目的、豆知識を教えてくれたため、一日たりとも暇な時などなかった。


 そんなこんなであっという間に時間は過ぎていった。1日睡眠の為に空けた以外は文字通り毎日人間の貴族の文化を学んでいた。特に、足の動かし方にまだ慣れる内は夜もずっと歩く練習やお辞儀、簡単な踊りなどを通しで練習していた。

 

 教えられているうちに気付いたのだが、言葉遣いなど、各々好きなように自由に話していた人魚の国とは違い、人間は言葉遣い・所作一つで気分が害されたりするらしい。

 人間は何と繊細なのか?!

 人間の貴族は他にも食器の持ち方だの、挨拶のお辞儀の順番や仕方など、細かい決まりや暗黙の掟が日常生活の全てにしみついており、それが一つでも損なわれると育ちや血筋を疑われるそうだ。

 実に面倒な性質をもった種族だとつくづく思う。



 「だけど、学ぶべき部分もあると思ったの。」


 ヘラがある日の夜言った。


 「人間って、面倒くさいしきたりが沢山すぎて何が何だかわかんないけど、サミュエルの言っていた「相手を思いやる」がマナーの元って考え、ノッケンメーア王国にはなかった。ノッケンメーア王国は、相手のやる行動が自分や自分の守るべき者の害でなければ基本は自由って感じで、それはそれでよかったと思うけど、衝突も多い。でも、人間みたいに皆が知っている掟やマナーがあればそれを守っているだけで相手に敬意を払っているってはっきり分かるんだもん。覚えるのが面倒だけど、ね。」


 確かに、そうかもしれぬ。ノッケンメーア王国に帰った時は人間や陸の国で得た知識やアイデアを活用するのも有用やもしれぬな。

 学園に通うのだ。人間に対して、敵対心や復讐心だけでない別の心を持ちながら慎重に事を運んでいこうと、彼女の言葉で思ったのだ。


 そうして心機一転、決意を新たにし、学園の準備も人間の貴族に対する理解もある程度深めたところで、タイミングよく学園の登園及び入寮の準備ができた。

 とんとん拍子に私たち姉妹は「王立エルメンタ学園」に足を踏み入れたというわけだ。そして、今日がその初登校初日。


 初日ということで、妹とアメリア、女給たち全員でとりあえず学園の学び舎に入ることにしている。

 だが、屋内に入る前に―――


 バシャーン!!


 目の前に水が広がった。

 

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