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18.上陸 - 衣服とはかくなむ

毎度のことながら、いつも読んでくださりありがとうございます。


 暫くして人間の女給たちが衣服とやらを山ほど持ってきた。そして、上から順に説明しながらまず私の分の布の端切れのようなものから纏わせてきた。


 曰く、これは下着といい、人間ならだれでも初めにつけるものだそうだ。人間は、特に女は胸部と腰回りを隠さなければならぬらしい。

 何故と思ったら、「人間はこの辺りを陰部といい、交尾時にオスのモノを入れられます。それを防ぐためかもしれません。」とアメリアが説明してくれた。なるほど。自分の認めたオスでなければ受け入れぬという考えは相通ずるものがあるな。これには納得だ。


 ついで、脚の形に沿わせた袋状のモノを付け、脚の関節の下くらいに滑らかな平たい紐で結び固定させてきた。


 『これはなんぞ?』


 と聞くと、女給は一瞬ぎょっとした顔をしたが丁寧に答えてくれた。


 『これはソックスという足を冷えから守るためのものでぇ。素足を殿方に見られることははしたねぇって言われているけ、隠すためでもあります。』 


 なんと、人間は温度調節を衣服でしなければならぬ生き物だったのか!正直、冷えや暑さなどは自身の魔力調節でなんともなることだから、温度関係では要らぬのだが…問題は別の方だ。


 殿方に見られたらはしたない部分がある…だと?この、鍛えぬき傷一つも残っていない身体の何処にはしたなさがあるというのだ?!

 人間の考えることはやはりわからぬ。

 私の可愛い妹たちの姿も、恥ずべき部分などどこにもないというのに…。

 ヘラと目が合ったが、「人間の文化なんだから、しょうがない」と言うような目線で返された。


 それから『コルセット』という固い胴巻きを巻き付けられ、締めあげられた。

 何をする?!と最初はびっくりして抵抗したが、この女給、私が言葉がわかると理解するや気軽に話しかけてくるものですぐにこの『コルセット』についても説明してくれた。


 『これはお貴族様がご自分の姿をより美しく見せるためのものでぇ。より腰が細く、お胸があったほうがお綺麗なんですわ。でもぉ、人魚のお姫様方はこんなもん要らねぇくれぇだ。でも、これは背筋まっすぐにしたままにしとくのにも使えるみたいなもんでぇ。』


 コルセットなるもので胴を締められた後はさらさらの布でできた腰巻を1枚、2枚と巻かれる。女給がいうにはこれは『ペチコート』といい、この上に羽織る『ドレス』とやらの下着なのだとか。

 人間は本当に着飾るのが好きなのだな。


 最後にその『ドレス』を着終えると、なんだかやや動きが重たく感じた。

 

 「ね~~~何枚重ねるつもりなの?!とっても動きづらいんだけど。」「おも~い」

 

 ウータとウーテ、他の妹たちも人間の服の纏わせてもらっている最中だが、やはり感想は同じらしい。

 

 「人間の女、ってこんなに着こんだら戦えないし狩りも満足にできないんじゃない?」

 「で、ですよね。どうやってこれで獲物仕留めるんでしょう…。腕くらいですかね、動かせるの。」


 ヘラとフリーダ、良い着眼点だ。私もそれが凄い気になっている。人間の街に行ったら観察するべきものの一つにしておこう。

 人間はこんなに重たいものを着て生活や狩りをするのかと思うと、人間を侮ってはならぬという気持ちが再燃した。


 『おあぁああ、姫さん、お綺麗でさぁ。こんな別嬪なお姫さん、わたしゃ今まで見たことねぇ。妹さん方もお綺麗だぁ。』


 女給がやたらと褒めるのを見るに、今の私の姿は人間の住む町へ行っても見劣りしないだろう。 

 他の妹たちにも衣服を纏わせたのち、漸く私たちは『馬車』に乗って城に移動することとなった。

 

 女給は私に衣服を与えたもののほかに6人、アメリア以外各一人ずつ用意されていたようだ。彼女たちは貧しい出の者だそうで、今回初めて立派な服を着、高貴なもののお付きとして仕えるという大役を任され喜んで世話をしたいと言ってきた。


 世話をしたくないものにさせても雑な仕事しかできぬだろうから、できるなら彼女たちはこのまま傍に置いておきたいものだと思う。


 …それに、認めたくはないが彼女たちは私が憎んでいる人間とは何か違う感じがするのだ。




 エルメンタ王国の王都グリードフォードにいた住民は、暫くは誰もがこの日のことを噂した。見たこともない鮮やかな髪をした美しい7人のどこかのお姫様が王城に入っていったと。その7人のお姫様は人魚のお姫様らしい。第2王子殿下が海を支配するため、人魚のお姫様が人質となり人間の姿で連れられてきたと。


 「あたいちょうどお城の前に通りかかったんだけどさ、もうほんっとうに天使かと思ったくらいの輝きよ!」

 「おばさん、私も見たよ!ドレスは上等だけど別に派手なものではなかったし、背もとても高いんだけど、とにかく肌が白くてきれいで、髪は見たこともない色がほとんどよ!」

 「特に白い髪の方はあの方自身が光を放っているみたい。」

 「にしても、人魚のお姫様なんだろ?人間の姿をしていちゃにわかに信じられんな。」

 「だろ?人魚っつったら、良く昔話や伝説に出てくる…本当にいたのか?って話だ。」

 「だが、人魚であってもなくても、人質であんな綺麗なお姫様を一気に7人も持ってかれた国はかわいそうだよな。」

 「お姫様は良く政略のダシに使われる、何処も一緒さ。」

 「せめて、彼女たちがこっちに散歩しに来た日にゃ、良くしてやろうぜ。」

 「お姫様はこんな下町まで降りてこないって!」

 「ははは、ちげぇねぇ!」


 噂は王都住民の数少ない娯楽の一つであり、まだ暫くはこの話題で持ち切りな事だろう。

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