9.方針相談会議 後
「あわぁ…姉様って…。」
「こんな悪そうな顔もできたのですわね…」
「素敵ですわお姉様~。」
何故「悪そうな顔」と言われねばならぬ…。心外だ!
「…ごほん!まず、このまま何もしなければ悍ましい人間どもが我々人魚の国政に関わり、もしかしたら乗っ取られる可能性もあるのだぞ!もしまた人魚の血を求めてきた場合、人間が国の頂点に等しい位だったら民を守れず、今度は海の中が鮮血に染まってしまう!そんなことは絶対にあってはならん。そうだろ?」
「まあ、それは正しいね。」
ヘラが相槌を打ってくれた。
「ただ、人間がシャルロッテの番候補になることは今更止めることは難しい。お父様は聞く耳を持たぬだろうし、何より反対したところでアデリナやシャルロッテがまた何かしてくるに違いない。それにどうせ、我らはじきに陸の人間の国へ立たねばならぬ。ならばこの機会に人間以外の別の者と手を結び、人間が我々に好き勝手出来ないよう監視体制を築こうではないか、ということだ。」
「シ、エリュシオネー姉様、なんだかいつもと違うよう…。」
「いつもよりハキハキ!」「よくしゃべる!」
「穏やかで物静かなお姉様しか見たことなかったけれど、もしかしてこれがお姉様の本来の…?」
「…あっ…」
しまった。妹たちの前ではもう怖がらせぬよう無表情寡黙を貫く必要はないと、つい昔のように言いたいことをはっきり言ってしまった。あまりの変わりように妹たちを怖がらせていないか、少し鰭が冷たくなる。
「姫様はもともとはこんな感じではっきりものを言ったり感情豊かな性格でしたのですよ。」
だから私にとってはこれが普通なんです、とアメリアが助けに入ってくれた。ありがとうアメリア、ナイスアメリア。
「み、皆…その…。」
だが、そんな素の私を今まで見せていなかった妹たちが受け入れるか分からない。正直妹たちの目を直視するのが怖かった。
が、そんな心配も杞憂だったようだ。
「良いと思う!」「ハッキハキな姉さんかっこよくて好き~」
「今までの静かなお姉様も淑女の鑑としてとても尊敬しておりましたが、ぷふっ、こっちの方が私は好きですわ!なんだか新鮮ですし。」
カッコいい、のか?まぁ、なんか目をキラキラさせて見つめてくるツインはとりあえず置いといて。
おい、テア。笑いがこらえ切れていないぞ。そんなに可笑しいか…?
「確かに新鮮だけれど、姉様の本当の気持ちを言ってくれてる感じがしていいわね。私も好きよ。」
「エリュシオネー姉様…!フリーダも、いつもの姉様も好きですが今のような姉様も好きです!ウーテ姉様も言ったように、その、かっこよくて…。」
テアに同意するヘラ。
だよねー、とフリーダと意気投合するウーテ。
「ララは…今までのお姉様と違って少し混乱していますわ…。だって、今まではお姉様を甘やかしたいと思っていたのに…今のお姉様の雰囲気は…」
ララ…やはり私が変わってしまって困っているのだろう。元の口調に戻ったほうが…
「抱いてほしいくらい、好き…!これはそう、恋に違いありませんわぁああ!」
…ん?
「お姉様、ララのいつもの戯言ですわ。真に受けてはだめよ。」
「あ、あぁ…。ララ、つまり私が感情を出して話すことには抵抗ないということなのだな?」
「もちろん!もちろんですわ!見た目麗しい白さに加えて儚げな雰囲気がなんとも言えない保護欲をそそる魅力を持っていたのですけれど、凛々しいお顔とお言葉も併せ持つとかくなるカリスマをも携えて私を惑わせるのだわ!お姉様の如何様な変化も、ただ魅力、ドツボが増えることにしかなりませんのよぉおお!」
前から思っていたが、単なるシスコンか変態だな。そうだろ?テア。
テアに目配せしたが、肩をすくめるばかりであった。
ゴホン!と咳ばらいをする。
「とにかく!先に話した通り、陸の学園とやらに厄介払いを受ける我らはそれを逆手にとる。陸の世界で人間に太刀打ちできる種族となるべく交友し、最終的には人間を牽制できる状況をつくる。もちろん、アデリナ達が好き勝手やっている場合はこちらも黙っておらず何か対処させてもらう。」
大声で鰓息荒く言い切ると面白そうにツインが周囲を回りながら言ってきた。
「いいねいいね、やりかえせー。」「アデリナ達にやりかえせー。」
「ま、私たちもまだ番候補見つけてもいないのに、年端も行かない妹に先を越されるのは気に入りませんし?」
「国王が正常な状態じゃないかもしれないっていうと、尚更決断に信頼できないし?」
「お姉様に協力しないものなど、この場にはいませんわ!」
妹たちが口々に協力してくれると言ってくれた。なら、もう方向は決まりだな。




