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都市の死体でもがく。

作者: 四季華月

心さえも曇る、おそらく6月が中旬から後半に差し代わったあたりだろう頃。


今日はカエルとナメクジとカタツムリがニュルニュルと葉の間からおはようと這い出て来ては、彼らにとっての恵みを堪能している。


旧市街は愛も変わらず廃れた長方形のコンクリートで構築されており、空も壁も道路さえももう一色で境界線を見失う。さらには壁にも地面にも緑が蔓延っているのだからさらに頭までもおかしくなってしまう。


人類が廃れておおよそ300年だったろうか、当時の奴らにこそ様を見せてやりたい。あやつらが文明を掲げた末路を。


ここでカエルが話しかけるように見てくる。見るな、あっちに行け。お前と世間話を興じるほどこちらは心に暇がないんだ。


今や人は一つの街にとどまることができない、渡り鳥のように様々な都市を移動して生きている。


ガソリンは余ってるか?


バッテリーは上がってないか?


食料も衣服も足りているか?


全てが自分たちの思い通りにいかない。さっき見つけた缶詰なんてそこら中にある水で中身を洗い流すしか使い道がない。中身なんてそれは吐き気を催す程の物体となっている。水ならそこら中にあれど、それでは飲めたものではなく、濾過を余儀なくされる。


雨の日は水の調達に優れた日だ。ついでにこの風化した街にまだマーケットに出ていても不思議じゃないものがあることを願って。


もしかしたらどこかに人がいるかもしれないと、もしかしたらどこかに綺麗な衣服があるかもしれないと、もしかしたらどこかに食すことのできる生き物がいるかもしれないと。それを願わずにはいられない。


もう何百も裏切られたこの世界でも生きている世界だから、せめて水を用意する間だけだからと今日もひとり街を彷徨っている。


明日は生きていてもその先の保証がないから、その先さえ生きることができるように生きている。今日も明日も雨でも明後日はきっと晴れる。


そういえばカエルよ、お前確か美味だったよな?

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