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「姉御!! 許せねぇっすよ!! あいつら、まともにやったら姉御に勝てないからって武器を使うなんて」


「油断してた私が悪いんだ。クソッ」


「それにしても姉御!! 大丈夫っすか? 顔の怪我。傷が残らないといいッスけど………」


「大丈夫だ。気合だ! 気合。このくらいつばつけとけば治るって」


「そうッスよね。姉御は最強っす」

 隣の会話に耳を傾けると、何やら物騒な話をしていらっしゃる。見舞いに来て息巻いている女の子を見ると、確かにここら辺では有名な桜蘭高校の制服を着ている。

 何やらバイオレンスな日常を送ってらっしゃるようである。俺なんかとは一生接点がないような人種の方々である。

 萌はそんな子達のところへと近づいていったので、俺はぎょっとした。


「少しいいですか?」


「誰だテメェは?」

 萌が話かけると、見舞いに来ていた制服を着た女の子が威嚇する。それに全く動じる事なく萌は話を続ける。


「いえ、話は聞かせてもらいました。女性の顔に傷が残るなんて、非常に悲しいことです。耐えられることではありません」


「は? 姉御はそんなやわなお人じゃねぇんだよ。気合で治すっていってるだろう!!」


「見たところ、広範囲に包帯を巻いている様子。かなり大きい傷だと思います。気合でどうこうできるものではないでしょう。少しでも傷が残れば、鏡を見るたびに意気が沈んでしまいますよ」


「あ? 姉御は気合で治すっていってるだろう。嬢ちゃんみたいなシャバ憎とは気合が違うんだよ」


「クスクス。気合では無理です。でも安心してください。これを飲んでみてください。そうすれば、あら不思議。たちどころに怪我が治ります。天使モエールに信仰を捧げるのです。信じる者は救われます。どうぞ」

 萌はカバンから俺が作り出したポーションを手渡そうとした。


「ふざけんな!!」制服を着た女の子は、手渡された瓶を払いのけると、萌の手からポーションの入った瓶が地面へと叩きつけられ、高い音をさせてばらばらに割れてしまった。

「そんな怪しいもん、姉御が飲むわけないだろ。なんだよ天使モエールって、頭大丈夫か? そもそも、それを飲んで治るならお前の知り合いに飲ませればいいだろ!!」


 そう言って、俺の方を指さした。

 確かに俺の顔にも包帯が巻かれているのだが、俺は傷が治っているのを隠すために包帯を巻いている。今、包帯をとったとしても、怪我もしてないのに包帯を巻いている変なやつと思われかねない。そもそも、萌の行動は異世界では通じるのかもしれないが、ここでの反応はこのぐらいのものではないだろうか。

 払いのけるまではしなくても、いきなり差し出された液体を飲もうとはしないんじゃないだろうか。

 俺は萌の方をみると、萌は顔を真っ赤にしてプルプルと体を震わせていた。


「もういいもん!!」

 萌は捨て台詞を吐いて、病室を出て行った。


「なんだありゃ?」

「瓶を割るのはやりすぎだ」

「でも姉御、あいつ怪しくなかったすか?」

「まぁ………な」


「あ、あの~。なんか妹が迷惑をかけたみたいですみません。悪気があったわけじゃないんです」


「あ? お前ら兄妹かよ。あんまり似てないな。それにしても、お前の妹大丈夫か? 薬でもやってるんじゃないだろうな? 天使モエールって………プッ」


「いえ。ま~、大丈夫です。ちょっといろいろありまして………」


「ふ~ん。それより、そこにある漫画って、『クロウ』じゃねぇか?」

 萌が読んでいた不良漫画が、ベッドの上に設置されている机の上に散乱していた。


「そうだけど………」


「入院してて暇だからちょっと読ませてくれないか?」


「別にいいですけど」


「お、話が分かるじゃねぇか。ありがとよ。私の名前はマユリ、んで、こっちがシオンだ。お前の名前は?」


天海司(あまみつかさ)です。ちなみにさっきの妹は(もえ)です」


「そうか。入院して隣のベッドになったのも何かの縁だ。よろしくな。さっきはシオンが瓶を割っちまってすまなかったな」


「いえ、別に大丈夫です」

 その気になれば瓶も含めていくらでも作製することが可能なのだ。瓶が割れても、特に気にはならない。

 見舞いに来ていたシオンが俺のところから漫画を取って、ベッドの上のマユリに手渡す。

 

 ふとその時嫌な予感が走った。


 はたして漫画はちゃんと俺のところへ戻ってくるのだろうか………





 




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