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スキルクリエイター、帰還する

 スキルクリエイトシステムには作ったスキルに名前をつけることができる。

 当然ながらいくら強いスキルでも名前がダサいと使いたくなくなるのが人情だからだ。

 しかし、一葉はスキルを生み出しても名前をつけなかった。

 だが、例外も当然ある。

 一葉が素晴らしい出来だと思ったものには名前が付けられるのだ。

 それを名有(ネームド)と呼んでいた。

 名有(ネームド)は幾つか存在しており、例えば『ジャック』に渡したスキル。【宵闇(よいやみ)斬夢(ざんむ)

 世界を壊した男『シオン』に渡したスキルは【世界崩落(ワールドダウン)

 その他にも【女王の世界(アリス)】【アカツキノヨル】【夕焼け小焼け】など、存在しておりこれらは最上位プレイヤー達の切り札として使われる様なレベルだった。

 これらのスキルを皆、再現しようとした。

 しかし、誰がどうやっても出来ないのだ。

 それ故、一葉はℹ︎O最強のスキルクリエイターとして有名となっていたのだ。

 そして今回使用した【世界の外へいらっしゃい】は、バグを使用したスキルである。

 ℹ︎Oでは他のゲームではなかなか見ない様なものが存在する。

 例えば転送妨害。

 攻撃をすれば転送が妨害できるのだが、他にも方法はある。

 重力魔法である。

 重力魔法を使えば何故かその側に転移してしまうのだ。

 その昔、一葉はふと思いついた。

 『これを普段入れない壁の向こうで行えばどうなるのか』と。

 早速試してみれば、大成功。

 壁の中に入り、見事ゲームオーバー。

 それから一葉は考え、完成したのがこのスキルだった。

 壁の中に【重力魔法】を放ち、【空間魔法】による転移を【重複詠唱】で増やしその分ダメージを与える、もしくは殺す。

 そして、遊びで生み出されたこのスキルは異世界で一葉達を救うこととなったのだ。


  ☆


「宗賀君!無事か!」

「ああ、無事だよ」


 一葉が戦闘後の余韻(よいん)に浸っていると、勇輝が駆け寄ってくる。

 その背後を見れば、何時もの元気が嘘の様に消え去った壱花と、そんな壱花に寄り添う双葉。

 恐らく、死んだ生徒と仲が良かったのだろう。

 一葉が何か声を掛けるべきか悩んでいると、レイクと雄二先生が駆けてくる。


「皆さんご無事ですか!?」

「ええ、僕達は…ですが…」


 そう言って勇輝が指を指すと、そこには頭部を失った死体が2つ、1つは最早人の形をしていなかった。

 雄二先生は男子生徒だったものに近づくと、自身が汚れるのにも気にせずに抱き上げる。

 そして、頭部を失った女子生徒の横に寝かせると2人の手を重ね合わせる。


「…せめて空の上で結ばれろ」


 そう言うと、雄二先生は火魔法スキル【蒼炎】を発動する。

 蒼い炎が男子生徒と女子生徒を優しく包み、溶かす様に焼いていく。

 その中で一番は、頭部がないにも関わらず男子生徒と女子生徒が笑った様な気がしたのだ。

 周囲を見れば、壱花は双葉に抱かれながら嗚咽を漏らし、勇輝は悔しそうに拳を握りしめていた。

 生徒達の反応はそれぞれ違った。

 あるものは怒り、あるものは嗚咽を漏らす。

 またあるものは事実が飲み込めずに、精神を壊し、あるものは耐えられないとばかりに震え、吐いていた。

 一葉は、悲しさはあったが涙は出なかった。

 ただ、ただ目の前で立ち上る幻想的な蒼い炎を眺めていた。

 その後、燃え尽きた灰を雄二先生は空き瓶に詰めていた。

 理由を聞いてみると、


「こんな異世界の迷宮で放置されるなんて可哀想だろ?せめて…故郷に連れて帰ってやりたいんだよ」


 そう言って力無く笑う雄二先生を見て、一葉は先生はやはり先生なのだな、と思った。

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