part3
黒い布を被った者が目を覚ました。
「うっ…」
後頭部に強い痛みが走る。
さっき殴られた所の痛みだ。
立ち上がろうとしたら身動きが取れなかった。
手足を椅子に縛られていたのである。
「くそ…」
ドレスを着た女性が話しかけてくる。
「あの…私のことが見えますか?
目を仮面で隠していますが…」
顔を覗き込むようにして言ってくる。
黒い者は睨みつけながら
「見えているぞ…」
すると目の前に剣先が飛び出てくる。
「お嬢様を睨むとは無礼者!」
剣を突き出す手を掴んで
「ケーラ!剣なんて出さないで!」
「し、失礼しました」
ケーラは剣を収めた。
クリストルは膝をついて
「椅子に縛り付けたりしてごめんなさい。
あなたとお話がしたいだけなんです。
私はクリストルです。あなたの名前は?」
「ふん、私は名前をそう簡単に明かさない。
今は悪魔と名乗っておこう」
「それでは悪魔さん。あなたは何故
私の部屋にいたのですか?」
「はっ、私は悪魔だ。美味そうな命を
見つけたからここにいたのだ。」
クリストルは目をギョっと大きくして
「美味そうな命…?それは
どういう意味ですか…?」
悪魔はクリストルに顔を近づけて
「そのままの意味だ。お前の命が欲しい」
ケーラがクリストルを抱きかかえるようにして
剣を抜き
「貴様!どういうつもりだ!」
クリストルは少し恐怖を感じたが
すぐ考え出した。
この人、自分を悪魔とか言って盗みを働く人なのではないか、身なりも高そうな物も服も
身に付けていないしお金に困っている人なのではないか?
それなら放ってはおけない。
クリストルはケーラの手を剥がし
悪魔に顔を近づけて
「あなた!お金に困っているのね!」
「は?」
悪魔は何を言っているのか分からず
もう一度自分が何なのかを言った。
「私は悪魔だ。私が言っていることが分かっているのか?」
「えぇ!分かっているわ!
あなたは悪魔なのでしょう?」
「なんだ、分かっているじゃないか」
クリストルは更に顔を近づけて
「仮にあなたが悪魔だとして
私の命を狙っている…
盗人らしい言い訳ですね!」
誇らしい顔で言った。
「分かってないじゃん!」
悪魔はジタバタしながら言った。
悪魔の前を行ったり来たりして
説教が始まった。
「良いですか?盗みはいけない事です!
ましてや、女性なのに!」
悪魔はもう半泣きだった。
こんな説教が1時間も続いている。
「忍び込む家、間違えたなぁ…」
クリストルは一息つき、椅子に座り
即座に立ち上がり
「良い事を思いつきました!
あなた、私の専属のメイドになりません?
そうしましょう!」
ケーラはその発言に驚き
「お嬢様、何を言っているのです!
専属のメイドなら
私がいるではありませんか!」
「でも、1人だけという決まりはありません」
「ですが…」
「ケーラはうるさいです。私が決めたのだから
それで良いんです」
悪魔の顔を見ながら
「あなたは明日から私の専属メイドです!」