1-5 真珠の思い
とても短いです。
本当はもう1話投稿する予定だったのですが、時間が取れず、恐らく間に合いません。
申し訳ありません。
遮光カーテンをしっかりと閉めているからか、外の光の全く入ってこない真っ暗な部屋。
その中に、少女は居た。
ベッドの上にうつ伏せに倒れこみ、しかし彼女は寝ているわけでは無い。
「…………」
無言で枕に顔を埋める。
チッチッと、掛け時計の針の音だけが部屋に響き渡る。
一体どれ程の時間が経ったのか。
遂に少女は、ゴロンと寝返りをうつと、真っ暗な部屋の中で仰向けになった。
何も見えない。
遮光カーテンにより光というものを失った部屋の中では、少女は何も見ることができない。
いや、それは少女でなくても同じか。
人間という生き物は光が無ければ何も見ることはできないのだ。
ともすれば、それは少女の姉と同じであった。
光が無ければ、何も見えないように、少女の姉、百合花の存在は家族を除けば認識できる人が居ない。
そう、今日という日が訪れるまでは。
「何よ葵さん、葵さんって」
予感はあった。
今日、少女、真珠が帰ってきた時に百合花が見せた表情。
いつも笑顔な百合花の、しかしいつもよりも憑き物が落ちたかのような晴れやかな笑顔。
その表情を見た時に、「あぁ、居たんだな」と、何と無くわかってしまったのだ。
両親は気づいていないようだが、元々気分転換をしたいからという名目で百合花が毎日外にでているのも、実際は家の外ならば自分を見つけてくれる人と出会えるかもしれないという淡い希望を持ってしての行動なのだと思う。
だからこそ、真珠は真珠だけは、表情を見ただけで気づくことができたのだ。
「…………」
暗い部屋の中、ベッドの上に仰向けになりながら天井を見つめる。
遮光カーテンがあるとはいえ、それは完全に光を遮断するわけではないのだろう。
暗闇に目が慣れてきた真珠は、天井にある照明の形位は把握できるようになっていた。
「……よし」
真珠は思う。
果たして葵という人物がどんな人間であるのかわからない。
しかし、ぽっと出のよくわからない人間に、姉を救われるのは、何故か納得がいかないと。
何故なら、その役目は真珠が果たすべきものだと考え、今まで生きてきたのだから。
「お姉ちゃんは、私が護るんだから!」
真珠は立ち上がる。
そして、照明のスイッチを入れ、明るくなった部屋の中で。
鏡に映る自身を目に映しながら、そう決意をしたのであった。