9話 送迎完了
「流石です!!」
「かっこいい!!」
僕達がバスに戻ると皆から賞賛された。ワイバーンが飛んで行った事で撃退に成功したと思ったらしい。実際はどうか自分でも分からないが。
僕はマップで村までの残りの距離を確認する。
「あと少しで村に着きます。もう少しの辛抱です」
僕はそう言って皆に席に着かせると、バスを走らせた。しばらく走る事で村に到着した。皆は村に帰り着いて喜んでいた。村に着くと女 子供は逃げていき、男は農具や武器を持って警戒していた。
「バスが何だか分からなくて警戒していますね」
「そうですね。皆さん、先に降りて皆を安心させてあげてください」
「分かりました」
僕が女性達に村人に警戒を解くようにお願いするとバスを降りて、皆を安心させた。村人達は女性達が帰ってきて泣いて喜んでいた。水をさすのも悪いと思い、バスを出そうとする。が
「イリアーナさんは降りなくていいのですか?何か用事があってこの村に来たのでは?」
街からわざわざこんな辺境の村に来て、なんの後始末もせずに街に帰ろうとした事を不思議に思い、質問した。
「まぁ、旅の途中にふらっと寄っただけですよ」
「そうですか?そういう事なら街に行きますか」
「ツヴァイさんこそいいんですか?皆さんには感謝されると思いますよ?」
「長くなりそうですし。早くイリアーナさんを送り届けなければなりませんし」
「そんなに気にする事では。でもありがとうございます」
結局、バスから降りずそのまま出発した。助けた女性達が手を降っていたので、大きくクラクションを鳴らした。
「陽が沈み始めましたね」
「もう夕刻ですか。一旦野営します?」
辺りが紅く染まり始めた。メニューの時計には18:16と表示されていた。イリアーナが向かう街は『ギョリデルト王国』王都『ムール街』だ。『ムール街』まであと約30km程。時間にして20分弱。全然陽が沈みきる前にはたどり着く。
「入国時間に制限とかありますか?」
「いえ、特には」
「ではこのまま行きます。あと20分程で着きますから」
そして15分程走ると、だんだんと人が見えて来た。これ以上は騒ぎになりそうなので、一旦降りる。
「ここからは歩いて行きましょう」
「そうですね。この乗り物を見られると何か面倒事になりそうですし」
イリアーナも了承したことで、歩いている人達の1km僕後ろで徒歩に帰る。バスはメニューの『格納』で収納する。どこでも使えて凄く便利だ。ちなみにギアーズも出せる。
「では行きますか」
「そうですね。まだ話足りないのでもう少しお話しましょう」
話ながらゆっくり歩いていると、家が点々と建てられている。もう少し奥にはもっと詰められて家が建つ。そしてその真ん中にドンと構える王城がある。
「でかいな、城」
「我が国の技術力が高い証ですよ」
僕が初めて見る城の思った以上の大きさに驚いていると、イリアーナが胸を張ってそう答えた。建造物としては確かにでかいが、現世で見た城としては普通サイズだがまぁ、イリアーナが喜んでいる辺り何も言えない。
そんな事を思っているとだいぶ王都の中心辺りまでやってきた。沢山の店が並び、少し暗くなり人が家々に入っていく。
僕がそれに見とれている中
「あー、イリアーナ様だ。何しに帰ってきたのー?」
「あ、無能王女」
「ちっ、この裏切り者が」
そんな罵倒が僕の耳に入ってくる。