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8話 ワイバーン 解決

「発射!!」


『ビークルB』の後部に備わっている固定兵装『飛翔連槍』を全弾ワイバーンに撃ち込む。『飛翔連槍』は一発の威力が約500となかなか強いミサイルで、だいたいの生き物は即死するだろう。

『飛翔連槍』が放射状に飛んでいきワイバーンに命中し爆風が起き、ワイバーンは黒煙に包まれる。煙のせいでワイバーンを見失った。


「皆捕まれ!!」


僕はバスのアクセルを踏み込む。バスが急発進し、ガクンと揺れた事で皆が「きゃぁぁ」と叫ぶ。イリアーナも横でシートベルトにしがみついている。

黒煙からどんどん離れていき、一旦安全を確認する。


「イリアーナさん、大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です」

「今は煙が目隠しになっているから今のうちに逃げれば多分大丈夫だと思います」


僕はイリアーナに安否の確認をする。僕がいきなりワイバーンにミサイルを撃ち込んだ理由は、ワイバーンから一旦距離を置く為だ。一発の威力が約500とはいえ、ドラゴン種はゲーム等では上位強キャラ。『飛翔連槍』わ1回撃ち込んだ程度でやり切れる気がしない。だがもう一発撃てれば、可能性はあるかもしれない。そして『飛翔連槍』の再装填時間は40秒。もうすぐ40秒経つのだ。


「煙が晴れましたね...ワイバーンがいません」

「え?まさか逃げた?撃退成功?」

「おそらく」


一旦バスを止め、遠目に煙があった場所を見るとさっきまで立っていたワイバーンがそこには見えなかった。


「いや、違う。ワイバーンが倒れてるんです」

「本当だ!」


僕はワイバーンを発見した。さっきの場所から少し離れた場所でワイバーンが倒れていた。おそらく『飛翔連槍』の威力と爆風で吹き飛んだのだろう。


「私、ちょっと見に行って来ます」

「ちょっと待って下さい。丸腰で行っても危険なだけですよ?」

「ここでワイバーンの生死を確認しないと、街や村にも被害が出ます。もし生きているなら弱っている今のうちに止めを。死んでいるなら死体の回収に来させないと、ワイバーンは仲間意識が強くこちらはもっと最悪で群れで街や村を襲います。どちらにしてもワイバーンに対応しないといけません」


イリアーナがバスから出ようとしたので僕は腕を掴んで止める。しかしイリアーナは力強く、僕を説得する。説明が終わるとイリアーナは掴んでいる僕の手をそっと両手で握る。


「行かせてくれますか?」


イリアーナが僕の目を見てそう言った。彼女の手は震えていた。本当は彼女も行きたく無いのだ。だからといって僕が行ってもこのバスを運転出来る人は僕だけで皆揃って遭難する事になる。その事をイリアーナは分かっていた。


「さっき撃った爆発はもう1回撃てるんです」

「へ?」


僕の返答の意味が伝わらずイリアーナは変な声を出す。


「仮に生きていても、もう一発撃てばこと切れるでしょう。それにこのバスならばおそらくワイバーンからも逃げられます。バスごと行けばいいでしょう?」

「...ツヴァイさん。ありがとうございます」


僕はバスでワイバーンの生死の確認をしに行く事を提案するとイリアーナはニッコリと微笑み返す。本当は僕も怖い。が、彼女を行かせて殺されるのはもっと怖い。その為なら漢になろう。


「大丈夫。僕の魔法は最強です。ワイバーンごとき葬ってますよ」


僕はバスをワイバーンの元まで走らせた。

ワイバーンの前まで来ると僕はバスを降りた。手には『ブラックカヅィCRZ』を持って。


「クヒュゥ...ガルルル」


ワイバーンは生きていた。翼も体もボロボロになりつつも、しっかりと息をしてこちらに向けて唸っている。

僕はワイバーンに銃口を向ける。


「クゥン...ヒャウッ」


するとワイバーンの体の下から小さなワイバーンが這い出てきて、大きなワイバーンに寄り添っていた。それはまるで死んでいく親に甘えている様だった。ワイバーンは子供を庇ったのだろう。確かにミサイルが早いとはいえ、ワイバーンはが飛べば逃げられそうだった。


「...ツヴァイさん」

「この子、子供かな?こいつ殺したらこの子、一人ぼっちだよな?」

「ツヴァイさん、感情に流されれば沢山の被害が出ます。それは愚行です」


イリアーナのもっともな言葉に僕は押し黙る。確かに感情に流されて被害が出れば困るのは自分だ。


「ただ、それが分かっていてもそうするのは私達が人間だからです。大事なのはその愚かな行いに責任を持つことです」

「───」


イリアーナは力の入った目で僕を見ていた。それは過去の自分に言い聞かせる様に。


「すぐに終わるからじっとしてろよ」


僕は右後頭部を触ってメニューを起動し、『アイテムBOX』から『リワインドキット』という白い工具箱を取り出す。

agmcはガチャが無く、敵からは装備はがり落ちる。その為、アイテムは時間と引き換えに作成するのだ。本来、アイテムはギアーズの回復アイテムばかりなので、ワイバーンに効くアイテムは無い。『リペアキットs』はagmc内での最低ランクアイテムで、水と空気で15秒で作れる分耐久値の10%しか回復しない。だが『リワインドキット』は1度戦闘不能になったギアーズの時間を巻き戻し、耐久値を完全回復させる。そのかわり、『リワインドキット』の作成時間は4日(96時間)だ。


「『リワインドキット』使用」


白い工具箱は光の粒子になってワイバーンの周りを飛び回る。そしてだんだんとワイバーンの傷が治っていく。


「人間を襲っているのを見たら次は殺す。食糧に困るようだったら僕の元へ来い。この先をずっと行った所にデカイ船がある。そこで待ってろ」


僕が言葉が通じるのか分からないワイバーンに『ルフ』の場所を教える。ワイバーンは僕の言葉を理解したのか僕をじっと見たあと、僕の指さした方向へ子ワイバーンと共に飛んで行った。


「おそらくあのワイバーンはツヴァイさんにぞっこんですね」

「何故です?」

「野生では強さが全てなんです。圧倒的な強さを見せつけられて、その後優しくされて、その強い者が養ってくれると言ってくれたら惚れますよ」

「?」


よく分からなかった。僕達は再びバスに乗る。

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