2話 ライフライン確保
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僕は落ち着こうと状況を整理する。
まずこのゲームagmcでは有り得ないバグが起きた。突然黒い穴が出現し、それが爆発し空中空母『ルフ』が墜とされるという事。ニュースやお知らせは毎回ログイン時に確認するので新イベントの可能性は無い。
「じゃあ、もう一回お知らせ見ますか...VRコンソール外してたんだった」
そしてこの場所がどこか分からないという事。お知らせを見る為にメニューを開こうと思ってもVRコンソールを外しているから操作できず開けない。
VRコンソールが無いのに僕はゲーム内の『ルフ』に居る。つまり...
「ここは別世界?」
そういう事なのだろう。ラノベでよくある転移、召喚。その部類。そして僕が貰ったチートは、agmcのロボットと兵器?
「困ったな。メニュー開けない」
メニューが開けないという事はギアーズのカスタムも『ルフ』の移動も何も出来ない。『ルフ』はシャットダウンしてるし。これ、積んでね?そもそもこの世界がゲームじゃないならギアーズは使えるのか?兵装は威力があるのか?疑問は尽きない。
「メニューオープン!!」
もはやヤケクソ気味に叫ぶ。これで開いてくれるのがラノベだろと言わんばかりに叫んだ。が、何も起きない。
恥ずかしくなった僕は頭を抑える。
ピッとスイッチを押した時の音がする。
「は?」
目の前に見慣れたメニューが現れる。僕は再び頭を触る。右後頭部辺りを触るとメニューが消えた。別にスイッチの類いは無い。椅子の背もたれに触れても起動しない事から僕の手が触れるとメニューが出る。らしい。
僕は再びメニューを起動し、『空母起動』をタップする。するとゴウンと音をたてて『ルフ』が起動し、無事操作が出来るようになった。ちなみにログアウトはメニューに無かった。そしてマップには『ギョリデルト領 リンデルの森 ゴブリンの洞窟前』と表示され少し奥に無数の赤点。操縦席から外を見ると前に洞窟がある。ゲーム内の場所じゃ無いのにマップデータがある事には驚いた。
「ゴブリン居るのか。この世界。ログアウト出来ないから本当に僕は異世界転移したんだろうな」
この場所はゴブリンの洞窟。そして洞窟の中に敵勢反応。つまりその赤点はゴブリンの群れなのだろう。取り敢えず放置する訳にはいかない。けど、無策で突っ込んでも返り討ちにあいそうだ。そもそもギアーズ達は動くのか、動いたとしてギアーズの兵装はこの世界の生物に通用するのか。攻撃が通るとしても弾薬の補充やギアーズの燃料エネルギーの補充は出来るのか。疑問は尽きない。
「迷っててもしょうがない。まずは食料の確保だ」
僕はマップを見て食堂がある事を思い出す。実際ゲームの設定では空気と水を化学変化させて、食料やギアーズの燃料、武器や弾薬、ギアーズのパーツ等あらゆる物が生み出される事を思い出す。
「あ、じゃあもし食堂で食料が化学変化で出来たら武器、弾薬、燃料とか全部解決するのか」
嬉しい誤算に独り言がおおくなる。何にしろ食堂に行けば全てが分かる。僕は食堂に向かった。
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「ふぅ、やっと着いた」
僕は三十分程掛けて食堂に到着する。設定通りならこの『ルフ』は全長5km、ホバリング可能なプロペラ無しの飛行船。真ん中辺りに食堂があるとはいえ距離にして2~3km程。歩いて移動するには広過ぎる。確認が終わったら移動用の為に格納庫へ小型の乗り物でも取りに行こうかな。
「うわっ、これまた広いな」
食堂は広かった。入口から右側は全てガラス張り、椅子やテーブルは50組近くありそうだ。奥には厨房があった。正直こんなに広いとぼっちの僕にはキツイというか。僕は取り敢えず厨房に来た。厨房には沢山の調理器具や設備が整っている。が横にはボタンがある。試しに押すと、ズラッと食品メニューが並んだ画面が出てくる。
「こりゃ楽でいい」
試しに牛丼を選択する。すると『水を200ml注いで下さい』といつもの機械的音声さんが呼びかけてきた。ボタンの横に投入口が出現する。尚、水は設定上無限精製されるらしい。今はそれを信じて蛇口を捻って計量カップに200ml注いで投入する。水は最悪川とかから汲んでこよう。まぁ、今蛇口から水が出ている時点で多分大丈夫だとは思うが。
「あ、出来た」
そんな考え事をしているうちに牛丼が出来ていた。ボタンの横に置いてある。僕はその牛丼と水を入れたコップを持って、外が見える窓の前まで行って寂しく食べた。
食べ終わった僕は思った。満腹感もあって、若干の疲労感もある。取り敢えず体は人間のままだ。服も現世で来ていたTシャツでは無いが、それより動きやすいゲーム内のパイロット制服だ。動きを阻害せず、材質も良く柔らかい。良質な服だ。
「取り敢えずマップにトイレとかもあるしライフライン等は確保したな。あとは護衛用にギアーズの確認に行かなきゃな」
僕は格納庫に向かった。