1話 黒穴
autogear metalcore 【オートギア メタルコア】通称agmc。VRコンソールをパソコンに接続してプレイする、ロボットアクションVRゲーム。このゲームはサービス開始当初は凄い人気を博していたが、ロボットの激しいバトルをVRで再現すると「視点が揺れて酔う!!」という理由で今はサービス開始直後に比べてプレイヤーが極端に少ない。
そんな中でも僕こと倉田圭伍は酔わないように1時間毎に休憩をはさみサービス開始当時からコツコツと遊んでいた。これでも酔わなくなった方で、始めたばかりの頃は10分で気分が悪くなっていた。
今日も僕は学校から帰ってきてagmcにログインしていた。
「準備完了っと出撃!!」
『ガルヴァンド』という名の対複数特化の、ギアーズと呼ばれるロボットを出撃準備し完了ボタンをタップする。
「射出」と機械的音声が流れて『ルフ』という名の空中空母から出撃する。僕の乗る『ガルヴァンド』は地面に着地する。今回の戦場は『平原』。見通しが良く、対複数特化で対複数兵装をした『ガルヴァンド』はほぼ最強。実際NPCには絶対に負けない。
『ガルヴァンド』の兵装は中距離射撃武器『バスターライフルG3』、一斉及び遠距離射撃武器『GG8レーザーガン』、近距離斬撃武器『E2M9ヒートブレイド』が基本兵装。他にも『ガルヴァンド』専用の、肩に装備する『ショルダーカノン』。膝に装備する誘導型ミサイル『デストロイ』等。そして対複数特化なのでリロード時間が減少したり、武器の威力にプラス値が乗るスキルがある。
『前方敵勢反応確認。数150。30秒後に会敵します』
機械音声が敵の反応を教えてくれる。勿論敵もギアーズ。マップにもエネミー反応の赤点が150かはパッと見では分からないが、沢山ある。なので僕は見えた敵から膝のミサイルでロックオンしていく。敵の一体のHPは約500程度。僕の『デストロイ』の攻撃力は一発3000。最大ロックオン可能数は50で、つまり50体の敵を1度に葬れる。
「発射」
僕は『デストロイ』を片膝ずつ発射する。片膝50発、計100発を先制射撃する。ミサイルは膝から打ち出され前方に放物線を描いて飛んでいき、轟音をたてて爆発する。マップから大量の赤点が消えた。
僕は次に兵装を『GG8レーザーガン』に持ち替えて更に近ずいてきた敵にレーザーを撃ち込む。再装填に時間がかかる代わりに一発の威力が45万の高威力極太レーザーだ。レーザーは前方の敵に命中し、また爆発する。マップの赤点も数えられる程にまで減った。
「あと12体」
敵は走ってこちらに向かって来る。それを『バスターライフルG3』で一体一体潰していく。バスターライフルは一発の威力は1500程で、連射は出来ないが速射ができリロード時間も2秒と凄く短い。更に『ガルヴァンド』のスキルでほぼ一瞬でリロード出来る。
僕の射撃を抜けて来た一体が僕に突っ込んでくる。
「これでラスト」
僕は『E2M9ヒートブレイド』に持ち替え、敵の特攻に合わせて横薙ぎ。敵は真っ二つに切れ、マップの赤点は無くなる。
『敵勢反応が全て消えました。 任務達成です。お疲れ様です。5分以内に帰還を開始して下さい』
機械的な音声が僕を労う。この帰還までの猶予で素材を拾ったり敵の武器を回収するのだ。しかし僕は真っ直ぐ帰る。背中にジェットバーニアが付いているので飛行が可能だ。僕は『ルフ』に戻り、『ガルヴァンド』を格納庫に戻す。といってもこのゲームはオープンワールドで自由に探索も出来る。なので僕は『ルフ』を操縦して探索をする事にした。少し飛行していると目の前に黒い穴が現れた。
「うん?あれは、なんだ?」
その黒い穴はどんどん膨張していく。危険を感じた僕は『ルフ』を後退させる。だが黒い穴は破裂し、その衝撃が『ルフ』を襲う。
「な、なに?」
『ルフ』は強制シャットダウンしていた。どれを弄っても反応しない。このままでは墜落する。
そのまま『ルフ』は高度を落としていく。そして墜落した。
おかしいこんなシステムagmcには無かった。取り敢えず僕は休憩しようとVRコンソールを外した。
「...あれ?」
VRコンソールを外したのに景色が変わらない。そんな筈はない。僕は部屋でプレイしていたから、VRコンソールを外すと部屋が見えるはずでは?
「...どうなってんだ?」