○□☆◇▽/団欒 ~酢豚で疲労回復中~
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「でな、シャロ、そこでまゆらが思いっきり空ぶってさ。そのまま試合終了、引き分けだったってわけだ」
優丘高校の球技祭もなんか適当な感じに終わり、俺と響と愛姉と、ゆら姉、秘姉は疲れた足を引きずりながら帰宅。
とりあえず即、大浴場(シャロ姉のオーバーテクノロジーで作られた異空間)で汗を流し、今はこうしてニゴ姉の作った酢豚を食べている。
球技大会の話で盛り上がる食卓には、シャロ姉、ニゴ姉、姉貴、ゆら姉、秘姉、そして俺の六人が揃っている。愛姉もきっと今頃、お父さんや香恵さんとバレーボールの話をしていることだろう。
箸に皿がかちゃかちゃと触れる音と、笑い声が響く。
男子サッカー決勝戦で、ゆら姉の最後のシュートが空ぶった話をする姉貴。一方ゆら姉はほんの少し頬を赤らめている。
「響姉さん、もうその話はいいじゃないか」
「いや、格好良かったぜ。宗一に罰ゲームさせたかったんだろ? おれと同じ、宗一いじめの崇高な精神じゃねえか。あれは“マユーラ・ファントム・シュート”と名づけて語り継ごう」
「そ、宗くん、助けて……」
「おい姉貴、ファントムシューターまゆらさんをいじめるのやめろよ!」 「ひどい! うう……そんなこと言っていいのかな……? 後で宗くんの部屋にスク水コスで押しかけるよ……?」 「ごめんなさいやめて」
楽しく話す俺と姉貴とゆら姉を見て、シャロ姉が笑う。
「楽しかったのね。お姉ちゃんも行きたかったわ。ニゴちゃんと一緒に」
ニゴ姉はツンとして、両手で持った湯呑を置く。
「確かに見学したかったですね。ニゴは今日、小説を三冊読みました。とても充実していました」
「なんだよニゴ、そんな暇なら来ればよかっただろ」
「暇ではありません。とても充実していました」
「うふふ、ニゴちゃんったらあ」
ニゴ姉の頭を撫でるシャロ姉は、今日もいつも通り仕事に行っていた。あまり残業をせずに帰ってきたのは、上司が今日だけいないからと、球技祭の話を聞きたいためらしい。
「ヒビちゃんって、サッカーも得意なのね~」
「まあ、学校最強ではねえけどな。女子の中でも秘代とかのほうが強いし、あとは二年の夜光院志乃と使野真桜の殺伐コンビとかのほうが断然」
あの二人は凶悪だからなあ、と思っていると、
カラン、と音がした。
シャロ姉が手元の箸をテーブルに落としたのだ。一瞬だけ呆然とし「ツカノマ……?」と呟く姉さんは、しかしすぐに箸を拾い、誤魔化すように微笑む。
「ごめんなさい、ちょっとびっくりしちゃった。ヒビちゃん今、二年の『ツカノ マオ』って言ったの?」
「そうだけど、どうしたんだ?」
「ううん、ちょっとね。古代文明の創造神に名前が似てたの。そっかー、でも神様ちゃんなら現代に来て遊んでてもおかしくないかも……」
なんだか凄い話をしている。姉貴もゆら姉も秘姉も、ぽかんとした。唯一仏頂面だったニゴ姉が、それはシャロ姉に依然頭を撫でられまくっているからなのだけど、話題を変えた。
「響さんと宗一さんは、罰ゲームをかけて勝負をしていたのですよね。どんな罰ゲームだったのですか?」
「そりゃニゴ、あれだよ、まるで一本の爪楊枝に広辞苑のデータ全てを書き込むかのような」 「うん、姉貴の言うとおり、まるでワイヤレスイヤホンで首を絞めるかのような」 「全く意味がわかりません」
俺は首を横に振るニゴ姉を見て笑いながら、大皿の酢豚に箸を伸ばす。そこへ辛うじて視認できる程度の速さで豚肉が皿から移動した。
秘姉だ。
俺たちが話し込む中、秘姉だけは酢豚と白米を食べながら無言だった。一生懸命、一口三十回噛んでいる。
シャロ姉がそんな秘姉に声をかけた。
「ひめちゃんは楽しかった? 球技大会」
もぐもぐと口を動かしていた秘代はごっくんと飲み込むと、いつもの小声で返事をする。
「あ、うん……楽しかった……けど……」
「秘姉はあの場にいる誰よりもサッカーが強かった。なんたってくノ一だから」
「たぶんそんなことはないけど……え、えへへ……」
「くははっ、つっても、秘代は最後に思いっきりミスしでかしたけどな」
「……あうぅ」
姉貴が笑って、秘姉の頭をがしがしと揺らす。
「それでもな。かっこよかったぜ、秘代」
秘姉はおずおずと姉貴の顔を見た。その声と表情は、俺にもわかるが、いつもの姉貴より優しい感じがした。
「うん……あ、ありがと、響おねえちゃん」
「よっしゃ秘代、食え! ニゴの酢豚は中華料理屋並みだからな! 食え! あーん!」
「わわ、あーん……はむ……お、おいひい」
俺もタマネギを口に運ぶ。おいしい。シャロ姉は「あらあら、ヒビちゃんったら照れちゃって」と頬に手を添えて微笑んでいる。ゆら姉は未だに俺を襲う時のためのコスプレについてぶつぶつと呟き、ニゴ姉は「響さん、秘代さん、お行儀よくしてください」と上品にみそ汁を飲んでいる。




