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冒頭 (2)
母が出ていくと、椅子から跳ねあがってビデオカメラの録画を切った。
3年の1学期が始まった。
春休みを終え、2年次とはうってかわって3年生はいっそう受験という色を強めた。
生徒同様、3年担当の先生の雰囲気も変わっていた。
そんな中、叶は教科書でも単語帳でも問題集でもなく、小説を片手に登校してきた。
正門をくぐり、教室に入って席についてからもやはり小説から目を離さないままでいた。すると後ろから聞きなれた声が聞こえてきた。
「かなえ~。おはよ。何読んでるの?叶のことだからまた変わった小説読んでるんでしょ?」
叶の肩に軽く手を置きそういってきたのは、叶の幼馴染伊月由香里である。
彼女は叶から本をとるとぱらぱらっと流し読みし始めた。
しばらくすると
「めずらしい!普通の恋愛小説じゃない。」
由香里はまるで本の内容を全て理解したかのような目をして言った。