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響-ヒビキ-  作者: nozomu
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第5話 会議

 それから毎日、テレパシーが起こるようになった。

 サクラたち一年や先輩と話してわかったことだが、テレパシーが起こる時間、伝わる人数、全てバラバラで規則性が見当たらないようだ。二つの例外を除いて。

 佐々木が発見したことだが、

  ①強く思っていることは伝わる可能性が高い。

  ②特定の人を意識しているとその人に伝わる可能性が高い。

という事が分かった。

 また、雅史は座禅を試みて、その間はテレパシーが『伝わる』ことはなかったと言う。(『伝わってくる』ことはあるため、苦労したと言っていた)つまり、伝わるのは本人が意識していることだということになる。



 そして今日、つまり週が明けた月曜日だが……

「さて、近況報告を始めるぞ」

 放課後の新聞部室。上座の中村先輩の言葉で近況報告会が始まる。最初は雅史だ。

「俺は座禅をあの後繰り返してみましたが、結果は同じでした。他の対策はまだ思いついてません」

 結果は同じ。つまり、やり方次第で自分から『声』が発せられるのを抑えることはできる、ということか。これは大きな収穫といえるのか?

「分かった。じゃあ、瀬川」

「雅史と同じです。あと、本人が近くにいるとき以外はなるべく聞き流すようにしているくらいですね。それでも、やっぱり不自然な空白ができるみたいで。近くにいた奴に変に思われますけど」

 実際に学校で『声』が聞こえた時、近くにいた和田にどうした、と聞かれてしまった。だが、話したところで信じてもらえることではないだろう。慣れていくしかない。

「聞き流す、か。もっともな意見だな。空白ができることに関しては、ごまかしていくしかないか……。では、桜木は?」

 俺と雅史から話を聞いた先輩は、続けてサクラのほうを向く。俺も同じようにサクラを見た。

 サクラを見るたびに水曜日のことが思い出されて複雑な気持ちになる。あの日以来サクラは『普通』であるように思える。が、どこか普段と違うように思えてしまう。

「わたしもあまり意識しないようにしてます。普段通りを心がけて。まあ、それでもやっぱりいろいろ考えてしまうんですけどっ」

 サクラが答えた。いつも通りの、元気なサクラだ。

その様子に俺が少し安心していると、次は佐々木が話しはじめた。

「わ、わたしも……なるべく落ち着いて生活するようにして……います」

少し顔を伏せながら、佐々木はおどおどと話す。

 佐々木はあの時以来、普段よりもおとなしくなってしまった。いや、もう少し言えば絶えず『何か』に怯えているような感じだ。

 その『何か』とはこの状況そのものなのか。俺には少し違うように思える。なんとなく、だけど。

 原田先輩が「じゃあ、次はアタシね」と言う。

「アタシは全く大丈夫っ」

「おまえに関してははじめから何も心配していない」

 中村先輩が即答した。

「それは酷くない!?」

 原田先輩の慌てぶりに俺たちは笑う。なんだか、久しぶりに笑った気がする。少しだけ、新聞部室に明るさが戻る。

 しかし、そんな空気も。

”ヤダッヤダ、こんな状況……”

 一つの台詞でかき消されてしまうのだ。

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