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その六十五(二つの手紙)〜最終話(異世界が好き)

最終話です。

その六十五(二つの手紙)


山口へ。


まずは、俺の指示通りにこの手紙を読んでくれてありがとう。まぁ、何だ?あんまり気を落とすんじゃないぞ。人なんてその内死ぬからな。


とまぁ、挨拶はこんなところにしておいて、ここからが本番(俺が能力で見て来た光景の事を書く。)


後藤は俺の事を生き返らせようと思ってる。それは山口も同じだろ?あいつは山口が図書館で言った言葉を覚えていたんだ。それは俺にとってはすげぇありがたい事なんだけどさぁ。その為の行動を、転送されて来た人達が助けちゃいけないんだよ。

何でかは…聞くなよ。てか聞けないか。俺、死んでるし(笑)。だから、後藤が俺を生き返らせる為のメンバーを募っても、誰もそれにのっちゃあいけないって事。その時に、後藤が可哀想だなんて事を思う必要も無いよ。これは、みんなが目的を達成する為に必要な事なんだから。

この事については、帰りの空車の中で、カゲローさん、上條さん、西丸さんに伝えてくれ。…竜二さんは山口が言ったところで[俺は仲間は見捨てねぇ!]とか言って聞いてくれないから、カゲローさんの家で合流した時に、上條さんから話してもらってくれな。

後は富さんの事だな。上條さんがみんなに状況を説明する前に、富さんには席を外してもらってくれ。その場にいなければ何処でも良いよ。まぁ、カゲローさんの部屋が無難かな。後、ニコちゃんとミツオは、カゲローさんの言う通り、みんなには後で紹介すれば良いから。


こんなとこかな?二回見直したから、書き忘れは無い筈。


それと最後に。これが一番大事な事だからな。絶対に守ってくれよ。


後藤が書いた大事な人に向けた手紙。山口は俺の手紙を読んだら、その手紙を直ぐに自分の懐にでも隠してくれ。それで、その手紙を常に自分の手の届く位置に保管して、誰にもその手紙を見せちゃダメだ。勿論、山口もその手紙を読んじゃいけないよ。…これは絶対だからな。



んじゃ。またな。


神崎正。



(何よこれ。人の気持ちも知らないで。随分勝手な事書いてくれたわね。)


私は、直ぐに瓶の中から後藤さんの手紙を探し出し、懐にしまった。


「山口さん!」


その直後、私は背後から自分の名前を呼ばれ、慌てて振り返った。


「あ、奥の部屋に行くの?私も…。」


その直後、私の身体は動かなくなった。






俺は一人、ベッドの上で横になりながら、茶封筒の封を切った。その中からは、複数枚の白い紙が出てきた。俺は予想通りの物が入っていた事により、胸が引き裂かれる思いだった。自分の浅はかな行動によって、死罪にかせられた、罪の無い愛する家族からの手紙だ。俺は部屋の中を見渡し、自分以外の生き物が誰もいない事を確認した。


(……………。)


俺は黙ったまま、この手紙をどうするべきか暫く考えていたのだが、答えは出てこなかった。


[いつまでも王宮から逃げている、情けない男だ。]


(俺は…逃げていたんだ。そんな事は分かっている。だが、逃げて何が悪い。………………………………情けない男。お前の言う通りだ。)


自分が間違っている事は最初から分かっていたのだが、俺は心の中でノブリの言葉に反論した。


「よりによって、あいつに言われるとはな。」


俺は小さな声で呟き、半ば自暴自棄になりながら、手紙を読み始めた。



愛するあなた、大好きなパパへ。


俺は手紙を伏せた。自然と身体がそうさせたのだ。


[いつまで逃げるつもりだ?]


頭の中であいつの声がした。妻の親友であるあいつの。


(…糞。)


俺は震える手を必死で抑えながら、手紙を再度読み始めた。


愛するあなた、大好きなパパへ。


この手紙があなたの手に渡る頃には、私やマイはこの世にはいない事でしょう。先立つ不幸をお許し下さい。


ノブリに掛け合ってもらい、特別に手紙を書く事を許してもらいました。あなたが今、何処で何をしているのかは私は知りません。あなたが、本当に国王を手に掛けたのかどうかも私は知りません。ですが、私に不安は一切有りません。あなたが私達の前に姿を見せられないのであれば、何か重大な理由が有っての事だと思います。あなたが本当に国王を手に掛けたのであれば、国王がそれだけの大罪を犯したのだと私は思います。私はあなたが常に真っ直ぐで、眩しいぐらいの綺麗な心を持っている事を知っています。

あなたは優しい方ですから、私やマイの事を気に病んでいる事でしょう。ですが、その必要は全くありません。あなたは、あなたの信念の元、正しいと思う様に行動してくれればそれで良いのです。あなたは私に隠せていると思っていますが、私は知っています。あなたが王宮の為に、汚い仕事も数多くこなしてきた事を。ですが、そんなあなたを私は心から尊敬していました。心優しいあなたが、そんな仕事を自ら進んでやる訳が無い。恐らく、自分がやらなければ、他の誰かがその手を汚さなくてはいけないと考えての行動でしょう。

……私は、あなたの事ならあなた以上に分かっているつもりです。


もし、忘れているのでしたら思い出して下さい。


私の主人。カゲローはそういう人ですよ。


最後に、私はあなたの妻として生きられて幸せでした。


ナイムより。



当に枯れ果てたと思っていた、冷たいものが頬を伝う。


(俺は、お前達の事を必死に忘れようとしていた…。それが、逃げているだけの行為だと分かっていたのに。)


「ごめんな。…ごめんな。」


自然と出た謝罪の言葉だった。そして、手紙の最後の一枚を手に取り、声をあげて泣いた。



パパ。今日もお仕事頑張ってね。


大好き!


マイより。


そこには、つたない字でそう書かれていた。


最終話(異世界が好き)


沢山の星々に囲まれた暗闇の世界を、一枚の絨毯が滑る様に進む。その柔らかい筈の布には、三人の人物が乗っていた。


「エスマさんが、G・Pに連絡をいれといてくれたらしいから、あんたの件については審議中だと思う。まぁ、これで良い方向にいかなかったら、あんな組織にはいる必要ないね。…あんたも私も。」


サポーターを顔から離し、ミリヤが私に言った。


(そうか。)


命に転送され、三人と合流した私は、迅速かつ正確に事の流れを説明した。それに対し、ミリヤもこの洞窟で起こった出来事を、簡潔に説明してくれた。エスマが、洞窟の外にいるミリヤや森内を、どうやって見つけ出したのかは分からない。恐らくは、彼の能力が成せる業だったのだろう。説明が終わると直ぐに、エスマは洞窟の入り口で陣取っている、侍達と合流すると言い始めた。理由は以下の二点。


自分がG・Pのスパイだという事に気付かれていない。


命の話が真実ならば、王宮の人間は再度、この洞窟を侵略しに来るだろう。それは、誰かが止めなくてはならない。


その二点を言い残し、エスマは崖下に颯爽と降りていった。その後、私達はオウガの遺体をその場に埋葬し、帰路に着いたのだ。こんな危険な場所で、仲間を埋葬する事は、愚かな行為だったのかもしれない。だが私達は、彼の遺体をこの場に放置出来る程、非情にはなれなかった。私達は、最後ぐらいは彼を、人間の仲間として扱いたかったのだ。


「ふぅー。」


大きく溜め息を付く森内。


「疲れただろう…。何も知らない世界で、お前は本当に良くやってくれたよ。今は眠って構わないぞ。」


そんな森内に、私は優しい声を掛けた。


「落ちないならね。」


私の言葉に、ミリヤが静かに付け加えた。


「ん?はは。俺は大丈夫だよ。…ちょっとな。オウガの事を考えてて。」


私とミリヤの表情が暗くなる。その事には気付かず、森内は話しを続けた。


「後は任せる…か。なんにも知らない俺に、これからの事を託すのか…。」


(そうだ。森内はこの世界の事を何も知らない。…彼女は、私達を助ける義務なんて最初から無かったんだ。彼女は私を仲間と考えて、この洞窟に同行してくれた。…私は、これからも彼女の善意に甘えていく気なのか?私だけではない。ミリヤもエスマも、G・Pのメンバー全員が。)


「私達は、あんた達の事を自分の都合の良い様に考えていたんだよね。あんたがこの世界に来れば、無条件に事態が好転すると思ってたんだ。…でも、何も変わらない。変わらないんだ。」


ミリヤの発言から察するに、私と彼女は同じ事を考えていた様だ。その言葉に、今度は私が付け加える。


「変わらないって言うのは、私達のこの世界の事じゃないわ。私達と森内が何も変わらないと言う事だ。転送の儀式を行い、呼び出された者は神なんかじゃ無かった。私達と何ら変わらない、只の人間だったんだ。…私達は、知らない間に神と言う甘い幻想に侵されていたんだ。この世界は私達の世界。私達の力で正しい方向に導かなくてはならないのに…。以前来た神も、その事に気付いて、この世界を去ったのかも知れないな。」


森内は仰向けに寝転び、夜空を眺めている。その表情からは、何を考えているのかが私には分からなかった。


「酷い世界だろ?私達の世界は。赤の他人を争いに巻き込んだんだ。…お前が今直ぐにでも帰りたいと願うならば…。」「綺麗な空だなぁ。」


森内は私の言葉を遮った。


「あ、悪い。全然聞いて無かったわ。」


「ははは。あんたねぇ。」


ミリヤは力無く笑った。私は、この女が心底不思議な存在に思えてきた。しかし、次の発言で、私達の考えは見事に裏切られる。


「オウガ…。俺の世界には、あんなに気が小さくて、強い信念を持った人間なんていんのかなぁ。自分の国、或いは世界の為に、見返りを求めないで行動出来る人間。自分が死んだ後の世界を、心の底から心配出来る人間。……いや、この世界を心底愛している人間、って言葉が、オウガやあんた達には丁度良いかな?」


「………。」


「不思議なんだけどさ。俺は何も知らないこの世界を、心底守りたいと思ってるんだ。」


「森内…。」「あんた…。」


森内は仰向けに寝転んだまま、大きな声を出した。


「俺は此処の人間が好きだ!だからこの世界も好きだ!…何より、この世界の夜空は綺麗だからな!」


私とミリヤは涙を流しながら笑った。それは私達にとって、生涯忘れる事の無い、最低で、最高の夜だった。



…続く?


僕にとっては初めて書いたお話でした。

拙い文章、誤字脱字、沢山有った事と思います。

そんな文章でも、自分なりに精一杯書かせて頂きました。とても良い経験が出来たと思っています。

最後までお付き合い頂いた方、少しでも興味を持って読んで下さった方々には、とても感謝しています。

本当にありがとうございました。


また何時の日か、皆様のお目に止まる事を楽しみにしています。

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