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第一話
夕暮れ時、ライは捕まえた獲物に牙を突き立て、その肉を咀嚼していた。
さほど遠くない場所でこのアナグマを見つけたのは運がよかった。
巣穴の外では、昨夜ほどではないが、吹雪いてきている。
ライには、厚い毛皮がある分、凍え死ぬということはあまり考えられないものの、大変なことは変わりない。
その点では本当によかったと思う。
まだ温かいアナグマの肉はそれなりに生臭いが贅沢は言ってられない。
この時期、獲物が捕れるというだけでもかなり運がいいといえるからだ。
筋ばった、例えるなら豚肉のような肉質の塊を噛み千切りながら、もくもくと口を動かす。
咀嚼する度に、彼の口元はどす黒い赤色に染まっていく。
今のライを別の者が見たら、怯えて腰を抜かすか、一目散に逃げ出すのが普通であろう。それほど凶悪そうなオーラを出していた。
「すいませーん。誰かいませんかぁ?」
だから、自分の耳にそんなのんきな声が聞こえてきた時は不覚にもむせてしまった。
「んくっ! ケホッ! ……だ、誰だ?」
ピッと地面に血が散る。
すっかり赤く染まった口元を舌で拭いながら、ライは声のした方へと向かっていった。