サンワ
世の中広しと言えど、こんな馬鹿な犯罪はないだろう。いや、人を苦しめる犯罪はすべて馬鹿げていると言ってもいい。ただ、それが当たり前過ぎる世の中に身を投じているのが実情だ。
古からの能書きにあるように、もし本当に神は自分の姿を泥人形で表わし、この地に這わせたのであれば、将来こんな世を予期していたに違いないのだろうか。
サイダー。それは炭酸飲料水だ。
福原はこんな事を思った。
(警察がくりゃ助かったものだ!はやくここから解放されたい。そしたらカラカラの喉を潤すシュワシュワ〜を飲みたい!)
もうすでに助かっている事を想定していた。変なアドレナリンが福原の脳内に染みだしている。
(あっ!やっぱりビールだな……)
それを打ち壊す恐ろしき声。
「デカが来た!! っと驚いてみる……テヘッ」
(あっ、あれ?警察が来てるのに誰も焦ってないなんて。なんでだ)
福原の心境は流れる文字の電光掲示板のように、“助かる”が流れていたが、そのブロック体は崩れ落ち、“謎”の文字に変わっていた。
「と、言うことでゲームスタート」
(いきなり何始めてんだよ)
「イマカラ、ナワ、トキカタ、オシエ、マス」
片言口調でさらに馬鹿げたゲームがつづく。
「しんどいな。あぁオメェ達によ、縄の解き方教えてやるから、解け!そんでな、先に解いた野郎が後の奴を殺せ」
(はぁ?なんなんだよ意味わかんねぇよ)
いきなり『殺す』から、『殺せ』に変わったのには、動揺は隠せない。
「そんでな、手品用にすぐ解けるように細工してあっからよ、ダイジョブだ!そしたら目の前に一丁、チャカあるから脳天目がけてぶっ放てぇオラァ」
結局、切羽詰まった状況は変わらず、さらに警察が来たことにより、このゲームは早くも幕を開けてしまった。