ニワ
近くて遠いというのか、携帯のスピーカーから聞こえてくる声。
「ジャンジャジャ〜ン!今週も始まりましたビックリどっきり目隠しゲーム」
拘束されている本人にしてみると、馬鹿げた芝居声で笑えないし楽しくない。
「はーい!今回も似たもの同士が椅子に縛られて向かい合っていまーす」
妙な言葉を聞いた。
そう、なんとこの謎の一室には、福原の他にもう一人、確実に拉致監禁されている男がいたのだ。
彼らは互いに似たように拘束され、向かい合っている。いや、向かい合わされていたのだ。
「さーて、今回君たちが選ばれたのは何故か! そーれーはー……」
間が空く。ふざけた間が空く。
「あんた達は、隠れ肥満ならぬ、隠れ犯罪者だからでーす!ヨー!」
!!!
(何、何言ってんだ!)
福原ならずとも、多少なりの軽犯罪は犯してはいるが、(男なら立ち小便など)ここまでされる覚えはない。まして他人に恨まれる覚えも無かったのだ。
「あんたら、処刑!ヨー」
(なんなんだ、なんなんだ、なんなんだ)
福原は思いもよらぬ言葉を耳にし、恐怖と絶望からの憤りを拘束された身体全体で表した。
ゴツッ、ゴツッ! ウーッウーッ!
身体を大きく震わせ椅子をずらしたり、猿轡からもれるうめき声。
なんの抵抗にもならない。ともなれば、向かいの男もそうだろうと思ったら、わりかし静かなもので、物音一つたてていない。
「あーらら、騒いじゃダメダメよーん。あんた達の近くにはもう一人、ジャジメーンツーが銃持って立ってるからヨー。てか、ヨーは飽きたな」
この緊迫感はなんなのか? “殺す”と脅されているはずなのに、そんな感覚が失せている。だけど、銃を持った男が傍にいるのと、拘束されている現状からくる妙な違和感。
全身から出る汗と、肛門の辺りがヒク付き出している。
そんな時だった。
天使の濁声が? 近くて遠くから聞こえてきた。
「警察だぁ!建物は包囲した。大人しく人質を解放しなさい!」
この一室まで聞こえてくる、拡声器からの濁声。
(やったぞ!警察だ)
彼らに救いの天使が現われた。