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TEN-ROBO.-天才少女とロボット執事-  作者: ツキミキワミ
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番外ーバレンタイン

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「石油王の次は、おじいちゃん議員!?よくやるわ。」頬杖をつきながらもう片方の手でパスタを食べる雪洞は飽きれた声をだした。

テレビではアナウンサーがリディアが被害を受けた事件について、事細かに語っている。リディアはその議員とリディアの会社で会議中にその議員にいきなり強姦されたというものであった。テレビには議員のしわくちゃな顔が画面いっぱいにうつしだされている。

「お嬢様、肘をついてはいけません」という説教は聞かなかったことにして、少女は青年に「ねえ、フランシス。こんな相手、流石にリディアも普通いやじゃないのかしら?」と70代の有名議員を顎でさしながらいった。

このような事件は今に始まったことではない。事件にはならなかったものの、数カ月前はアラブの石油王と似たようなことが、その前は、大企業の社長、そのまた前は愛妻家で知られる権威のある教授と…まあ、数えきれないほどである。

「いやならしませんよ。」と冷静に返したフランシスに、雪洞は「わかってるわよ、そんなこと。…でもいくらなんでも…」と言葉を濁した。

「歳をとっていても、男は男です。世継が生まれるならいいことなのではないですか?お嬢様もこれからは会議室に完全に二人きりになりますか?」という少女の言葉の意味を解していながらわざとずれた返答をする青年を雪洞はじとっとした目でにらんだ。

「そう怯えた顔をしなくても大丈夫ですよ。安心なさってください。どんな手をつかってもお嬢様を襲うことはないようですから。」

「怯えてなんかいないわよっ!」

バンっとテーブルを叩きながら勢いよく立ち上がった雪洞をみて執事は「行儀の悪い食べ方の次はコントですか。コントにしてもそのリアクションは古いですよ。全くうちのお嬢様は…」と心底飽きれた表情を浮かべながら、立ち上がった拍子にテーブルクロスに零れたパスタや飲み物を片付けていた。

少女は「ああっ!私のパスタ!!!フランシスの…」と抗議をしようとしたところ「私がなんですか?」と鋭い視線で睨まれ、「ダイエットするのよ」とまだ充分みたされてはいないお腹に悲しい視線を落としがっくりしていた。

そもそもリディアが悪いのよ。

彼女は強姦されたのではないという事実をしる雪洞はイライラしていた。

リディアは権力や研究を奪うために枕営業をしているのだ。訴えたということは、今回はそれをしてもこじれてしまったみたいだが。

リディアの研究というのはほぼなく他人の研究で製品をつくっているが、そんな彼女にも、一つだけ成功した研究がある。それは媚薬だ。

人畜無害であり、その媚薬はあとで問題になっても体から検出されないことから、かなり厄介な代物である。

市場には出回ってないものの、彼女はここぞというときにその薬を使用しており、毎年バレンタインデー嫌味のごとくフランシス宛に送られてくるチョコレートにもその薬が混ぜられており、恵永を雇ってからは恵永にもそのチョコレートがくるのであった。

フランシスが私は襲われる心配はないというのにもわけがある

というのも、リディアとつながりのある企業にいったときのことだ。彼女の媚薬を飲まされたと推測される男性従業員だけを集めたフロアにはいらされ、襲われるという事件があったからだ。

ここで重要なのは誰が襲われたかである。

大勢に襲われたのは雪洞……ではなく後ろにいたフランシスだった。

あとでやってきたリディアも流石に予想外だったのか、青年にボコボコにされ縛り上げられてもなお執事に擦り寄ろうとする多くの男性職員に驚きを隠せないようだった。

そんなことを思い出しながら、雪洞はふとカレンダーをみると、もう2月。バレンタインデーが近いことをしり、深い溜息をつきながら仕事部屋にもどった。

ーー

バレンタインデー当日

またこの日がやってきた。そんなことを思いながら起きるのは何年目だろうか。

重い気持ちでリビングにいくと、予想通り、リディアから二人分のGODIVAのチョコレートが届いていた。

食べられなくするなんて、GODIVAに失礼よね。と思いながら手に取り、「いつものように処理して」と横にいる恵永に渡した。

理由を聞かされてない恵永はリディアからもらったものは基本的に食べてはならないのだろう、しかし毎年思うがもったいないなと思いつつ、主人の命令に従い、チョコレートをゴミ箱に捨てた。

食べないのは危険なものだということを知らないから仕方ないのであるが…。恵永はゴミ箱に入れただけである。雪洞家のゴミ箱はロタの管理が行き届いており基本的にほぼゴミ箱は空であるため、例え間違って捨ててしまったとしてもゴミ捨て場にもっていかれる前なら綺麗な状態で残っている。

今回は運悪くニコラがゴミ箱にいれたチョコレートをみつけてしまった。

美味しそうなチョコじゃん!

あ、あの女狐リディアからだ。

食べない方がいいかなぁ…。でもチョコに罪はない。しかもGODIVAだし、これは食べないともったいないよな。そういってニコラは周りを確認し慎重にゴミ箱から箱を持ち出し自分の部屋に入った。

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さてどうするか。

ニコラは自室に置かれた勉強机の上であぐらをかくと

艶めかしい色気を放つ茶色の箱とにらみあった。

つい昔-貧民区域でやんちゃをしてたころ-の手癖で持ってきてしまったが

ゴミ箱からものを漁るなんてここの住民にとっちゃ非常識の極みだろう。

普段から

『見た目だけでも品行方正になるのよ』と口うるさく言ってくる雪洞さんにばれたら なんて言われることか。

いや、雪洞さんだけならまだ良い。

問題はフランシスさんにばれたときだ。

ニコラは捨て犬事件を思い出した。


屋敷には一時期犬がいた。犬といっても普通のお屋敷と違い

そこらの公園で歩いていそうな真っ黒の雑種で 実際公園でふらふら歩いていたところを雪洞が保護してきたのだ。

「お嬢様、見直しました」

震える子犬を胸に抱えて帰宅した雪洞を迎え フランシスは驚きの声をあげた。

「うるさいわね。どうせ『お嬢様もようやく命を尊ぶ心がお育ちに』とか嫌味でも言うんでしょうけど、私だってねぇ」

雪洞は持ってこさせたタオルで照れかくしのように犬をごしごしふく。

「いえ」

「?じゃあ何?」

わー!わんたんだー!とかけよるシャナと一緒にニコラも犬にかけよった。

純粋無垢な瞳に見つめられ、可愛いなぁ~と頭をなでる。

「ようやく環境整備にも関心が向かれるようになったのですね。

景観を損ねる雑菌まみれの生物を地域の公共施設から駆除なさるなんて

近年のトレンド『エコライフ、美しい地球』にぴったりでございます。

さぁ、後片付けは私にお任せを。汚ならしい毛皮に触れるのは勇気がいったでしょう、お嬢様は御風呂にお入りください。恵永ー!特大生ゴミ用焼却炉の蓋をあけておいてくれー!」

これ以上ない爽やかな笑顔に真っ白な手袋で手を叩くフランシスを見上げ

一同はあんぐりと口を開けたまま叫んだ。

「黒っっっ!!」



ニコラはその時の空気を思い出してぶるっと体を震わせた。

その後犬は焼かれることなく 恵永の実家にひきとられるまで屋敷の片隅でひっそりとくらしていた。


捨て犬でさえあの蔑み様なのだ。

ゴミ箱から取ったものを食べたとなったら……


ニコラは血の気が一気に引くのを感じながら

もう一度チョコレートを見た。

証拠隠滅にさっさと食べてしまおう。

ニコラはゴディバに不釣り合いな大きなリボンをひっぺがし、強引に紙を破いて箱を開けた。

…でかい。

外見から大体予想していたものの、箱の中には特注と思われる大きなチョコが

何やらキラキラしたもので飾られ縁取られ、卵を守る鳥の巣のごときふわふわした何かで包まれ

おまけに飴細工らしきものでフランシスの顔が描かれているではないか。

く、くいづれぇー…

ニコラは一度開けた蓋をもとに戻すと腕を組んで唸った。

渡す相手の顔を渡すチョコに書くなどギャグか本気か

アリエルは馬鹿だとの雪洞さんの口癖は案外間違ってないのだろうか

いやそんなことより これをこのまま放置するわけにはいくまいがしかし、これを食べるには心の準備が…!

などとニコラが一人悶絶している最中、ロタが部屋に入ってきた。

「ニコー!洗濯物出してって言ってるでしょ!あ、また机の上に座って。雪洞様におこられるわよ。…何してるの?」

と、飛び上がったニコラを不審そうにのぞきこむ。

「なんだよ!急にはいってくるなよ!」

「何いってんのよ女の子じゃないんだから。ちょっと、後ろに今何隠したの?」


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