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TEN-ROBO.-天才少女とロボット執事-  作者: ツキミキワミ
29/40

3-15

「シャーロット…!」



フランシスは叫ぶ。



しかし、時すでに遅し。



シャーロットは口元を手で押さえたまま

蝋人形のように動かない。


大きく開かれた鮮やかな青い瞳も

すでに焦点を失ったまま固まっている。



そしてシャーロットの身体は、砂が崩れ落ちるかのごとくサラサラと細かな粒子へ変わり



重力に逆らって拡散して行く。



膝から


胸へ


そして顔へと





音の無い世界で何かを叫ぶフランシスを見ながら

雪洞はその光景を呆然と眺めていた。


全てがゆっくりと、何処か他の世界で起こっているように見える。



目の前で起こっているのことが受け入れられなかった。




見たくない、



しかし、目が離せない。




やがて何かが爆発したように

部屋全体を光が覆う。



思わず目閉じた雪洞が次に目を開けたとき



シャーロットはそこに居なかった。




「チッ…」



ユリシスは喉元を抑えると、耳に当てていた震動遮断物を外した。


――どこまでも運の良い…




「シャーロット…ねぇ…」


雪洞はふらふらと、シャーロットが立っていた筈の床をさする。


しかしそこにあるのは、彼女が持ってきたカップの破片だけである。



「いやぁぁぁ…!」



雪洞はその場に泣き崩れた。



「すみません、リディア様…。


思わぬ邪魔が入り輸送に失敗しましたが、かくなる上は…はい」



ユリシスは胸元の無線機に手を添え何かを話している。



彼自身にも大きな負担がかかっているのだろう。


立っているのがやっとという様子で息を吐いていた。



フランシスも膝に手をついて立ち上がると、ユリシスを睨みつけた。



「貴様、シャーロットを何をした」



「…」



「言わぬか…。


質問を変えよう、彼女を何処へ送った!?」




「貴方としては満足でしょう。


私は雪洞・F・ケイマを狙ったのですよ」



ユリシスは傷のついた頬を触り、真っ白な手袋についた血を見ると無気味に微笑んだ。



「あのコードはなんだ。


彼女を篝に送ったのか!?」



「少し違いますね。



あそこは篝のようで、篝ではないのです」



「どういう意味だ」



ユリシスはフランシスに近づくと



「文字の通りですよ」



と囁いて、その横を通りすぎた。



「待てユリシス!」


ドアに手をかけたユリシスは、足元の雪洞を一瞥する。



「まぁ…良いでしょう。



ここまで手こずらせた褒美です。



受け取りなさい」



そう言ってユリシスは、何かをフランシスに投げた。



受け取ってみると、それは小さな黒い破片である。




「きっと面白いものが見られますよ。



…本番はこれからです」



そう言い残し、ユリシスは部屋を去った。


後を追おうと踏み出した足が崩れ、

フランシスはその場に倒れこむ。




ユリシスが指を鳴らすと同時に、ようやく何かから解放されたのか


屋敷中のアラームがけたたましく鳴り始める。




「くそっ!」


フランシスが床に拳を叩きつけているのが見える。



色を失いしんとした世界の中


雪洞はただ、涙が床に染み込んでいくのを

眺めていた。

ユリシス『本番はこれからです』



ツキミ『やっとかよ!』

キワミ『おせえよ!!!』

(切実)




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