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TEN-ROBO.-天才少女とロボット執事-  作者: ツキミキワミ
25/40

3-11

ユリシスはすかさず胸元から新たな武器を取り出した。


ばちばちっと青い電流の走る棍棒である。




「…っ」




「ははははは!」




目の前にシャナの体をちらつかせられるたびにどうしても一瞬行動の遅れるフランシスは

ユリシスの怒涛の攻撃を避けるので精一杯だった。




「ほらほらほらどうしましたか、先程の勢いは!」


ユリシスはいくらフランシスに劣る機能と言えど腐っても世紀の天才と言われるアリエルの作った超高性能ロボット

そこらの人間よりはよっぽど戦闘能力も高い。


ハンデがあるとは言えかのフランシスを追い詰めるほど俊敏に、

右へ左へと棍棒を振り回していく。




「で、社長には会わせていただけ…」


ユリシスは体勢を崩したフランシスの手を蹴りあげる。


短刀が空を切り、はるか向こうでカシャンと落ちた。



「ますか?」


ユリシスは顔を近付け、フランシスに笑ってみせた。



しかし目は笑っていない。




フランシスはユリシスを睨みつけた。



「…無理だと言ったら?」


「貴方の妹君がどうなっても知りませんよ」


ユリシスは彼の左腕の中で、だらりと両腕を下げ眠っているシャナを見遣った。




ーーくそ、防犯ロボットは何している

監視カメラは?



苛立たしげにフランシスが天井を見上げる。



「おっと、余所見をするなど余裕ですね」



ユリシスがぶんっと棍棒を振り上げた。



「何のために、あなた方を追い出したと。

屋敷の回路は少々、手直しさせていただきました」



「チッ」



ーーやはりあの電磁波か



ひらりと交わしながらも、後退するしかできない自分な憤りがつのる。




ーーシャナさえいなければ…



フランシスは考えた。



シャナはロボットだ。

最悪、代わりを作れないこともない。


確かに、今のシャナとは別物にはなる。

ロボットといっても、そこには蓄積さた経験、環境が性格や能力に微妙な差異を与える。


特にお嬢様の作った人工知能は従来のそれとは異なる複雑で多様な成長とはを遂げるのだ。


意志をもち、時には主人の命令を拒否できるまでの人格を持つーーもちろん、主人を裏切ることはできないが。



一方ユリシスは、主人の命令に絶対従順、

自身の意志で行動することができないという一段階遅れた人工知能だ。



シャナはあのような拙い喋り方をしているが、

潜在的な学習能力や成長速度はユリシスと比べものにならない程高いとも言える。



しかし、


お嬢様の代わりはいない。




我が社の損益を考えるなら、社長であるお嬢様に何か起こることが一番の避けるべき事態、

それは火をみるより明らかだ。



この会社はお嬢様の頭脳だけで此処まで拡大し、維持できているといっても過言ではない。



一執事としてもここは迷わず主人の保身を優先すべきだ。



多少の犠牲はやむを得ない





しかしーーー




フランシスは雪洞が口にこそ出さないが、自分を慕う屋敷の者をとても大切に思っていることを知っていた。

彼等への愛情が、彼女の大きな動力であることも。




フランシスの思考回路が更に高速で回転する。



ーーもしもここでユリシスを倒すことを第一に、シャナを捨てたら何が起こる。



お嬢様は間違いなく数日、いや数ヵ月、いや下手したら1年はショックによる心身の不調を来すだろう


それは会社の経営に計り知れない悪影響をもたらしかねない



それならユリシスがシャナに手をかける前に、シャナを救い出せば…


いやそれは無理だ、彼は俺の不審な動き一つで躊躇いなくシャナを壊すだろう


いっそ一か八か一度お嬢様を呼ぶか…


フランシスは終わりの見えない思考を止めた。






「など、




愚問!!」




防戦一方だったフランシスが突如地面を蹴りユリシスの懐に飛び込み

両腕を掴み骨が折れるほどの強さで締め上げた。



「貴様も倒して、シャナも助ける!」


フランシスの怒鳴り声が響く。



「ぐっ…!」




目にも止まらぬ早さで武器ごと腕を捻りあげられ、

ユリシスが呻き声をあげる。




「シャナ、起きろ!!」



ユリシスの腕から解放され、落ちていくシャナに向かってフランシスが叫んだ。




しかし…





「馬鹿が」




掴んだ腕はいつのまにか武器を持ち直し

棍棒の先端がフランシスの手に当たる。

同時に強力な電流がフランシスの体に流れ込んだ。



「ぐあああああああ!!」


バチバチッという火花が体中に飛び散り、フランシスがドサッと倒れる


「ふ…貴方にはがっかりです。

こんな古典的な方法に易々と乗ってしまうとは。

少々冷や汗をかかされましたがそれも私の慢心ゆえ。

あなたを買い被り過ぎていたようで」



ユリシスは容赦なくフランシスの頭を蹴飛ばした。




フランシスは動かない。



「この調子だと、わざわざあの男の力を借りなくても

そしてあんなよくわからないモノを使わなくても

雪洞・F・ケイマなんて瞬殺でしょう」



と、ユリシスが高笑いしたときだった






「それはどうかしらね」



ユリシスは一瞬の悪寒の後瞬時に体を振り向かせ


飛び込んできた光景に息を飲んだ。



ーーしまった!!



開かれた窓のそばで、


シャナを抱えた雪洞が


風に髪をなびかせ悠然と立っていた。




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