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TEN-ROBO.-天才少女とロボット執事-  作者: ツキミキワミ
20/40

3-5,6

雪洞が最後の扉を開くと、見慣れた壮麗な廊下が現れた。



ーー見えた!

あの角を曲がれば、客間だ。


ようやくたどり着いた地上の光にほっとしながら、雪洞は走る。



「はあ、はあ…広すぎんのよこの屋敷!誰だ設計したのは」


無論彼女である。


しかしそんなことを考える間もなく、急なカーブに体勢を崩しながらようやく目的地点へと到着した。

ゴシック調の扉を見上げる。


ーー待っててね、シャナ。

私があなたたちを意地でも守るから、

二度と大切な人を目の前から消したりしないから…


雪洞が、少し錆び付いた金色のドアノブに手をかけようと手を伸ばす。



そのときだった。



ガッ、と、後ろから何者かに腕を掴まれた。



「っ!」



思わず身をこわばらせ振り返ると、大きく肩を上下させてこちらを睨んでいるフランシスだった。

ところどころ汚れた燕尾服が、ここに来るまでの壮絶な過程を物語っている。



「なんだ、フランシス。驚かさないでよ」


ーーちっ、もう来たのね。


雪洞はバツが悪そうに目をそらした。


彼女も今回のユリシスの訪問がただ事ではないことに気づいていた。

フランシスのように高周波を感じとることはできなかったが、野性的直観からか屋敷に起こっている異変にも無意識に感づいていた。


だから、彼を置いてきたのだ。




「…お嬢様、お待ちください」


「なによ、フランシス!」



フランシスは雪洞を無理矢理振り返らせ、息を整えて言った。


「すでにお分かりかも知れませんが、潜在的な危険性が高い状況です。

ユリシスからと思われる不審な電磁波が発せられております。

ひとまず私が話を聞いて参りますので、お嬢様様は別室にてお待ちください」


「なんでよ、いやよ!私の客よ!?」


雪洞はフランシスの手を振り払った。


「主人が使用人を守らなくて、何を守るの!」


「お嬢様に万一のことがあったら、誰がこのあと彼等を養うのですか。私が行きます」


「ダメよ、やめて」


「お嬢様、子供の我が儘を言っている場合ではございません」


「我が儘ってなによ!」


「あなたは数兆の金を動かす大企業の経営者なのです。ご自分の抱える責任を自覚なさい」


フランシスの鋭利な視線が突き刺さる。

恐らく彼は、本気で"社長"の保身を案じているのだ。

彼の顔はKAGARI取締補佐そのものになっていた。


そして彼女の非合理的な行動がどうやっても解せぬ、そういう顔だった。



こういうとき、彼が人間ではないことが便利なようで虚しいことだと悉く感じる。


彼の言うことは正しい。

それでもーー



「嫌」


「お嬢様…」



「ここは、私の社長としてのプライドなの」


ーー約束したのだ、誰もが焦がれるような

世界一の会社を作ると



雪洞はだらりと下げた拳を、ぎゅうっと握りしめた。



「それに…」



あなたに何かあったら、私はどうすればいいのよ



そう言いかけたときだった。



ドスッ


と鈍い音がしたかと思うと

雪洞は目の前が真っ暗になった。




後頭部にフランシスの手刀が入ったのだ。


ガクッと倒れる雪洞の体を支えると

フランシスは近くを巡回する警備ロボットに「医務室にお運びしろ」と命令した。



フランシスは立ち上がり、彼の伸長をゆうに超える大きな扉に向かい合う。


バキバキッと拳を鳴らすと

不敵な笑みを浮かべた。


「さあ、行こうか」



ギイッ…と、重い扉が開かれた。

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