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TEN-ROBO.-天才少女とロボット執事-  作者: ツキミキワミ
18/40

3-3


「これは…」


ぶつんっと音がして暗くなったかと思うと

タブレットの画面に再びケイマ邸の風景が現れた。



「同じじゃない」


「お待ちください」


フランシスと雪洞が食い入るように見つめていると、突如画面に映る部屋のドアがギイッと開いた。



「動画!?


いつの間に撮られたの!?」


「これは録画ではありません。


おそらく…」


空いたドアから入って来たのはシャナだった。


パタパタ…と部屋を走り回る音がして、

追いかけるようにシャーロットが部屋に入ってくる。


『もう、どこに行ったのシャナちゃん? 


お姉さんお仕事があるのよ、ほら、出ておいで。


お嬢様がもうすぐ帰ってきますよ』


シャナは部屋の棚に隠れると、きょろきょろとシャナを探すシャーロットを盗見て

キャッキャと笑っている。


シャーロットはそれに気がつかないようであった。



『もう、この部屋じゃないのかしら?


遊び相手が居ないとすぐこれなんだから…。


シャナちゃーん!』


シャーロットは部屋を出て行った。




雪洞とフランシスは顔を見合わせた。



「これは、今現在の屋敷の様子ですね。中継映像です。


一体何のために、そしてどうやってセンサーをかいくぐったのか…」



しばしの沈黙が流れ、雪洞は思考の渦に懸命に自らを沈み込ませる。


-精神被害訴訟


篝の不調


社長の訪問


少年の奇襲


屋敷の映像


センサー…


センサー??



ぱきんっ!

と頭の中で、何かが音を立てて動き出した。


その瞬間、すべてがパズルのように

次々と組み合わせれ

やがて一つの地図の様に、言葉の地図を作り上げる。




「やられたわ!!!」


雪洞が突如、声をあげた。



「戻るわよ、フランシス!」


急に血相を変えて走りだした雪洞を

慌ててフランシスが追いかける。



「一体どういうことですか?」


雪洞は走り続ける。


「…あのタブレットが落ちていたのは偶然じゃないわ、必然よ。


普通では開けられないデータが入れられていたのも。



一枚目の写真はフェイクよ。


問題は、私がタブレットに触れて、セキュリティのかけられたデータを開示したことだったんだわ。


なかなか開けられないデータ、それ自体が罠だったのよ。



「開きそうで開かないデータ…なるほど」



フランシスも雪洞の思考についていこうと必死で頭を巡らせる。


「お嬢様に解析させる、

つまり長時間タブレットに触らせるということが狙いだったわけですね。


不審な少年との接触後なら尚更、お嬢様は解析に躍起になりますね」


「そうよ。そしてそこには、私の指紋を読み取るセンサーが埋め込まれていたはずよ」



フランシスは手元のタブレットを開ける。


かすかではあるが、言われてみればそれらしき物が確かにある。


「そうして私の指紋を読み取って、屋敷のセンサーを解いたの!」



-なるほど…忘れかけていたが、やはりこの人は頭が良い。


と、心底感嘆しながらフランシスは少し尊敬の眼差しを向けた。


しかしそれは、同じく難解な論理を組み立て、かつお嬢様の言動を予測できるほどの

高い頭脳の持ち主で無いと仕掛けられない罠ということだ。



「ですが、そこまでして屋敷の映像を送る目的は?」


「…思い出して。一連の訴訟から始まり、不自然な篝の不調。


ダメ押しにセキュリティを一時的に壊す、おかげで私たちは」


「まんまと篝に連れてこられたというわけですか」


「そうよ!」


体力の無い雪洞が早くもはぁはぁと息を切らし始める。


「つまり、私とお嬢様が、一時的に屋敷をあける状態を作るため、ということですか。


それでは、留守を狙った窃盗ということですか?


それならわざわざ、このような映像を送りつけてくるメリットは?


これではまるで、せっかく出て行った我々の帰宅を促すかのようではないですか!」


フランシスが困惑した声をあげる。


「…まだそこまでは分からないわ。


だけど、私たちを追いだして、帰宅したてに何かを仕掛けてくるつもりなのは間違いないわ」


「あの少年は?


篝のセキュリティーキーも絡んできましたし、


彼が何やら不可解な言動もしていたのも気になります」



雪洞は一度口をつぐむと、苦虫を噛み潰したように顔をゆがめる。


「…知らないわ。


とにかく要は、思い通りに踊らされていたわけよ!」



「お嬢様、首謀者の目星はついていらっしゃるのですか?」


「決まってるじゃない!こんな悪趣味なことするやつ、一人しかいないわ!」



と、雪洞がフランシスに振り向いたときだった。


画面に映る屋に再びシャーロットとニコラが現れた。



『おい、入れて良かったのかよ?』


『仕方ないじゃない、どうしても会うまで帰らないって言うんだもの。


大丈夫よ、今回はお一人なようだし。』



ひそひそと話す二人の背後から、若い男が顔を出した。



『よろしいでしょうか?』



『あ!申し訳ございません、どうぞお入りください。


ただいまお茶をお持ち致します。手伝って、ニコラ。』


『お、おう。


あ-、どうぞごゆっくり』



一人になった部屋に入ってきた男は、真中におかれた大きな来客用ソファに座った。



男の顔を見たフランシスと雪洞は、思わず息を飲んだ。



男は赤い髪をかきあげ



部屋を見渡すと―――



ゆっくりとこちらを見あげた。



『お帰りをお待ちしていますよ。


フランシス・ド・フィニステール』




「ユリシス…!!」


二人は同時に声をあげた。



「やっぱり、アリエル!!


あの冷血女、今度は何をする気!?」


画面の向こうで何かを物色するように辺りを見ているユリシスに向かって雪洞が叫ぶ。


「しかしこれで合致しました、常人では組み立てられないようなセキュリティ、巧妙すぎる罠…


お嬢様と同レベルの頭脳の持ち主といったらアリエル嬢くらいしか…」



「一緒にしないであんなヤツ!!!」



その時だった。



部屋の隅から、ひょこりとシャナが顔を出した。



『お客さん?』


先ほど隠れていた棚に、そのまま入っていたようであった。



シャナはたたたたっと走り寄ると、ユリシスを見上げた。



『ようこそ!ぼんぼりたんのお家へ!』


ユリシスは一瞬、おっという顔をすると、


優しくほほ笑んで言った。


『これはかわいいお嬢さん。


はじめまして。


ユリシス・セバスチャンと言います。


…あなたが、フランシスの妹さん?』



『そうだよ!


シャナはぼんぼりたんが作ったんだよ!』



ユリシスは目を細めると、しばし何かを考えた後シャナを手招きして言った。



『よろしければ、ご主人が戻るまで私と遊びませんか?』



「シャナ!!ダメ!!」


雪洞が悲鳴に近い声で叫ぶ。



『いいの!?』


シャナが顔を輝かせ、促されるままユリシスの膝に乗った。


ユリシスは手袋のまま、シャナの頭をなでる。



「こいつ…何をする気だ??」



そうか、と雪洞は顔を青ざめて呟いた。



「アリエルは学会でシャナに会ってる、


何か仕掛てきてもおかしくないわ…」



タブレット越しにユリシスを見つめるフランシスを置いて


雪洞は再び全力で走り始めた。




その時だった。


部屋の隅から恵永が現れた。


シャナとのかくれんぼの途中、置いて行かれたようだった。


恵永「……。」

ユリシス「……。」

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