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TEN-ROBO.-天才少女とロボット執事-  作者: ツキミキワミ
16/40

3-1

焼け野原と化した町並みは先程まで大規模な戦争が行われていた扮装地帯かのように閑散としていた。


――建物の影に敵が潜んでこちらに銃口を向けている――


自らの足音だけが聞こえる静寂の中、少年はかつての感覚を思い出していた。




少年はポケットから超空間無線機を取り出すとどこかに連絡する。


「終わりました。」


「そうか。報酬はあとでな。」


ブツッという音とともに乱暴に回線が切られた。


「…。」


少年はしばし無線機をじっと見つめると、ぽいっと放り投げ


「ああ、疲れたあ。」


と、ドサッと倒れ込んだ。



「ふあぁっ」


のんびりとした声であくびをすると、

バサッと両腕を広げて寝転がる。


三日月がたの細くつりあがった目じりがゆっくりと下がる。


少年の顔つきは、先ほどまでとはうってかわった年相応の、もしくはそれより幼いものに変わっていた。



――こっちの方は別にどうでもいいよね。

ターゲットとコンタクトをとれとは言われてなかったから聞いたら怒るだろうな、

依頼主はヒステリックみたいだから。



さて、行かなきゃ…。



しばし空を堪能した後、歩こうと動いた少年の腹部に

ズキッ…

と鈍い痛みが走る。


どうやら先程のフランシスの攻撃を完全にはかわしきれなかったようだった。


――あの執事相手に無傷では済まないか…。

それにしても、あの執事には驚いたな。

まるで同じ顔じゃんか。


少年は眉間にしわを寄せ、痛みに顔をゆがませながらゆっくりと歩いていった。



町はずれに行くと、そこには空に届きそうなほど高く積まれた瓦礫があった。


それは家屋の破片であったり、車のドアであったり、たまにみられる不明な歯車を除いては現実世界のそれと同じものが殆どであったが 一つ異なるのはそれらが無臭であることだった。


ーーどうせ再現するなら中途半端に手を抜かなかったらいいのに…

まあ、どうでもいいけど。


誰も居ない世界の果てで無機質な山を見上げ少年はぼそりと呟くと、ふと真っ直ぐに銃口を見つめてる先程の少女の顔が思い出していた。


遠くの市街地で修復ロボットが発動されたらしい、サイレンが鳴った。

雪洞たちが街の修復を始めたのだろう。


その音で我に返った少年は瓦礫の山を仰ぎ、タタンッとリズムよく登っていった。


少年はリズム良く瓦礫の山を登っていく。

が、どうやら足場が悪かったらしい。


がくっと体が回転すると少年はお尻から地面に落ちた。


追って落ちてきた瓦礫が彼の顔に当たる。額から少し血が流れた。


彼は袖でそれをゴシゴシと拭いてみたが、そんなことで血は止まるわけもなく、

顔にくっきりと赤い線ができてしまった。


――はあ…痛い。お腹も痛い。

お尻もいたい。絶対青くなってる。

顔も痛い。顔は傷になってもいいけど、お尻が一生青かったらどうしよ。

これじゃあ、さっきのワガママな依頼主と一緒…。

嫌だなぁ…。


少年は立ち上がってふらふらと歩き始めた。


と、目の隅に何か黒い物が見えた。


それはミイラ化した遺体であった。


「君は…」


はっと気づいたような顔をし、少年は手をポンとたたいた。


「友人のリオン君?久しぶりだね。

死んだんだね。ご愁傷様。成仏するんだよ。」


少年は膝を抱えて座り込むと、手を合わせた。


「あ、おばさんにお悔やみいわなきゃ。」


彼は座ったまま電話を取り出した。


「あ、もしもし?」


「はい、此方…」


電話にでたのはリオン本人だった。


「あれ?リオン。なんだ生きてるんだ。じゃあね。」


それだけいうと彼は一方的に電話を切ってしまった。

くるっと死体に向き直ると、


「で、君はなんで死んだの?」

と話しかけている。

勿論死体からの返答は無かった。


「ま、いっか。」


膝をポンポンと叩いて少年が立ち上がった瞬間、ポケットの電話がなった。

ディスプレイをみると『リオン』と書かれていた。


「なに?」


少年は機嫌が悪そうな声で答えた。


「『なに?』じゃねぇよ。

寧ろお前が何なんだよ。」

「はあ…。だから何なの!?」

「いや、だからお前がだな~」

「用事ないならきるね。」


サラリというと、彼は電話を電源から切ってしまった。


「バイバイ。」


小さく手を振って死体に別れを告げると、少年はごそごそと足場が丈夫そうな箇所を探し再び登り始めた。


ある程度まで登ると、

「ふぅ」

といったんため息をついてから、

少年はおもむろに両手を突っ込みガシャンッと掻き分けた。


ガラガラガラ…


と歯車が落ちていく音がして、現れたのは少年の半分ほどある空間の裂け目であった。


三日月型のそれは、空にぱっくりと穴をあけたようにこちらを向いている。


――相変わらず、変な出口。


途中一度だけ振り返り後ろを確認すると、少年は潜るように亀裂に入ると姿を消してしまった。




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