第7話 【文化祭】衝撃の告白
【視点/咲原桜花】
ゆきちゃんと鮎川くんが買い物に行ってしばらく経った。
葵くんがなんだかそわそわしている・・・
「桜花ちゃんちょっと話しがあるんだけどいいかな?」
なんだろう?なんだか思いつめたような表情だけど。
「うん、いいよ」
「じゃあちょっと来て」
屋上へと続く階段の踊り場。ここなら滅多に人は来ない、こんなところに連れ出していったいなんの話しだろう?
「葵くんどうしたの?なんだか思いつめた表情だね」
「うん、とっても言いにくいんだけど・・・」
「なに?」
凄く気になるいい方だ。
「実は、優希のことなんだけど」
「ゆきちゃんがどうかしたの?」
「うん、実は、優希も桜花ちゃんと同じように大輔が好きみたいなんだ」
「・・・・・」
声が出なかった。
私は何を言われるのかと身構えていたがまさかゆきちゃんの話が出るとは思っていなかった。
ましてやゆきちゃんが鮎川くんを好きだなんて・・・
「それと、これは俺の勘なんだけど大輔も優希のことが好きだと思う」
「・・・・・」
また言葉が出ない。
少し間をおいてやっと話し出す。
「葵くんはどうしてそれを?」
「大輔がなんとなくそんな風な事を言ってたことがあったから」
「鮎川くんが?」
「うん、優希の事を気に入ってるみたいなことを言って、優希も俺に気があるみたいだ。って言ってた」
不意に目の前が霞む。気が付くと自然と涙が出ていた。
鮎川くん、ゆきちゃんのことが好きだったんだ。
それよりも衝撃的なのはゆきちゃんの想いだ。まさかゆきちゃんが鮎川くんの事を好きだなんて・・・
「そうなんだ・・・鮎川くんが言ってたんだ、じゃあ間違いないね」
すごい涙声になってる・・・
「うん、桜花ちゃんに言うのは酷だとは思ったけど、でも桜花ちゃんが大輔を好きなの知ってるから・・・だから辛いだろうけど言ってあげた方がいいと思って」
「言ってくれてありがとう。ゆきちゃんと鮎川くんがお互いに好き同士ならよかった、知らないままだとゆきちゃんに迷惑かけるところだった」
「と言うことは桜花ちゃん大輔のこと諦めるの?」
私は息を整え涙をこらえて話そうとする
「諦めるもなにも二人がお互いを想ってるのなら私の入る余地なんてないよ、それにゆきちゃんは凄くいい子だから・・・鮎川くんが好きになるのも当然だよ」
なんとか泣かずに話せた。
「そんなことないよ、桜花ちゃんの方が優希なんかよりずっとステキだよ」
その優しい言葉にまた涙が溢れる。
「ありがとう・・・」
「大輔はどうして優希なんかがいいんだろう?桜花ちゃんの方が絶対にいいのに」
「そんなことないよ、ゆきちゃんの方がいいに決まってるよ。私なんて・・・」
涙が止まらなくなってきた。
奇麗事を言ってはみたものの鮎川くんを好きな気持ちは変わらない。
だから涙が止まらないんだ。
「桜花ちゃん、俺、桜花ちゃんのこと今でも大好きだ。大輔は優希のことが好きなんだし、俺と付き合ってよ。俺じゃあダメかな?桜花ちゃんのさっきの言い方だと二人の邪魔をするのは嫌なんでしょ?」
確かに二人の邪魔はしたくなかった。
ゆきちゃんは私の大切な友達だし鮎川くんがゆきちゃんを好きないじょうその大切な友達の恋の邪魔をしたくはない。
「うん。邪魔はしたくない」
「じゃあ俺と付き合ってよ。俺、桜花ちゃんのこと大切にするよ」
「ごめん。今は何も考えられない、少し一人になりたいの。せっかく大事なことを話してくれたのにごめんね。私先に帰るね」
私は大急ぎで教室に戻る。早くしないと二人が買い物から帰ってくるからだ。
こんな状態でゆきちゃんに会うなんて出来ない。
皆に泣いているのを気づかれないように教室の後ろのドアからそっと入り、髪で顔を隠し鞄を取る。
そして急いで教室を出ようと飛び出した。
「きゃっ」
「あっ」
慌てて飛び出したところで誰かとぶつかった・・・
見るとゆきちゃんだ。
私は大慌てで
「ごめん、先に帰るね」
と一言残し走って階段を駆け下りた。
今は二人の顔を見る事なんてできない。
後ろでゆきちゃんが私を呼びとめる声がするけど私はそのまま聞こえないふりをして走って学校を出た。