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あなたと永遠の時を  作者: 九条 樹
第二章 大学時代
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第67話 名探偵・優希2

 稲村先輩の家は、私の家とは逆方向で準急電車一本で30分。乗り継ぎなしで行ける鶴見駅だった。


 駅から歩いて7分、稲村先輩の家に着いた頃には6時を回っていたがまだ明るい。

 このあたりのことはよく知らないけど、高級住宅街なんだろう。庭付きの大きな家がたくさん並んでいる。

 その中でも一際大きな敷地を有している屋敷のような家があり、それが稲村先輩の家らしい。

 世界的に有名な建築家というから、もっと近代的な建物を想像していたけど、門越しに見える家はまさしく屋敷といえる様なものだ。門構えも時代劇に出てきそうな大屋敷のそれとよく似ている。

 坂上先輩が玄関のチャイムを鳴らす。

 インターホンから声が聞こえ、先輩が二言三言話すと自動で大きな木の門が観音開きのように開く。

 門を抜けると敷石が玄関に向かって綺麗に並べられている。左右には純日本風の庭園が広がり、池も見える。

 ぱっと見ただけで相当なお金がかかってるのがわかる。

 金額は想像もつかないけど、高いだろうということだけはわかる。


 玄関までいくと稲村先輩がすでに待っていた。

「悠一が家まで来るなんめずらしいわね。いつ以来かしら?」

「いつか忘れたけど久しぶりだな」

 坂上先輩は靴を脱ぎながら稲村先輩と話している。

「それより、今日はお客を連れてきたんだ」

「えぇ、見ればわかるわ」

 私は慌てて挨拶をする。

「こんにちは」

「こんにちは、今日はどういったご用件でしょう?」

「なんだよいきなり、立ち話もなんだし、とりあえず律子の部屋へ行こうぜ」

「そうね、じゃあなたも上がってちょうだい」

「はい。おじゃまします」

 こんな立派な家は見たことがないのでそれだけで圧倒される。

 玄関から左右に廊下がのびていて、先輩は右の廊下を進む。私はきょろきょろしながらついていく。

 そして2度ほど角を曲がったところで屋敷と屋敷を繋ぐ渡り廊下へ出てる。

 渡り廊下の下には小川が流れていて、その先が池になっている。

 次の屋敷へ移り、そのまま廊下の突き当りまでくると2階へ上がる階段に着く。

 こんなすごいお屋敷が本当にあるんだと関心してしまう。

 階段は一本道の突き当たりだから迷うことはないけど、途中の部屋ならどこかわからなくなってしまいそうだ。

 階段をあがってすぐの部屋に通される。

 部屋は10畳以上ありそうな広さで、木目を基調としたお洒落な和風のたたずまいだ。

 中心に楕円形をした切り株を模した座卓があり、いかにも座り心地のよさそうな座椅子が6脚備えられている。

 壁には桐だと思われるテレビ台や箪笥、小物置きなどが並べられている。

 テレビは見たこともないくらい大きい。一体何インチあるんだろう?

 しかしよく見ると女の子の部屋としては少し殺風景だし、生活感も感じられない。

 ここは稲村先輩の部屋ではなく客間なのかな?

「優希ちゃん、この窓の外を見てご覧」

 窓の脇に立っていた坂上先輩が手招きをする。

 先輩に言われるまま窓まで移動して外を見ると。

「わっ、すごい」

 野球が出来るほど、というのは大げさだけど、小学校のグランドくらいはありそうな敷地の中心に大きな桜の木が3本植えられているのが目を引く。そして小さ目の梅の木が3本、さらに金木犀の木が1、2、3……5本植えられている。

 綺麗に刈られた芝生が一面に敷かれていて、春には花見やバーベキューなども出来そうだ。

 まるで公園のようだ。

「そうでもないわ、ただの広場ですもの」

「そんなことないです。綺麗に手入れされていて、すごいです」

「それよりも話って何?」

 突然来ちゃったから怒ってるのかな。稲村先輩がぶっきらぼうなので、少し心配になって坂上先輩を見る。

「大丈夫、怒ってるわけじゃないよ。優希ちゃんがあまりにも素直に褒めてくれるから照れてるんだよ」

 坂上先輩は小声だけど、しっかりと稲村先輩に聞こえるように私に話す。

 稲村先輩が坂上先輩を睨み付けるが、それだけで何も言わない。

 坂上先輩はこっちを向いてにっこり微笑む。

「とりあえず座ろう」

 稲村先輩の家なのに、何故か坂上先輩が仕切っている。

 座卓を中心に三人が座ると坂上先輩が今日来た理由を言ってくれる。

「今日は優希ちゃんが律子に聞きたいことがあるって言うんで連れてきたんだ」

 稲村先輩が無表情というか気持ちを読み取れないポーカーフェイスで私を見つめてくる。

 私はたじろいでしまいそうになるのを我慢して口を開く。

「はい、実は……」

 話に入ろうとしたところでドアをノックする音が聞こえる。

 話を止めてドアの方を見る。

 稲村先輩には誰が来たかわかっていたようで、誰なのか確認もせずにノックをした人物を招き入れる。

 入ってきたのはお手伝いさんのようで、飲み物とケーキを持って来てくれた。

 どうぞ、と目の前に置かれたのはオレンジジュースとフルーツがたっぷり乗ったショートケーキだ。

 とてもつやつやしたフルーツがケーキを美味しそうに演出している。

 先輩達も同じケーキだけど飲み物が違う。稲村先輩はホットの紅茶みたいで、坂上先輩はコーヒーっぽい。

 私が不思議そうに自分の飲み物を見ていると。

「真下さんはオレンジジュースが好きだったわよね?」

「はい、好きですけど……」

 どうして知ってるんだろう?

「先日、食事の時もカラオケボックスででもオレンジジュースを飲んでらっしゃったので、今日もオレンジジュースを用意させてもらいましたけど、よろしかったかしら」

「はい、ありがとうございます」

 稲村先輩って天然かと思ったらしっかり見てるんだ。すごいなぁ。

「どうぞ、召し上がって」

 坂上先輩が既にケーキに手をつけていたので、私も少し小腹が空いていたので、話を始める前にケーキをいただいた。

「律子のところで出るおやつは相変わらずうまいな」

「ほんと美味しいですね」

「ありがとう。私が作ったわけじゃないけどそう言ってもらえたらうれしいわ」

 半分くらい食べたところで、話を始めやすいように坂上先輩が配慮してくれる。

「優希ちゃん、律子に聞きたいとこあったら遠慮しないで聞きなよ。な、律子」

 律子さんとは余程仲がいいのだろう、坂上先輩は律子先輩にまったく遠慮をしない。

「ええ、どうぞ」

「はい、ありがとうございます。では遠慮なく」

 そう言って居住まいを正す。

「実は、天文台事故のことについてなんですけど。稲村先輩なら何かご存知じゃないかと思いまして。もしご存知ならお話を聞かせていただけないかと思って来たんです」

「天文台事故のことは少しは知っているけど、どうしてそんなことを聞きたいの?」

「宮川先輩に少し話を聞いたことで、興味を持ったのでもっと詳しく知りたいと思ったんです」

「宮川君から聞いたのね」

「はい」

 稲村先輩はしばらく思案してから応える。

「宮川君は天文台を使えるようにしたいと思ってるみたいだけど、なかなか簡単にいかないのよ」

「どうしてですか?」

「お父さんから学校側に働きかけてもらおうと思って話をしたんだけど、取り合ってくれないのよ」

 どうして取り合ってくれないのかわからないけど、それよりも稲村先輩が宮川先輩の頼みを聞いて行動していたという事実に驚いた。

「そうですか」

「芳郎のためにもなんとか使えるようにしてあげたいのだけど、お父さんがあの事件には首を突っ込むなと言って話を聞いてくれないのよ」

 そうか、稲村先輩が動いたのは部長のためか。

「では、中野静香という人物はご存知でしょうか?」

「事故のあった時に、お父さんが学校の人と話してたのを聞いたので知ってるわ」

「その中野さんって人はどこの人なんでしょう?」

「どこって?」

「たとえば家とか、どの辺りから通っていたとか、高校はどこだったとか」

「家は知らないけど、確かつつじヶ丘の方から通ってるって言ってたような気がするわ。あの事故はワイドショーでも取り上げられたり、新聞にも載ったのである程度覚えてるわ。お父さんが作った天文台での事故ということで取材の人が家まで来たりしたものだから」

「つつじヶ丘というと、名木なぎ高か高槻たかつき高校あたりかな?」

 つつじヶ丘という地名は知っているけど、私の生活圏内からは大きく外れているので行った事がない。

 なのでどういうところかもほとんど知らない。

「そうだわ、高槻高校だと言ってたはずよ」

「高槻高校なら宮川と同じだな」

「え?宮川先輩も高槻高校なんですか?」

 私は思わず身震いがして鳥肌が立つ。同じ高校ということはやっぱり何か関係があったに違いない。

「以前に聞いたことがあるから間違いない」

 私は何度も頷く。

 4年前に2年生だった中野さんの同級生は、もう卒業してしまっているけど、宮川先輩と同じ高校出身の同級生ならきっといるはずだ。

「坂上先輩、誰か高槻高校出身の人知りませんか?」

「高槻高校かぁ。知らないなぁ。律子は?」

「そうね、親しい人となら高校がどこかという話もすることはあるけど、そうでなければそんな話は出ないので知らないわ。もしよかったら捜しておくけど」

 お、驚いた。いつもすました顔をして何事にも関心をもっていないようなイメージだったのに、こんなに協力してくれるなんて。

「ありがとうございます。もし見つかりましたら是非教えてください」

「いいわよ。真下さんががんばってくれたら展望台がまた使えるようになるかもしれませんからね」

「はい、がんばります」

 そう言った瞬間『しまった』と思ってしまう。軽はずみにがんばりますなんて言って、私なんかが今後天文台が使えるようになんて出来るはずがない。

 稲村先輩を期待させるようなことを言ってしまったことを後悔するけど、もう手遅れだ。

「他にも聞きたいことがあったら全部聞いておくといいよ」

 もう突っ走るしかない。がんばるといった以上がんばってみよう。

「ありがとうございます。事件に関わっていた男性2名についてですが、ご存知ですか?」

「そうね、一人は転落死したわよね。それが原因で展望台が使えなくなったんだからよく覚えてるわ。名前は前川俊和、一人っ子でご両親に甘やかされて育てられたようですわ。そのせいか中学の頃からあまり素行はよくなかったらしいですわね。父親は大手銀行の支店長を勤めていたらしいですけど、あの事件後銀行を依願退職してどこかに引越ししたそよ」

 なるほど、あの事件によって家庭崩壊となってしまったのね。

「ではもう一人いた男性のこともご存知ですか?」

「ごめんなさい、実を言うともう一人のことはあまり覚えてないの。新聞にも載らなかったし、とにかくなくなった男性のことを連日報道されていたのでそちらの印象が強すぎて忘れちゃったのよ。ごめんなさいね」

「いえ、もう4年も前のことですしね」

「そうね、ただ、その男性も亡くなった男性と同じ高校出身だということは覚えているわ。家も近所で幼馴染だったそうよ」

「そうなんですか」

 次は何を話そうかと思案しているとドアをノックする音が聞こえてきた。

「はい、どうぞ」

 稲村先輩がそういうと50過ぎの女性が入ってきた。姿からしてお手伝いさんのようだ。

「律子さん、そろそろお食事の用意ができます」

「あら、もうそんな時間?」

 私は慌てて腕時計を見る。

 7時45分になっていた。ここに来たのが6時過ぎだったのでもう1時間半も話し込んでいたことになる。

「す、すいません。突然訪問してこんな遅くまで…… 私達はそろそろおいとまさせていただきます」

 先輩にそろそろ帰りましょうと目で訴える。

「なんだ、もう帰るのか?聞きたいことは全部聞いた?」

 まだ聞きたいことはあるけど、もう夕食の時間のようだし、これ以上の長居は申し訳ない。

「はい、ですからそろそろ帰りましょう」

「律子さん、幸造さんがもしよろしければお友達もご一緒にどうか、とおっしゃってますけど」

 友達って私達のことかな?

「そうね」

「そうだな、よしせっかくだからよばれていこう」

 え?ちょっと待って。勝手に話が進んじゃってる。

「先輩、そんな突然やってきてご迷惑ですよ」

「迷惑なもんか、おっちゃんが一緒にって言ってるんだから」

 おっちゃんって稲村先輩のお父さんのことよね?

「真下さん、遠慮なさらなくていいですのよ。帰りは悠一が責任を持って送って行ってくれるでしょうし気兼ねなく」

「は、はい。ありがとうございます」

 なんだか成り行きで返事しちゃったけど、本当にいいのかな?

「では、私は準備をしてまいります」

「ありがとう、10分後に食堂へ行くわ」

「はい、お待ちしております」

 お手伝いのおばさんはそそくさと帰っていった。

「突然こんなことになって本当にご迷惑じゃないんでしょうか?」

 私はやっぱり心配で、もう一度稲村先輩に確認してしまう。

「大丈夫ですわ。きっと父も真下さんのことが気に入ったのよ」

「え?私お会いしたことないですけど?」

「ふふ、さっきからそこのカメラで一部始終を見てたのよ」

 そう言って天井の中心に備え付けられた物体を指差す。

「え?あれですか?」

「そうよ」

 こんなところに隠しカメラがあったなんて予想もしていなかった。

 何もおかしな行動はしてないからいいけど、でもこれってプライバシーの侵害じゃないの?

「火災報知機みたいな形をしてるので、カメラだとは全然気付きませんでした」

「あら、勘がいいのね。そうよ。あれは火災報知機よ」

 え?稲村先輩何を言ってるの?

 意味がわからないんだけど。

「ちょっと驚かそうと思っただけよ、隠しカメラなんてないわよ」

 ちょ!なんなの。やっぱり稲村先輩って変わってる。

「さて、そろそろ行こうか」

「そうですわね、そろそろまいりましょう」

 いや、まだ3分も経ってませんけど?

「まだ10分経ってないですけど大丈夫ですか?」

「優希ちゃん、そんな細かいことを気にしちゃだめだ」

「そうよ、もっとリラックスして」

 なんなんだろうこの二人は…… もしかして私が変なんだろうか?

 部屋を出た私達は階段を降り、廊下を歩く。

 渡り廊下に差し掛かったところで、坂上先輩の後ろを歩いてる私を振り返って話しかけてきた。

「優希ちゃん、すごいだろ。この建物自体が律子の部屋なんだよ」

「え?」

 今まで私達がいた部屋がある建物を指してそういう。

「これ全部がですか?」

「そうだよ。すごいだろ」

「はい、すごいです」

「別にすごくはないわ。こんなに大きくても使ってる部屋は3~4つだけですもの」

「そりゃそうだな、一人じゃ大きすぎて使い道ないもんな。『離れ』といえるレベルじゃないよな」

「大きいですね、いったいどれくらいあるんだろる?」

「約100平米、30坪ほどよ。家としては小さいけど、部屋としては大きすぎるのよ」

 家でも別に小さくはないと思います。と心の中だけで突っ込む。

 渡り廊下を抜けて母屋に入った私達をさっきのお手伝いさんがお出迎えしてくれていた。

 既に待っていたということは、10分もしないうちにやってくるってわかってたのかな。

 お手伝いさんについて廊下を歩いていると食堂に着いた。

「あら」

 一番はじめに部屋に入った稲村先輩が小さな驚きの声をあげる。どうしたんだろう?

 稲村先輩に続いて坂上先輩、そして私の順で部屋に入る。

 部屋の中を見回すと、普通の和風のお部屋だ。部屋の中心にフローリングの敷物が敷かれ、10人は掛けられそうな長方形のテーブルがあり、一番上座にあたる場所に稲村先輩のお父さんと思われる人が座っている。そしてその隣には稲村先輩のお母さんらしき人が座っている。

 部屋をもう一度見回したけど、違和感を感じるようなものは何もない。

「お父さん、今日はテーブルなのですね」

「ああ、今日はお嬢さんがいると聞いたのでテーブルにしてもらったんだ」

 稲村先輩のお父さんはなにかのスポーツ選手かと思ってしまうほどがっちりとした体格をしている。

 スポーツ選手というより、格闘家と言ったほうがいいかもしれない。

 声も大きくとても豪快な印象だ。

「そうだったんですか。いつも座卓なので驚いてしまいましたわ」

「すまんな、掘りごたつにすればよかったんだが突然だったので、とても間に合いそうもなかったからな」

 私を招待したということだけでいきなり掘りごたつにしようだなんて、いったい何を考えてるだろうか。

「まぁ冗談だけどな」

 え?お父さんも天然?

「さ、そんなところにいつまでも立ってないでこちらに来てお座りになって頂戴」

 先輩のお母さんらしき人に促される。

 テーブルの向かい側の奥から、お父さんとお母さんが座っている。

 こちら側は奥から坂上先輩が座り、次に稲村先輩、そして最後に私が座る。

 私は座ってすぐに挨拶をする。

「今日は夕食にさそって頂いてありがとうございます」

「いやいや、今日は律子と悠一の友達で可愛い女の子が遊びに来ているときいたのでな。せっかくだから一緒に食事でもと思っただけだ。それより名前を教えてくれるとうれしいんだが」

「あ、すいません。自己紹介が遅れました、真下優希といいます」

 頭をフル回転させて、普段なら絶対に使わないような言葉を脳の奥から引っ張り出して使うので、かなり疲れる。

「優希ちゃんか、いい名前だ」

「ありがとうございます」

 先輩達は黙って聞いてるだけなので、さっきからずっとお父さんと二人の会話になってしまっている。

 一対一で言葉を交わしてると、何か変なことを言ってしまわないかと気を使うので、すごく緊張する。

「わしは律子の父で幸造、そしてこっちが母の早苗だ」

 私は立ち上がり「よろしくお願いします」と言って頭を下げる。

「堅苦しい挨拶はいいから、どうぞ召し上がって頂戴。お口に合うといいのだけれど」

 目の前には既に、先付けに八寸、そしてお刺身が並んでいて、まるで旅館にでも来たような感覚にさせる。

「わぁ、美味しそう」

「優希ちゃん、遠慮しなくていいよ」

「はい」

 と、思わず返事したけど、今のって坂上先輩じゃなかった?

 私が慌てて坂上先輩の方を見ると、お父さんが豪快に笑う。

「悠一の言うとおりだ、遠慮はいらんよ」

「はい、ありがとうございます」

 皆が食べ始めたのを確認してから、私も先付けからいただく。

 胡麻豆腐のようだ。

「おいしい」

「そちらはクズの根100%の本葛粉を使った胡麻豆腐です」

 お手伝いのおばさんが教えてくれる。

 何のことかわからないけど、すごそうだってことは伝わってきた。

 八寸もいろいろ凝っていて見てるだけでも楽しい。桜がいたらきっと喜ぶだろうな。

 料理を作るのが好きだから、料理の話で盛り上がってずっとお手伝いさんとしゃべってるかもしれないな。

 お刺身も豪華で二切れずつだけど5種類も盛り付けてある。

 白身のお魚はヒラメかな?それとトロ、あわびに甘エビ、そして……ハマチかな?

 わからない魚の種類を聞いてみたい気もするけど、遠慮してしまって聞けない。

 お刺身をいただいているとまた料理が運ばれてきた。

 お碗形の陶器を目の前に置きながら、お手伝いのおばさんが「こちらは蓮根饅頭のみぞれあんです。器が熱くなってるので気をつけてね」と説明してくれた。

「お刺身のお魚は何かわかりますか?」

 おばさんから聞いてきてくれたので、わからないから教えてほしいというと説明してくれた。

 白身魚はアマテカレイといってこれから旬をむかえるらしい。そして甘エビと思っていたのはシマ海老だそうだ、確かに頭の部分に縞模様がある。そしてアジか何かわからなかった魚はカンパチという魚らしい。初めて食べたけど身がよく活かっていてとても美味しい魚だった。

 刺身を一通り食べて、先ほど運ばれてきた蓮根饅頭の器の蓋をとる。

 蓋を開けると中から、湯気と共にゆずの香りがほのかにただよい食欲をそそる。

「これもすごく美味しそう」

「どんどん食べてね」

「はい、ありがとうございます」

 あまりにも美味しい料理が次々と出てくるので、私はいつの間にか料理に夢中になっていた。

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