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あなたと永遠の時を  作者: 九条 樹
第二章 大学時代
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第63話 迷探偵・優希2

 しばらく考え事をしていたが、だいぶ待ったような気がして、ふと時計を見る。

 2限目は12時10分に終わるので、待ち合わせ時間を12時20分にしていた。

 午後の講義は13時10分からなので、30分くらい話を聞いて切り上げるつもりだったのに、既に約束の時間を10分も過ぎている。

 宮川先輩って時間にルーズな人なのかな?

 とにかくもうしばらく待つことにする。


 さらに10分待ったがやっぱりやってこない。どうしたんだろう?なにか急用でもできたのだろうか?

 これ以上待っていても来ないような気がして、まだ食堂にいるかもしれない桜と大輔に会いに行くことにした。


 ステージから足早にいくつか校舎の横を抜け食堂へ向かっていると、遠目に校舎の影から宮川先輩の姿が見えた。

 約束の場所に来ないで何をしてるんだろうか?

 このまま気付かなかった振りをして素通りでもしようかと考えたのだが、見つけてしまったからにはやっぱり一応声をかけるべきかな?と思い直して先輩に近づいていく。

 近くまで来て、校舎で死角になっていた場所にもう一人いることに気付いた。

 誰だかはわからない。しかし少し口論になっているようだ。口調が激しい。

 言い争っているようだし、やっぱりこのまま知らん振りをしようと思っていたら、宮川先輩が突き飛ばされた。

 『あっ』声にならない声で叫んでしまう。

 それと同時に、突き飛ばした男の人の怒気を含んだ声が聞こえてくる。

「お前、しつこいんだよ。もういいだろ」

「西尾さん待ってください、もう少し聞きたいことがあるんです」

「うるさいな!俺は話したいことなんてないんだよ」

 あの男の人は、西尾さんというのか。

 どこかで聞いた名前のような気もするが、誰だか思い出せない。

 すがる宮川先輩の腕を乱暴に振りほどき、西尾と呼ばれていた男性はその場から立ち去った。

 その男の姿が見えなくなっても、宮川先輩はその場にへたり込んだままだ。

 私は急いで駆け寄っていく。

「先輩、大丈夫ですか?」

 私はしゃがみこんで先輩の腕を持ち、引き上げるようにして一緒に立ち上がる。

「ありがとう。それと、待ち合わせに遅れてごめん」

 遅れてって、ここは待ち合わせ場所じゃないですよ。そんなことより……

「それより大丈夫ですか?今の人はなんなんですか?」

「今のは西尾先輩だよ」

 先輩はズボンについた汚れを叩きながら、私も知ってて当然というような言い方をする。

 だけど誰だかわからない。

「誰ですか?私も知ってる人ですか?」

「そうか、よく考えてみたら入れ違いだから知らなかったね。あの人は元天文同好会の部員で、部長たちと同じ3年生だよ」

 そういえば歓迎コンパの時に、部長の知らない間に辞めた人がいたって話をしていた記憶がある。

 その時、名前も言ってたけど、名前はすっかり忘れていた。

「そうですか、その西尾先輩がどうして宮川先輩を突き飛ばすんですか?」

「まぁ、いろいろあってね」

 宮川先輩の気弱な性格のためなのか、自分に非があったのか、そのあたりはわからないけど別に怒ってる風でもない。

「先輩、どうします?時間も遅くなりましたし、私もそろそろご飯を食べて、午後の講義に出る準備をしたいと思うんですけど」

「そうか、午後から講義とってるんだ。それじゃもうあんまり時間がないね。講義が終わってからにしようか?」

 え?先輩積極的。でも昼休みを台無しにされて、帰りまで潰されちゃ大変だ。今日は桜と帰るつもりだし、あんまり遅くまで拘束されるのもかなわない。

「ごめんなさい、今日はちょっと用事があるので」

「そうか、こっちこそごめん。約束があったのに、西尾先輩に偶然会って話し込んでしまって。また明日以降に時間が合えばそのときにでも話そう」

 先輩的にはなにがあっても話をするのは決定しているようだ。

 ということは、これはどうしても一度話をしないとおさまらないってことよね。

 それなら、どうせ一度は時間を潰されるなら今日でもよかったかも……

 しかし今更、やっぱり今日でもいいですとは言えないので、明日以降ということにしてその場は先輩と別れた。


 私は大急ぎで食堂へ向かいながら時計を確認する。あと2分もすれば1時になってしまう。こんな時間だし、桜と大輔は食事を終えてしまってるとは思いながらも、もしかしたら食後もそのまま食堂で話しこんでいるかもしれない。

 と、淡い期待をもって走る。

 食堂についてとりあえず一度ざっと中を見回す。

 食堂はとても大きく、たくさんの長いテーブルが並べられている。

 高校のときも大きいと思っていたが、大学は桁が違う。

 縦のラインには、8人掛けの長テーブルを3つ繋げられたのが2つ。そしてそれが15列くらい並んでいる。

 単純に720人が座れる計算になる。

 徐々に人が引きだす時間帯になってきてるとはいえ、まだ6割以上埋まっている席から桜を捜すのは大変だ。

 私は別れる前の桜の服装を思い浮かべながら、順番にテーブルを回り、ブルーっぽい色を一つ一つ拾っていく。

 居ない。やっぱりもう食べ終わっちゃったんだろう。

 午後の講義までもう10分しかなし、きっともう教室に行っちゃったんだろう。

 それともまだどこかでお茶でもしてるかな?

 はぁ~と大きなため息を胸の中でつく。結局宮川先輩とも話ができなかったし、散々だな。

 考えてても仕方ない、とにかく何か食べよう。

 もう普通に食事をする時間はないので、おにぎりを1個だけ食べることにする。

 私は肩を落としながら食券売り場へ向かう。

 学食のメニューは豊富でなんでもあると言っていい。

 その中からおにぎり1個を買うなんて寂しい気持ちになる。

 値段を確認すると80円。学食ってホント安いなぁ。

 私はカバンから財布を取り出し、その財布から100円玉を1枚出す。

「ゆきちゃん」

 券売機にお金を入れようとしたところで名前を呼ばれる。

 振り向くとそこには桜と大輔がいた。

 私はお金を入れるのを止めて二人の元へ行く。

「どうしたの?まだいたの?全然気付かなかった」

「もうご飯食べ終わってお茶してたの。そしたらゆきちゃんが走って食堂へ向かってるのが見えたから、急いで追いかけてきたの」

「そうだったんだ」

「きっと私たちがまだ居るかもって思って、急いでるんだと思ったから」

 そうだよ。桜、わざわざ来てくれてありがとう。

 なんとなく照れくさくて、声に出しては言えない。

「今から食事?」

「うん、桜たちはもう食べ終わってるんでしょ?もう時間ないし二人で先に行ってて」

「俺、今日はもう帰るから」

「え?そうなの?またバイト?」

 大輔が頷く。

「あんまりバイトばっかりしてたらダメだよ。授業はちゃんと出ないと」

「わかってるんだけど、店長がどうしても人手が足りないって泣きつくから」

「私もちゃんと講義に出るように言ってるんだけど、人が居ないからって言って聞いてくれないの」

「わかってるって。昨日面接に来た人を雇うつもりみたいだから、そうなったらちゃんと前のシフト通りにしてもらうよ」

「うん、そうしてもらってね」

「じゃ、そういうことで俺はもう帰るわ」

「気をつけてね」

「あぁ」

 そう言って大輔は一人帰っていった。

「それよりもゆきちゃん」

 ん?

「もうあんまり時間ないよ、早く食べないと講義に遅れちゃうよ」

「ホントだ」

 もう後5分で午後の授業が始まってしまう。

「ダメ、もう食べてたら間に合わない。このまま授業に出よう」

「え?大丈夫なの?」

「うん、次の講義が終わったらおにぎりでも食べるよ」

「じゃ急ぎましょ」

 そうして私達は講義のある教室へ急いだ。 


 二人で5限目まで講義を受けた。

 5限目が終わって校舎の外にでるが、まだ薄明かりが残っている。

 最近は6時半頃にならないと真っ暗にはならない。

「じゃ、結局宮川先輩と何も話してないの?」

 校門に向かって歩きながら今日のお昼の出来事を話す。

「うん。西尾先輩という人と揉めてみたいだったんだけど、何を揉めてたのかもわからないし」

「その西尾先輩って元同好会メンバーなんでしょ?」

「歓迎コンパの時に名前が出たんだけど、桜覚えてる?」

「覚えてないなぁ。誰かが辞めたって話だけなら覚えてるけど……」

 と、その時、桜が突然「あっ」と小さな叫び声をあげる。

「ど、どうしたの?」

 桜の声に合わせて、私も思わず小さな声で反応してしまう。

「ほら見て、あそこ」

 私たちは校門へ向かうために池の広場に出てきたのだが、ちょうどその時池の広場からステージのある方へ向かう人がいた。

「宮川先輩だ」

「でしょ、どこへ行くのかな?」

「どこだろ?」

「ちょっと様子を見てみようよ」

「え?後をつけるの?」

「うん、尾行してみようよ」

「桜、楽しそうね」

 「えへへ」と声が聞こえてきそうな表情を浮かべて舌をだす。

「とにかく後を追おうよ」

 そう言ったかと思うと、私の返事も待たずに一人で宮川先輩の後をつけていく。

「ちょ、ちょっとまって」

 そう言いながら私も好奇心に誘われ、桜と一緒に宮川先輩の後をつけた。

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