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あなたと永遠の時を  作者: 九条 樹
第二章 大学時代
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第61話 親友

 今日も朝から授業があるので、自転車でゆきちゃんと待ち合わせの駅へ向かう。

 4月も終わりを迎えいよいよ暑さが増してくる。

 空は真っ青に晴れわたり、自転車をこいでいると少し汗ばむくらいだが、程よい風が気持ちいい。

 しかしそんな清清しい天気とは裏腹に、昨日のことを考えると私は憂鬱な気分になる。

 だけどゆきちゃんと駅の駐輪場で待ち合わせは、いつものことだ。


 駐輪場に入るとゆきちゃんが既に待っていた。

「おはよう」

 さわやかな笑顔で挨拶をしてくれる。

 私の考えすぎだったんだろうか。ゆきちゃんは何も気にしていないようだ。

 そう思うとさっきまでずっと考え込んでいただけに、気持ちが晴れ晴れしていつもより元気よく返事をかえしてしまう。

「おはよう」

「今日は元気がいいね。昨日なにかいいことでもあったのかな?」

「え?別に何もないよ。バイトが終わるのを待ってて、それから一緒にご飯食べただけだよ」

「ふ~ん」

 そう言いながら、にやっと意味あり気な笑いを見せる。

「なに?変な笑い方しないでよ」

「別に~、私はいいことでもあったの?って聞いただけで、大輔と良い事があったの?と聞いたわけじゃないんだけどなぁ」

 そうだった、てっきり大輔くんのことを言ってるのかと思ったけど、言われてみれば勝手に決め付けていた。

「昨日の食事会断っちゃって、ゆきちゃん一人に行かせたから気になってたの」

「そんなこと気にしてたの?桜は先約があったんだから気にすることないのに」

「うん、それでゆきちゃんが怒ってない感じだったからホッとして元気になったんだよ」

 私は気持ちを隠して取り繕うより、正直な気持ちを話した。

「バカね、私たちの間柄でそんな細かいこと気にしなくていいのに」

 満面の笑みで応えるゆきちゃんを見ると、なにをあんなに気にしてたんだろうと不思議に思えてくる。

「おはよう」

 大輔くんだ。

「おはよう」

 私とゆきちゃんが同時に応える。

「おっ、なんだ。桜、やけに元気がいいな。何かいい事でもあったのか?」

「え?そう?まぁあったとえいばあったかな」

「なにがあったんだ?教えて」

「昨日、私を置いてけぼりにして大輔と食事をしたんで、私が怒ってるんじゃないかと心配してたんだ。だけどさっき私が怒ってないとわかって、急に元気がでたんだってさ」

「実はそうなの。ゆきちゃん怒ってないかなぁって気になってたの。でも置いてけぼりとはちょっと違うよ」

「そうだね。正確にはサークルのメンバーで食事に行こうって話になったけど、大輔と約束があるからって先に帰ったってことなんだけどね」

「なんだ、そんなことがあったのか。俺に一言言ってくれればよかったのに」

「大輔に会った時点では、もう私たちと別れた後だから言っても意味がないでしょ」

「違う。桜がそれで気にしてるんだったら、優希はそんなこと気にしないから、気を使わなくっていいって言ってあげたのに」

「気を使わなくていいとか大輔が言う?それは私が桜に言う言葉だ」

 ゆきちゃんが私に笑顔を向ける。

 それを見て本当にゆきちゃんが親友でよかったと思う。

「ありがとう」

「ん?なんのお礼?」

「友達でいてくれてありがとう。っていう意味」

「桜って時々聞いてるこっちが恥ずかしくなるようなことを言うよね」

 私も少しは恥ずかしい気持ちがある。だから本当は親友って言いたかったけど、友達と言ってしまった。

「桜、俺にも言ってくれ」

「え?」

「大輔、なにバカなこと言ってるのよ、あんたたちの惚気のろけは別にみたくありません」

「バカとはなんだよ、ちょっと言ってみただけだろ」

「言わなくていい。気持ち悪いから」

「な、なんだよ」

 なんだかすごく良い雰囲気。こうやっていつまでも三人仲良くいれたらいいな。

「それより二人とも、早く行かないと電車に乗り遅れるよ」

「おう、そうだった。急ごう」

 私は今日の天気と同じ、晴れた気持ちで電車に乗り、皆と大学へ向かった。



「ゆきちゃん、お昼どうする?」

「ごめん。私ちょっと用事があるから、大輔と二人で食べて」

「え?用事?」

「うん、ちょっとね」

 用事ってなんだろう?何か言い難そうだけど、大学で用事なんてあるんだろうか?

「午後の講義はどうするの?」

「それまでには終わるから、講義は出るよ」

「わかった、じゃ午後の講義で……」

 まさか昨日断ったことが関係あるってことないよね?

「桜!」

 私の名前を呼んだゆきちゃんがまっすぐ私を見ている。

「きゃ」

 ゆきちゃんがいきなり私のおでこをつついた。

「なに心配そうな顔してるの。『やっぱりゆきちゃん怒ってる?』とかって気にしてるんじゃないでしょうね」

「そ、そんなことないよ」

 否定はしたけどゆきちゃんの言うとおりだ。ゆきちゃんは何でもお見通しだ。

「言いたいことがあれば何でも言えばいいんだよ」

「うん」

「一つはっきりさせておくけど」

 な、なんだろう。

「な、なに?」

 何を言われるのかわからず不安から鼓動が早くなる。

「私にとっても桜は一番の親友で一番大事なんだよ。昨日のことのような小さいことで怒ったり、気にしたりなんてしないよ。だから聞きたいことがあれば遠慮なく聞いていいし、心配事や不安があれば何でも言っていいんだよ。私達の関係はそんな小さなことで壊れたりしないんだから」

「うん」

 ゆきちゃんの優しい言葉に思わず目頭が熱くなる。

「なに泣いてるの。そんなことで泣かないでよ」

「う、うん」

 でも考えてみたら、ゆきちゃんも人が恥ずかしくなるようなことを平気で言ってる。

「ちなみに、桜が気にしてる私の用事っていうのは、宮川先輩と会うってことだよ」

「えー?」

 私は予想もしなかったゆきちゃんの用事に、すっとんきょうな声をだしてしまう。どういうこと?昨日の食事会で二人の距離が急接近したとか?

「早とちりしないでね」

 まただ、ゆきちゃんは読心術の心得があるんだろうか。

「してしまったけど、違うの?」

「違う、違う。昨日の食事のときに少し話してたんだけど、時間なくなっちゃって聞きそびれた話の続きを聞きに行くだけだから」

「へー、何を話したの?」

「それなんだけど、ちゃんと話を全部聞いたら桜にも教えてあげるよ」

「うん」

「じゃそろそろ約束の時間だから行ってくる」

「どこで待ち合わせなの?」

「昨日宮川先輩と会ったあのステージの観客席」

「あぁ、あそこか。なんであそこにいたんだろうね」

「それも含めて教えてあげるから待ってて」

 ゆきちゃんはあの時盗撮でもしてるんじゃないか?とか言ってたけど、まさかね。

 じゃ結局なんだったんだろう。

 後で教えてもらえるみたいだけど、こんなじらし方されると気になってくる。

「お待たせ。あれ?優希どこか行くのか?」

「うん。ちょっとね」

「ちょっとってなんだ?」

「宮川先輩と会う約束してるから」

「なに?なんで宮川先輩と!」

「もう時間ないからいく。詳しくは桜に聞いて。じゃぁね」

「なんだ?桜何があったんだ?」

「そうね、食事しながら話しましょ」

「おう」


 私は大輔くんと二人で学内の食堂へ向かった。

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