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あなたと永遠の時を  作者: 九条 樹
第二章 大学時代
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第57話 初ミーティング4

「今年の夏はペルセウス流星群が、例年になく活発になるとの予測がされています。ちょうど夏休みですし、その時期に合わせて小学生と一緒に観望会を開きたいと思うのですが、どうでしょうか。雑談形式で皆さん挙手などなしに、歯に衣着せず好き勝手話してください」

「部長、また最後言い方変ですよ」

「そうか?」

「そうです」

 相変わらずの部長の言葉に、下田先輩が注意している。

 だけど部長の、最後は投げ出すような話し方も慣れてきた。


「昨年の観望会、小学生の受けもよかったようですし、今年も是非やりたいと思います」

 そう言ったのは博美先輩。昨年も一緒にやったようだ。

「そうそう、あの簡易ラネタリウムも大好評だったしまたやりましょうよ」

 下田先輩もやる気満々だ。

「道雄はどう思う?」

 今日まだ一言も発していない宮川先輩に、気を使ってか副部長が話しかける。

「僕も賛成です。ただプラネタリウムに関しては、改良の余地があると思います」

「なんだよ、ミッチー。あのプラネタリウムも好評だったじゃないか」

「そうだけど、もう少しだけお金を掛ければ、もっと良い物が作れると思うんだ」

 去年参加していない私には、どんなものかまったく想像できない。そもそもプラネタリウムというのは、小学生のとき遠足で電気科学館に見に行ったもののイメージしかない。

 そのイメージでは円形の映画館のような造りで、かなり大規模だった記憶だけど、宮川先輩の口調では自分たちで作るような事を言ってるようだ。どういうことだろう。

「話の途中で申し訳ないのですが、プラネタリウムを自作するんですか?」

 ゆきちゃんは私の心が読めるのだろうか?いつも私が知りたいことをちゃんと質問してくれる。まぁゆきちゃんにしても、よくわからない話なんだろうけど。

「そうだね、君たちは昨年参加していないからわからないね。実は昨年、流星群が発生するまでの時間を利用して、簡易のプラネタリウムを作り、それで簡単な星の説明などをさせてもらったんだ」

 そう答えてくれたのは副部長。

「その案を出して、自作のプラネタリウム作りをメインでやってくれたのが道雄君なのよ。ね」

 そう言って博美先輩が宮川先輩に向かって優しい笑顔を向ける。

「すごいですね。自作でプラネタリウムが作れるなんて、信じられません」

 私は思ったことをそのまま口にし、宮川先輩を見る。

 照れくさそうに俯き、頭を掻く仕草がいかにも宮川先輩らしい。

「それで、どのように改良するんだ?」

 この場は副部長が仕切っている。

 何か言いたそうに見えるけど、部長は皆の話を黙って聞いているだけだ。

「はい、昨年は大き目の黒い傘に投影する形でした。あれは持ち運びも便利で一度に多くの人が見られる利点がありますが、大きいと言っても所詮は傘なので投影できる面積が小さいです。ですので星を大きく映そうと投影機を近づけると、星の映る範囲が極端に狭くなってしまいます。逆に全体的な星の位置などを確認するために遠ざけると、小さくなりすぎて星を確認しずらくなります」

 宮川先輩の話は、私には難しすぎてついていけない。

「なるほど、では今回はどうするつもりだ?」

「今回は傘ではなくテントにしたいと思っています」

「だけどミッチー、テントって高いんじゃないのか?」

 下田先輩と同じ疑問を私も持った。

「確かに傘に比べると高いかもしれませんが、ドーム型の3~5人用くらいのテントなら三千円くらいで売ってますし、3つくらい買っても部費で十分まかなえると思います」

 普段はあまりしゃべらない宮川先輩だけど、星のこととなると積極的だ。星がよっぽど好きなのね。

「そうだな、それくらいは部費で出せそうだけど」

 副部長が部長の方を向いて確認する。それにつられて皆が部長を見る。

 だが部長は黙ったままだ。

 みんな部長が話し始めるのを待っている。

 それでも何も部長は何も話さないのでしばらく沈黙が続く。

「おい、芳郎。なんとか言えよ。部費で出してもいいのか?」

「え?私に聞いてるのか?」

「このサークルの部長はお前だろ?お前に聞かないで誰に聞くんだよ」

「そうか、私も話をしていいのか」

「部長、なに訳のわからないこと言ってるんですか。話していいに決まってるじゃないですか」

「そうなのか、皆さん好き勝手話をしてくれと言ったので、私はその中に含まれてないと思って、話をしたかったがずっと我慢してたんだ」

「中に含まれてないって誰が決めたんですか?そもそも皆で話をしてくれって言ったのは部長でしょ?意味わからなすぎですよ」

「そうか皆さんの中には私も含まれていたのか…… そこに気づかなかったとは迂闊だった」

「よし、迂闊だったと気づいたところでどうだ?部費を使って新しいプラネタリウム作りに取り組むか?」

「私としてはかまわないと思うが、それについて皆の意見をまとめよう」

「そうだな、俺も道雄がやれるというなら良いと思う。博美と新之助はどう思う?」

 博美先輩も下田先輩も賛成する。もちろん私も賛成だ。

「宮川先輩、一つ質問してもいいですか?」

 すんなり賛成すると思っていたゆきちゃんが質問をする。なんだろ?

「テントは三つで1万円前後で買えるとしても、投影機も同じ数だけ必要なのではないですか?そちらも予算が必要じゃないかと思うのですがどうなんでしょう?イメージとしては投影機というのは高そうなんですけど大丈夫なんでしょうか?」

 ゆきちゃんすごい。ここでこんな質問ができるなんて、宮川先輩の話にちゃんとついていってる証拠だ。

「投影機というと、なんだか高価なイメージを持つかもしれませんが、そんなに大仰なものではありません。簡単な土台を作ってそこに裸電球を取り付け、その周りに黒い厚紙に星の分の穴を開けて取り付けるだけです。結構緻密な作業ではありますがお金のかかるものではありません」

「去年俺もやらされたけど、あれは肩がこった。今年も作るのか?」

「去年の物が使えると思う。テントを購入したら試してみたいと思う」

「宮川先輩ありがとうございました。質問はそれだけです。私もテント購入に賛成させていただきます」

「よし、全会一致でテント購入は決定。続いて小学生との合同観望会をするかどうかの採決を取りたいと思います」

「ちょっと待て芳郎」

「なんだ?」

「なんだじゃない。合同観望会は既に決定している。だからこそテント購入の話になったんだろう」

「そうなのか?いつ採決を取ったんだ?気づかなかった」

 部長……

「すまない新之助、頭が痛くなってきた後を頼む」

 副部長から指名された下田先輩は、任せろ!と言わんばかりに大きくうなずく。

「部長、採決は取っていませんが、さっき2年生は全員賛成してます。、そして1年生もテント購入に賛成したことで合同観望会も賛成と理解させてもらいました。テントは合同観望会用として話を進めていたので問題ないと思います」

 そこまで言って博美先輩を指差す。

「ですから採決を取るまでもなく全員賛成です。部長は反対ですか?」

「もちろん賛成だ。ただ部長らしく採決を取ってみたかっただけだ。よし、では日にちを決めてしまおう」

「芳郎、今から決めるのか?今日はもう遅いし、なによりまだ先のことだ。おいおい決めていけばいいんじゃないか?」

「そうか、では宮川君にある程度の日にちを聞いておいて、今日はお開きにしよう」

 日程を決めるのは宮川先輩の役目なんだろうか?


 

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