第56話 初ミーティング3
「それではまず年間行事について、今現在確定もしくは予定しているものを発表したいと思います」
「その前に咲原君と真下君にも資料を渡してやってくれ」
そういえば皆何か資料を持っている。
「ごめんなさい、渡すのを忘れていたわね」
私達は博美先輩から回ってきた資料を受け取る。
「では、二人とも1ページ目を見てください」
副部長に言われてページをめくる。そこには年間行事の表が綺麗にプリントされていた。
私達がページを開いたのを確認してから副部長が発表を再開する。
「まず5月ですが、下旬に千代崎小学校での観望会。7月は七夕観望会と七夕コンパ。8月はペルセウス流星群観望会。9月上旬には夏合宿。10月はオリオン座流星群観望会。11月は上旬に千代崎小学校観望会と中旬に獅子座流星群観望会。12月中旬にふたご座流星群観望会、下旬に忘年会。1月は学内観望会。2月は冬合宿。以上が今年度の決定している、もしくは予定されている行事です」
一度に口頭で言われても頭に入らないけど、表があるので助かる。後でちゃんと覚えておこう。
とりあえず既に予定がたくさん決まっているのはわかった。
「副部長ありがとうございました。新入生にとっては初めての事だと思いますが、これらの年間行事は昨年度末にある程度決めてありました。何か質問はありますか?」
初めてのミーティングで緊張しているが自分自身でもよくわかる。
何を質問すればいいのかわからないけど、何か質問をした方がいいのだろうか?
そんなことを考えているとゆきちゃんが質問をしてくれた。
「千代崎小学校観望会とありますが、この大学内からではなく小学校で観望会をするのですか?」
「そうです、もちろん学内でも良いのですが、千代崎小学校の方がうちの学校よりも標高が高く、夜になると周りの明かりも殆どなく、特に北側、西側の星は非常によく観望できる環境にあります。なので時々お借りしています。そのため千代崎の小学生とも交流を持っており、夏休みなどを利用して一緒に観望会を開いたりもしています」
なるほど。そういうことだったのね。ゆきちゃん良い質問するなぁ。
「わかりました。ありがとうございます」
「桜ちゃん、何か質問はありませんか?」
突然博美先輩に名前を呼ばれ、びっくりして思わず立ち上がる。
「桜ちゃん別に立たなくてもいいのよ。座って答えてくれれば」
「はい」
恥ずかしくなって俯いてしまう。そして先ほどよりさらに緊張していまう。
ちらっとゆきちゃんを見ると、心配そうに私を見ている。
「特に質問はありません」
何を質問していいかわからずそう答えるしかなかった。
ゆきちゃんはより一層心配そうな顔をしている。
「相沢君、咲原君が緊張してしまっているようだ。少し堅苦しくしすぎだったかな?」
「そうですね。行事発表も終わりましたし、もうちょっと砕けた感じでいいんじゃないでしょうか?」
部長の言葉に博美先輩が応える。
「桜ちゃん、初めてで緊張してるみたいだけど、そんなに肩肘張らなくていいのよ。もっと楽にしてね」
「はい」
「よし!それなら俺の出番だ」
そう言って何故か席を立って飛び出す下田先輩。
「新之助は黙ってて!」
勢いよく飛び出した下田先輩を、間髪入れず撃沈する博美先輩の突っ込みは相変わらず冴えている。
そのやり取りにコンパの時を思いだし、思わず笑いそうになる。
下田先輩のおかげで自然と緊張が解けてくる。
ゆきちゃんも私の緊張がほぐれたのがわかったのか、私を見て微笑んでる。
私もゆきちゃんに微笑み返す。