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あなたと永遠の時を  作者: 九条 樹
第二章 大学時代
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第54話 初ミーティング1

「ゆきちゃん、この講義終わったらどうする?ミーティングは5時からだからちょっと時間あるよね」

「そうだね、どうしようか?」

「まだ学内の地理が把握できてないから、一緒に散歩でもしない?」

 入学式の日の散歩が楽しかったので、また一緒に散歩したくなったのだ。

 それとあの日のゆきちゃんの楽しそうな顔もまた見たかったし。

「大輔は今日もバイト?」

「うん。今日は初めてのミーティングがある日なのにね。最近バイトが忙しいみたい」

「そうか、バイトなら仕方ないね。じゃ二人で散歩行こう」


 学校は駅から一本道で正門に繋がっている。

 正門を入るとまず目につくのが門の左右に植えられている6本の桜だ。

 今はもう花は全て散ってしまって葉桜となっているけど、入学式の日は八重桜が満開で、風が吹くとざわざわとピンクの花びらを揺らして、私達新入生を歓迎してくれているようだった。ただ6本中1本だけ枝垂れ桜が植えられているのが不思議だった。その枝垂れ桜は紅枝垂れだろうか、散った今となってはもう見ることはできないけど、ピンクの八重に混じって赤がとても綺麗な花びらだった印象が残っている。

 私の名前は桜と花が入っているので、花全般好きだけど桜は特に好きだ。入学式の日はこの桜達を見ただけでテンションが上がった。


「桜、なに物思いにふけってるの」

「あ、ごめん。正門の桜が綺麗だったなぁって思いだしてたの」

「そうだね、あの桜は見事だったね」

「うん」

 そんな話をしながら自然と正門へ向かう。

「でも、あの池も大きくて立派だよね」

 そうだ、まん丸に作られたあの池も立派だ。

 正門前は半円形の広場のようになっているのだけど、入学式の日にはここにいろいろなサークルがテントを張ったり、テーブルを出してきたりして新入生を勧誘していた。その広場から正面と左右に道がのびている。と言っても左右は斜め45度の角度だ。丁度半円の広場に矢印が刺さった様な感じになっている。

 その道の中央を進むと、すぐに大きな池に突き当たる。そしてその池を中心に、また四方八方に道がのびている。その道からいろいろな棟や体育館、グランドなどへ行くことが出来る。

 入学式は池から北西へとのびる道の先にある体育館で行われた。

 学校の敷地は高校とは比べ物にならないくらい広い。だから学校の中にこんな大きな池が作れるんだろう。池の真ん中には大きな石が置かれている。それに水草も浮かべてあり、鳥なんかも飛んできてとても趣がある。

 鳥については疎いので種類がわからない。雀や鳩、鶴くらいならなんかわかるのだけど……

「ゆきちゃん、あの池って大きさどれくらいあるんだろう?」

「さぁ、どれくらいあるんだろうね」

「学内にあるって考えるとすっごく大きいよね」

「うん、凄く大きいね」

「うん」

 結局私もゆきちゃんも大きいと言うだけでしか表現できない。


「まだ40分くらいあるし、今日は池の向こう側、野外ステージのある方に行ってみない?」

「あっちの方は私達にはあまり関係ないと思って、殆ど行ったことないからね」

「そうでしょ。だから行ってみましょうよ」

「そうだね」

 私達は正門から池まで行き。池をぐるっと半分回ってその奥へ続く道を歩く。

「ゆきちゃん、こっちであってるよね?」

「たぶん」

 少し歩くと。

 目的の野外ステージが見えてきた。ここまでの道が少し高台を通る感じで高くなっているのでここからだとステージ全体が見下ろすようにステージ全体を見渡せる。まだ時間が早いのか、それとも今日は使われる予定がないのか誰もいない。ただ1人を除いては。

「ゆきちゃん、誰もいないね」

「そうだね、今日はどこも練習とかしないのかな?」

「でもあの観客席の所に1人だけ座っている人がいるね」

「本当だ、隅の方に1人座ってるね」

「とりあえずもう少し近くへ行ってみましょう」

「時間大丈夫かな?」

「まだ集合時間まで20分以上あるし大丈夫でしょ」

「帰り道で迷わなければね」

 ゆきちゃんがにやけ顔でいう。

 そうか、私達の場合迷子の計算もしておかなければいけないのか。いや、いくらなんでももう迷わないでしょ。

「大丈夫よ。せっかくここまで来たんだしもう少し近くで見てみましょうよ」

「いいよ」

 そう言って私達はステージまで道を下って行く。

「誰でも中に入っても大丈夫なのかな?」

「鍵が開いてるなら入ってもいいんじゃない?」

「なるほど、ゆきちゃん頭いい!」


 ステージの観客席側の扉はいくつかあるが中央の一つが解放されている。

「ゆきちゃん、あそこから入れるんじゃない?」

「そうだね、行ってみようか」

 私達が中央出入り口へ向かって歩いていると、中から誰か出てきた。

「あっ、宮川先輩」

 私達に声を掛けられたて相当驚いているようだ。

「や、やぁ。君たちか」

 宮川先輩、どうしてこんなところに?

「こんなところで何をしてるんですか?」

「君たちこそどうしてこんな所に?二人だけかい?」

 そう言って私達が二人なのかどうかを気にしてるようだ。

 辺りをずいぶん注意深く見回している。

「はい。私達二人で学内を見学していて、ここに辿り着いたんです」

「そうか、もうミーティングが始まるよ。早く行かないと」

「はい」

 と返事が終わるか終らないうちに、先輩は急ぎ足でミーティングルームのある棟へだろうか、その方へ向かって歩いて行った。

「ゆきちゃん、宮川先輩なんか慌ててたね」

「そうだね、何かあったのかな?挙動不審だったよね」

「不審かどうかわからないけど、こんなところで私達とはち合わせてバツ悪そうだったね」

「どうする?中にはいる?」

「時間的にはまだ少し余裕はありそうだけど、どうしようか」

「間に合わなそうなら走ればいいし、ちょっと入ってみよう。さっき高台から見た時に観客席に居た人って、きっと宮川先輩でしょ?なんかあやしいし入ってみよう」

 ゆきちゃんなんだか生き生きしてるなぁ。

 そんな事を考えながら立ち止まっていると「桜、時間あんまりないんだから急いで」と急かされる。

「あぁ、待って」

 私は慌ててゆきちゃんの後を追う。


「桜、さっき見た時に先輩の座ってた場所ってこの辺りよね?」

「そうだね、この辺りで合ってると思う」

「何もないなぁ」

「何かあると思ってたの?」

「あるとは思ってないけど、あるかもしれないとはちょっと思ってたり」

「どういうこと?何があるの?」

「さー」

 ゆきちゃんにはなんか考えがありそうな感じだ。

「何?何があると思ってたの?教えてよ」

「わかんないけど、例えばカメラとかあるのかな?と思っただけ」

「カメラ?」

「そう、隠し撮りでもするのかと思って」

「宮川先輩がそんなことするわけないじゃない。もうなに言ってるのよ」

「そうかな?」

「そうよ、ここに1人で居ただけでそんな根拠のないこと思っちゃダメよ」

「そうだね、何もないし先輩は白だ」

「もう変な事言って楽しまないでよ」

 そう言うとゆきちゃんは笑って「ごめんごめん」と言った。どうやら半分は冗談だったようだ。

「それより、そろそろ急がないとミーティングに遅れそうだ。桜は足が遅いから急ごう」

「ホントだ、もう10分くらいしかないね。急ぎましょ」

 私達は大急ぎで、ミーティングのある12号館3階12303教室へ向かう。


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